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SLASH/SHOT~Frame Warrior&Ice Valkyrie~  作者: 雑賀ランボー
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源治堕つ

 ロボと源治の戦いは激化していった。もはや二人共防御など考えていない。ただどちらが先に倒れるかの我慢比べに突入していた。


 そして繰り出されるロボの上段から振り下ろす手刀。それをスウェーバックで避ける源治、しかしその時源治は己の失策を感じた。ロボの風の爪は見た目以上のリーチを持つ。それを悟ったのは源治の体が袈裟懸けに切り裂かれた後であった。


 ゆっくりと崩れ落ちる源治、トドメとばかりにロボの固く握った拳が迫る。しかし。ロボも又見余っていた。源治の目には未だに闘志の炎が燃え盛っていることを。


 源治はロボの拳がその頬に触れた瞬間首と共に体も大きくひねり、直撃を避ければその回転の勢いを利用してロボの懐に入り込む。


 そして両手を前に突き出せば切り裂かれ損傷した筋肉も含め軋む体に活を入れ無理矢理全身の筋肉をフル稼働させる。空手の正拳突きを下地にして寸勁に使う全身の体重全てを打撃に込める技術。そしてなにより目の前の敵を撃ち抜くという源治の裂帛の殺意を込めた右の正拳突き。ロボは己の失策を恥じ、それと同時にこの技を避ける術もなくこれをまともに受けた己は敗北するだろうと悟った。


 「じょいやー!」


 源治の気合とともに右拳がロボの心臓を撃ち抜く。「鬼殴」(きおう)それが源治がこの技に付けた名前だった。


「見事だ」


 ロボはその打撃で吹き飛ばされずその場に留まったままだ。それがこの技の特徴だった。その一撃に込められた衝撃は相手の体を突き抜けずに体内に留まり反響する。一切衝撃が逃げることのない打撃それが「鬼殴」だった。


「すまぬ・・・ブランカ・・・・今そこに・・・・・・」


 そして体から力が抜けたロボは大の字になってその場に倒れる。その目に既に光はなく絶命した後であった。


「・・・・・楽しかったぜお前との殺し合い」


 力を使い果たしたのかその場に座り込む源治。痛む体を無理矢理動かし脱ぎ捨てたコートをひろうとその中から携帯を取り出し操作する。


「菫か?こっちの仕事は終わったからよ。医療班と処理班回してくれ。なるべく早くな」


 そう一方的に要件をまくしたてれば通話を終了する。


「さて、後はあのガキ呼んでやらねえとっあだだだだだこりゃ一ヶ月は入院コースだな」


 ロボに斬られた傷を見ながら一人そう呟いていると、呼ぶまでもなく凛がその場に到着する。


「おっ来たか怪異はこっちで処理したからよ、しばらくはここで処理班と医療班を待ってって・・・・・あんまりそういう冗談は好きじゃねえな」


 源治のもとに歩み寄った凛の目は氷のように冷ややかであり全身から針のように突き刺すような殺気が源治に向けられていた。


「お前が・・・姉さんを・・・・・信じてたのに!」


 冷ややかだった目に殺意という名の炎が灯り激情的になる凛


「お前・・・・誰からその話を「うるさい!」


 源治の問いかけを無理矢理遮ればその手に握られていたブルーローズに氷の刃が形成される。


「立って、無抵抗なあんたを殺したくない」


「こっちは怪我人だってのによ・・・ったく」


 痛む体を無理やり起こし立ち上がる源治。間髪入れず胸に刃の切っ先が突きつけられる。


「まあ待てよ最後に一服ぐらいさせてくれそれを話すのはそれからでも遅くないだろ」


 そう言ってポケットからタバコとライターを取り出しタバコに火を着け一服し始める源治。そして紫煙を吐き出すとこう告げる。


「いつかこんな日が来るような気がしてたがよ、案外早かったな。・・・・・・・静葉を殺したのは俺だ、逃げも隠れもしねえ。さっ人思いにサクッと殺ってもなぶり殺しでもお前の好きな方を選んでくれ」


