博士の正常な愛情
菫は院内の執務室で源治に関するカルテを纏めていると仕事用の端末に連絡が入った。
「なに?それでは分からない、もっとわかりやすく・・・・私の方で探す。君たちは後始末を頼む。」
連絡の内容はシンプルだった。「葛城源治が拘束用の鎖を引きちぎり脱走した」菫は源治の行き先についてすぐに見当がついた。病院の地下には源治が運び込まれるのと同時に源治愛用のバイクも運び込まれていた。菫は地下駐車場に急ぐ。
「源治!!」
源治はすぐに見つかった。ちょうどバイクを押しているところに出くわしたのだ。
「何があった、まだ君は絶対安静だすぐにベットに戻るんだ」
「凛が龍二のところに行った。あいつ龍二と刺し違えるつもりだ。それを止めに行く」
「なんでそんなことが・・・・」
「わかるんだよ、勘だがな。それとベットの下にこれが落ちていた。」
そう言って源治の取り出したのは、以前龍二が凛に渡した自分の潜伏先の住所だ。
「これは・・・」
「恐らく龍二の潜伏場所だ。あいつが部屋を出る時に落としていった。大方敵討ちに来た凛を殺すして俺を絶望させるために渡したんだろうよ。あいつとことんまで俺をいたぶる気だ。そうはさせてたまるかってんだ」
「なら・・・他の退魔部の人間に頼めばいい。君が行く必要はない!」
「曲がりにもアイツの実力は俺とどっこいどっこいだ。だとしたら俺が行くしか無いだろう」
「武器はどうする!丸腰で行くなんて死ににいくようなのだ!」
「これがあるだろうが」
そう言って腰に巻いたベルトをポンポンと叩く。
「完成・・・したのか?」
「ああ、ついこの間な」
「しかしそれは使用者の体力を削る!今の君が使えば変身した瞬間死ぬぞ!」
「それでも行かなきゃいけねぇんだよ」
「ダメだ!絶対に行かせない!医者として、君を愛する女として!」
いつの間にか菫の目からは涙が流れていた。そんな菫を見た源治は一度バイクから降りて菫を抱きしめる。
「菫・・・・ありがとうな」
「っ!?」
そして菫は腹部に強い衝撃を感じると意識が遠くなる。
「げ・・じ・・いく・・・な」
「悪いな急に腹パンなんかして。けどなあいつと約束したんだ。いつまでも「かっこいい」俺でいてくれってな」
意識を失った菫を壁に凭れさせると
「待ってろよ、凛!」
そしてバイクを走らせる。行き先は町外れの廃教会。今源治と凛の過去を精算するための戦いが始まる。




