追想の刻~戦・争・上・等~
腰に愛用の銃を差し黒のタンクトップの上に赤のショートコート。ホットパンツの下に黒いスパッツという動きやすさを優先した服装で地下にやってきた静葉。すでに源治はスタンバイしており。修練場の真ん中に腕を組んで仁王立ちしていた。部屋の隅を見ると菫が小さく手を振る。
「菫。来てたの?」
「あア、源治から「あの女をぶちのめすからレフェリーとして参加しろ」とNE。しかし一体何をしTA?さっきから見ているが怒りで別の何かに変身しそうだゾあいつ」
そう言って源治を指差す菫。菫の言うとおり仁王立ちする源治から心なしか湯気のようなものが立ち上って見えた。
「居着いてればなし崩し的に組めると思ってちょっとのらりくらりと躱しすぎた。まぁこれで勝てば正式に組んでくれるみたいだから、死なない程度にがんばるわ」
「待テ、私が言うのも何だGA正気カ?今のアイツは手負いの虎や獅子よりたちが悪いゾ」
「菫は何回も勝ってるんでしょう?それなら私にも出来るわ」
「それはルールで縛っている場合の話DA!あいつHAルールありの戦いだと極端に弱くなル。制約のない今のあいつと私が戦ったら私が負けル」
「難しい方が燃えるのよ、私。それに今のままならまだ付け入るはあるわ」
そして源治の体面に立つ静葉。源治のほうが身長が高いため静葉が源治の顔を見上げる形になる。
「逃げずに来たのは褒めてやる。勝負は無制限一本勝負。先に気絶するかギブアップした方の負けだ。他に縛りは存在しねえ。その腰に下げたもんでも術式でも好きに使え。最後に立っていたやつが勝者だ」
「いいわよ。ただし、私が勝ったら私と正式に組んでもらうから」
「おう、ただし俺が勝ったらその乳揉むだけもんで叩き出してやる」
「はぁ、二人共用意は良いカ?・・・・・・・・・始め!!」
静葉の声を合図にまずはお互い後ろに飛び退いて距離を取る。すると源治が腰に差した刀を鞘ごと抜く。
「・・・どういうつもり?」
「お前相手に武器はいらねえ、菫持ってろ。」
そういって菫に刀を放る。
「へぇ、自分からハンデを負ってくれるなんて随分とお優しいこと、ねっ!」
菫が刀をキャッチしたのと同時に静葉は腰に差した銃を抜き初対面で見せた6連射の早撃ちを御見舞する。
静葉の銃「レッドローズ」イタリアに存在するマテバ社製のマテバモデロ6ウニカ通称「マテバオートリボルバー」を下地に改造を施した改造銃である。本来オートで撃てるリボルバーであるマテバのハンマーを大きくしたり等早打ちのための工夫が施されており、またバレルを交換して、本来の使用弾丸である.357マグナム弾ではなく45コルト弾を使用できるようにして威力を上げている。その他にも静葉の好みに合わせての改造が施されておりバレルには赤いラインでバラの装飾が施されている。
肝心の戦闘についてだが、静葉の銃撃によって倒れる源治それを見ながら静葉はリロードを行っている。
「どうした?大きな口を叩いた割には随分あっさりね。あたしをぶちのめすんじゃなかったの?」
挑発の言葉をかける静葉。少しして足の裏を地面につけ手をポケットに入れたまま起き上がる源治。今回は複数箇所に狙いを散らしたのか源治の体の複数箇所から硝煙が上がっている。
「悪いな、このコート防弾、防刃の上に裏地と表地の間に鎖帷子仕込んでるんだ残念だが銃弾は効かねえんだよ」
そう言ってコートの表面を叩くと潰れた銃弾がパラパラと落ちる。
「だから・・・こうする」
そしてコートを脱ぐと上半身裸になる源治。その体には静葉以上に傷が刻まれており、まるで複数枚のバラバラにした雑巾を一つにつなぎ合わせたようにみえる。
「いいの?次はないわよ」
「心配すんな、もう当たらねえ」
そう言って左肩を静葉の方に向ければ左腕を直角に曲げ、振り子のようにゆっくりと左右に振り始める。ボクシングで言うところの「ヒットマンスタイル」の構えを取ると一定のリズムを刻んでステップを取り始める。
「ボクシングで私の早打ちに勝てるつもり?」
「いやこれは昨日テレビで見てたらやっててよちょっとやってみたくなっただけだ。試しだよ試し」
直球に「お前相手に練習したこともない技を出す」と言われた静葉。今まで変わらなかった静葉の表情が僅かに怒りに歪む。
「だったら・・・避けてみなさいよ!」
そして再び6発の銃弾がほぼ同時に放たれる。源治はそれに合わせてフリッカージャブで応戦する。幾つかの金属音がし銃弾は源治の体には当たらず全て明後日の方向に弾き飛ばされる。よくみると源治の左手には「縛神鎖」が巻かれており、このお陰で左拳で銃弾を弾くことができたのだ。
「今度はこっちの番だ!」
そう言って距離を詰める源治。そして射程圏内に入り次第放たれるフリッカージャブ。しかし、そこで源治は息を呑んだ。なんと静葉はジャブを避けながら一発ずつリロードを行っているのだった。そして銃口が源治に向けられる、源治はそれを身を捻って銃口から逃れると急に銃口が明後日の方向に向く。次の瞬間予想だにしない角度から衝撃を受け、バランスを崩し床を転がる。静葉の方を見ると右足を高く掲げそして頭部めがけて振り下ろされる。間一髪で転がって躱すと今度はそこめがけて銃弾が飛んでくる。
衝撃の正体は蹴りだった。静葉はあえて銃口を向け注意をそらしたところに死角から蹴りを放ったのだ。
「おっま、鉄板仕込んでるなそのブーツ。いって、ヒビ入っちゃったよ」
「女の足でもブーツを履けば凶器になる。あんたが教えてくれたことよ」
「お前・・・もしかしてあの時の女か!?」
時間はここからさらに遡る。