「・・・・抵抗しないの?」


「ああ、俺は決めてたからよ。他の誰でもないお前になら断罪されてもいいってな。これが俺なりのケジメだ」


 「最後に教えて、なんで姉さんを殺したの」


「・・・悪いな、静葉との約束でよ。こればっかりはお前に教えるわけにはいかねえんだわ」


 そしてタバコを吸い終わった後の源治の顔はこれから殺される人間とは思えないほど晴れやかで堂々としたものだった。


「そう・・・・・はあっ!」


 そして凛がブルーローズを心臓目掛けて突き刺す。






 その刃が源治の心臓を貫くことはなかった。なぜなら凛の刃は源治の胸には突き刺さらず寸前で止まっていたからだ。


「どうした?俺を殺すんじゃなかったのか?」


「・・・・きない」


「ん?」


「できない、できないよ・・・・なんで、なんでそんなに潔く死ねるの?もっと無様に足掻いてよ!あたしを幻滅させてよ!そうじゃなきゃ・・・殺せない」


 怒りと悲しみが混ざったような表情で懇願に近い声色で思いを吐露する凛、その手から落ちたブルーローズが地面に落ち甲高い金属音を立てる。


 物心ついた頃には両親が居なかった凛にとって静葉は姉であると同時に母親でもある、そんな存在だった。そして約半年の間共に一つ屋根の下で暮らし生死を共にした源治に対して凛は気づけば心のなかに源治を兄のように慕い、父のように尊敬している感情が芽生えていた。もちろん本人はそのことには気付いていない、あくまで深層的なものだった。しかしここに来て自分の本心に気付いてしまった。静葉亡き今ここで源治を殺せばまた自分は家族を失ってしまう。そんなのは二度と御免だ。その思いが刃を進ませなかった。


「駄目・・・殺せない・・・・・もう二度と家族を失いたくない!」


そして膝から地面に崩れ落ちる凛。そして



「まったくここまで来て殺せないなどとは・・・・なんとも意気地がない!パートナーそっくりの甘ちゃんですねぇ!」


 源治と凛の二人から少し離れた凛の背後に突如現れた男。糸目で狐を彷彿とさせる顔、白いスーツと白いフェドーラ帽に赤いネクタイが似合う胡散臭さの残る男。岩瀬竜一だった。


「全く情けない!姉の敵を前にして殺せないどころか武器まで手から離すとは・・・見込み違いでしたねぇ」


「竜一さん?・・・どういうこと?」


「竜一だぁ?お前の知り合いかなんかか?」


「うん・・・姉さんのことを教えてくれた人」


「するってーとお前か、こいつに色々吹き込んだのは」


「吹き込んだとは失礼な。私は事実を客観的に見せただけですよ。真相はどうあれ、ね?しかしこの男もよくやってくれました。貴方を殺すとはいかなくてもここまで追い詰めるとは、やはりあの時この男の妻を貴方の仕業に見せかけて殺しておいたのが良かったようですね。それでは仕上げをしましょうか」


「っ!どけ!」


 源治が急に凛を横に押しのける次の瞬間。


 数発の銃声が鳴り響き体に幾つもの穴を開けた源治がスローモーションのように地面に倒れ伏した。


「えっ・・・・」


 突然のことに呆然とする凛


「ふっ・・ふふふ・・・・ははははははははは!まさかこうもうまくいくとは!無様だな!やはり貴様は落ちこぼれの雑種だなぁ源治!」


 いつの間に取り出したのか右手に未だ硝煙立ち上る拳銃を握り、突然今までの紳士的な態度とは打って変わり高らかに笑い源治を呼び捨てにする竜一


「竜一・・・さん?」


「竜一?そんな男はこの世には居ない。俺の名は岩永龍二!お前たちの敵!人造怪異さ!」


「岩永龍二って・・・!」


「自分の思い描いた絵図の通りに事が運ぶというのはなんとも気持ちが良いものだな」


「お前っ!」


 ブルーローズを拾い構えれば、龍二を睨みつける凛。


「おっと、俺なんかに関わって足元の男のことは良いのか?」


「っ!源治!」


 その言葉にハッとして源治の方を向く凛。倒れたままの源治は意識を失っているのか微塵も動かずその代わりに血がドンドン体の外に流れていっている。


「嫌だ!死んじゃやだ!私を一人にしないでよ!」


「・・・・邪魔が入るな。小娘、もしその男の敵が取りたいならこの場所に来い。いつでも殺してやろう」


 そう言って龍二は凛の足元に住所が書かれた紙を放る。そして高笑いとともにその場を後にする。


 必死の形相で源治にすがりつく凛。そして龍二と入れ違いになる形で菫と医療班が到着する。振り始めた雨はまるで凛の心情を映し出しているかのような大雨だった。

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