追想の刻~源治と静葉~
5、6年ほど前突然源治の自宅に押しかけてきた菫が連れてきたのが城ヶ崎静葉だった。
「あなたが葛城源治か。まぁ悪くないな」
「・・・・おい菫、何だこいつは」
「何っTE、彼女が君の新しい相棒サ。この前電話で言っただろU?」
「いや確かに聞いたけどよ・・・」
「城ヶ崎静葉だ、あなたの新しい相棒ということになる」
「菫、俺言っただろ。新しい相棒はいらねえってよ」
「まあまあ、本人たっての希望だし何よリ、私と局長も同じ考えDA。」
「ジジイもか・・・急に断りづらくなったな。」
「それに静葉は私の同期ダ。実力は保証しよU」
そんなことをヒソヒソ話していると
「それで?私の部屋は?それとシャワー浴びたいんだけど」
「随分と態度も乳もでかい女だな。そのでかいおっぱい揉まれてさらに大きくしてえか?」
静葉のその慇懃無礼な態度に源治は額に青筋を立てながら静葉の胸を鷲掴みにする。
「そんなにがっついて。その歳で童貞とは悲しいな」
「舐めんな、とうの昔に卒業済みだ。なんなら今からベッドの上でヒーヒー言わせてやろうか」
胸を揉まれても眉一つ動かさずに逆に源治を挑発する静葉に対して思いっきり挑発に乗りガンを飛ばす源治。それを見ながら呆れたようにため息をつく菫。
「(この二人の性格からして初対面で衝突するのは目に見えてたが、ここまで早いとは・・・)まあまあ二人とモ、初対面でそこまで険悪になることもないだろU」
「お前が推した女らしいが俺はこんなどこの馬の骨ともしれない女なんて御免だ。ご足労頂いたそこの姉ちゃんには回れ右してお家にGOしていただこうじゃないか」
「つまり私の実力が知りたいと・・・なら」
静葉がそういったかと瞬間、一発の銃声が鳴り静葉と向かい合っていた源治の後ろの壁に一つの穴が開く。いつも何か静葉の腰に下げられていた銃身部分に装飾が施されたリボルバー型拳銃抜かれており、銃口から硝煙を吐いていた。
「結構ギリギリを狙ったんだが身じろぎ一つしないとは、流石に肝は座っているな」
「バカタレ。殺気が出てない、当てる気がない攻撃なんぞ避ける必要が無いんだよ。正確性はあるみたいだがたった一発の早撃ちなんぞ俺でも出来るわ」
「本当に1発か、その壁をよく見てみるといい」
「壁だぁ?そんなもん見たところで・・・・・・・・・・・うっそだろお前」
静葉に言われたとおり銃弾が打ち込まれていた壁を見てみると、そこには6発の弾丸が一直線に連なり潰れた状態でコンクリート製の壁にめり込んでいた。つまり静葉は一発の銃声に聞こえるほどの速さでほぼ6発同時に発砲し、全て同じ場所に着弾させたことになる。これにはさすがの源治も舌を巻いた。
「これが私の得意技だ、お眼鏡にかなったようだから勝手に空き部屋とシャワーを使わせてもらうぞ」
そう言って潰れた銃弾を摘んで呆然とする源治を無視してさっさと部屋を出る静葉。
「まだ話は終わってっ!・・・っていねーし。しかも菫め、逃げやがったな」
すでにその部屋には源治しかおらず、いつの間にか「後は任せた 親愛なる隣人 菫より」と書かれた置き手紙がテーブルの上に置かれていた。
「・・はぁーーーーー、どうすっかなー。・・・・これは貰っとこう」
一人部屋で大きく溜息をついた源治は銃弾をポケットに入れれば、テーブルの上に置きっぱなしにしていた酒瓶を掴み残った分を一気に飲み干した。
「とまぁ二人の出会いはこんな感じだな」
「姉さんらしいと言えばらしいけど・・・」
菫の話を聞けば呆れたような顔をする凛
「それからどうしたの、源治は姉さんと組むの反対だったんでしょ?」
「あA、あの二人数日間で何度も衝突してネ、その度に静葉が煙に巻いていたんだGA、ある日遂にブチ切れた源治が静葉に勝負で負けたら出てけと言い出してそこからは大戦争サ。私が立会人になって休憩をはさみながら半日ほどやっていたかNA?これがその時の写真ダ」
そう言って携帯を操作して1枚の写真を画面に表示する。そこは凛もよく知る地下の修練用広間だったが、至る所に弾痕、打撃痕、焼け焦げた痕や溶けずに残っている氷等床も壁も鉄筋コンクリートで作られている広間がまるで戦争の後のようにボロボロだった。
「・・・なにこれ」
「信じられないだろうが合成などではなく本物ダ。殺すつもりでやった静葉に対して源治は素手でやって本気は出していなかったらしいGA苦し紛れの嘘だろウ。事実何度か怪異の力を一部開放し身体能力を爆上げする「外し」をやったであろう場面がちらほらあっTA。まあ人外の男と人外一歩手前の女が本気で喧嘩したらこうなるということだろうNA」
そう言って写真を閉じればその日のことが昨日のことのように思い出せる。あれだけ派手な喧嘩は忘れようと思っても忘れられるわけがない。




