追想の刻~アイスと本棚と怒髪天~
「しぃずはぁあああああああああ!!」
ある日の朝源治の怒号が屋敷に響き渡る。その大きさは外に居た鳥たちが一斉に羽ばたくほどであった。そして静葉の部屋のドアを蹴り開ける源治
「なに朝から、近所迷惑なんだけど」
「お前また俺のアイス食ったな!しかも俺の本棚の並び弄るんじゃねえよ!目当ての本探すのに1時間かかったじゃねえか!ってなんですっぽんぽんなんだよ!」
源治の指摘のとおり今の静葉は全裸であった。真紅の瞳にくせ毛なのか所々跳ねている黒い長髪。胸は菫ほどではないが大きい部類に入るだろう。キュッとくびれができた腹部にはしっかりと鍛えられた腹筋の筋が通っておりその均整の取れた体は芸術品を思わせる。しかしその体は至る所に傷跡が残っており、中には目を覆いたくなるような酷い傷跡もいくつかあった。そんな静葉の前には分解された銃が置いてあり、銃のメンテナンスをしていたことが伺える。
「裸のほうが汚れた後風呂に入ればいいだけだからな。それに私の裸で欲情するような男は居ないだろう、だから恥ずかしくもなんともない」
「だからって素っ裸のままでいるやつがあるか!風邪引くでしょ!」
「お前は私の父さんか・・・・ん?」
静葉がふと源治を見ると源治のズボン、もっというと股間の部分がふくらんでいるのに気づく。それを見た静葉は手元にあるドライバーを源治の眉間に向けて投げつける。寸前のところで人差し指と中指で挟んでキャッチする源治。
「おまっ!殺す気か!」
「別に恥ずかしくないといったがそう露骨な反応をされるのは好きじゃない。ほら出てった出てった」
源治に投げ渡されたドラーバーをキャッチすればまた黙々と銃の整備を始める静葉。
「はいはいお邪魔しました・・・って違う!」
「なに?もしかしてようやく私と正式に組んでくれるの?」
「それも違う!俺の!アイスと!本棚!あとお前はいつまでいるんだよ!」
「アイスは仕方ない。名前が書いていなかったから。本棚については善意からの行動だったが裏目に出たようね。けどまさか器の大きい貴方が善意からの行動を攻めるなんてしないわよね?」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・居座ってる件はどう説明するつもりだ?」
「なに?家賃が欲しいの?それなら今は持ち合わせがないからさっきからあなたがチラチラ見ている私の胸をある程度自由にするということで待ってもらえない?」
「それは魅力的な・・・って!違う!俺が言いたいのは何で俺はお前とコンビを組む気が無いって言ってんのにお前は未だに居座ってんだよ!色仕掛けで煙に巻こうとするな!」
「はぁ、「狂った死神」と呼ばれた男がここまで度量が狭い男だとは・・・計算外だ」
暖簾に腕押しするようにのらりくらりと追求を躱す静葉の態度に源治の脳内で何かが切れる。
「上等だ、組んでやるよ。ただし!俺とやりあって勝てたらな!」
「まぁまぁ理想的な展開か・・・いいだろう場所と時間はどう?」
「地下の修練場!今日!お前の準備ができたらいつでも!」
それだけ言うと乱暴な音を立てて扉を締める源治。それを見て静葉は呟く。
「菫の言ったとおり怒らせればある程度は行動を誘導できたな。あとは戦闘でもそれが生かせればいいが・・・・」




