Death of past~亜紀VS網剪~
源治がミラーハウスで戦っている同時刻亜紀も戦っていた。
相手の名は網剪亜紀の斬撃を通さない堅牢な装甲と鋭利なハサミで、亜紀が不利になっていた。
「どうした、それが武門の名家岩永家の次期当主の実力か!」
亜紀の渾身の打ち込みをハサミで受け止め押し返し距離が開けば、どこからでも打ってこいと言わんばかりにゆったりとした歩みで亜紀との距離を詰めていく。
「私が次期当主というのは一族の中でも一部のものしか知らないはず・・・なぜお前が知っている!」
そう言って関節を狙った突きを左腕のハサミで止められ空いた胴体を右腕で横薙ぎに殴られれば、その衝撃に息が詰まりながら地面を転がる。
「その刀・・・どうやら相当の名刀のようだがその刀の真価を引き出すには貴様は、未だ未熟!」
横腹を押さえる亜紀に歩み寄った網剪はそのまま無防備な腹部を正面から蹴ると、連続して腹部への衝撃を受けた亜紀は、その場にうずくまって嘔吐をしてしまう。
「がはっ・・・おえええ」
「音に聞こえた剛の侍葛城源治の相棒、どのような腕かと期待すればこの程度とは、これではミラージュと戦っている貴様の相棒の底が知れるというものよ」
そう言って吐き捨てるように亜紀と源治を侮辱すれば、立ち上がろうとする亜紀の頭を踏みつけ自らが吐いた吐瀉物に押し付ける。
「げ・・・を・・・・カに・・・な」
「なに?」
「源治殿を・・・・馬鹿にするなあああ!」
そう叫びながら亜紀は網剪の足首を掴み持ち上げながら力づくで立ち上がる。
「ほう・・・まだ足掻くか」
感嘆したような声を上げ、自分の足を掴む手を振り払えば、少し後付さり立ち上がった亜紀を睨みつける。
「私のことを悪く言うのは構いません!実際未熟者ですから!ですが・・・ですが!私の憧れであり想い人を馬鹿にするのは許せません!」
激高した声を上げ、突撃してきた亜紀の攻撃は先ほどとは違い力任せに叩きつけるような斬撃であった。その猛火のような攻撃に網剪はその斬撃を受け止めることしかできずに、徐々に後ずさっていく。
「くっ!」
苦し紛れに一瞬の隙を突き背を向けて網剪その場から逃げ出す。
「逃しません!」
網剪を追う亜紀はそのままジェットコースターの発着駅に入っていくとレールのを渡る網剪を追いかける。
「もう逃げ場はありません!改めていざ勝負です!」
「・・・そうだな、では2回戦と行こう!」
ある程度追いかけると、網剪がそう答えると、肩の甲殻が散弾のように飛んでくる
「痛っ!」
とっさに両腕で顔を庇うが、飛来した甲殻は亜紀の顔以外を切り裂きボロボロにする。
「先程までの様な広い空間ならいざしらずこのレールのように逃げ場のない空間では避けることができないだろう、この高さでは飛び降りることもできまい。私はミラージュのように相手を侮るようなことはしない、確実に勝てる状況で決めさせてもらうぞ!」
そして再生した甲殻をもう一度撃ち出す。甲殻が撃ち出されるたびに、亜紀の腕や足、体が傷ついていく。絶え間ない弾幕に進むことも引くこともできす、かと言ってこの高さでは飛び降りたところで、良くて両足骨折最悪の場合は死だ。やがて、絶え間ない弾幕に血を流しすぎた亜紀はその場で膝をついてしまう。
「ようやく膝をついたか・・・とは言え、私の甲羅もそろそろ限界だ。が、最後まで貴様の攻撃範囲外から攻撃させてもらおう」
そう言って網剪の口から吹き出されたゲル状の水が亜紀の口と鼻を覆う
「んん!?」
「取ろうとしても無駄だ、その水は私が命じるか私が死なない限り取れることはない」
ますます量を増して吹き付けられる水に亜紀の頭部全てが覆われてしまう。
「んんん~んううう!・・・ゴボゴボっ・・・コポッ・・・・」
窒息し、息を吐ききった亜紀の瞳から光が消え、その場に倒れ込む。
「意識を失ったか・・・最後は一方的だったとはいえ、意識を失ってなお刀を手放さないその気迫は見事だ。貴様への侮辱は取り消そう」
そういって亜紀の生死を確認するために亜紀に近づくとその首を掴み持ち上げる。その瞬間光を失っていたはずの亜紀の瞳が光を取り戻しニヤリと笑うと網剪の体に抱きつき体重をかけると、諸共コースターのレールから落ちていく。
「ぬおおおおおおおお!」
数秒後肉が潰れる音が聞こえ、そこには落ちながら編みきりの胸に刀を突き立て落下の勢いを使ってその堅牢な装甲を貫いた亜紀が編みきりの上に立っていた。
「(この水・・・網剪が死ぬと解除されるはずですが・・・まさか!)」
「くくく・・・体内に仕掛けた爆弾は貫かれ無力化されたが、この術だけは決して解かぬ!せめて貴様も道連れだ」
「(そん・・・な・・・)」
そしてゴボリと特大の気泡を吐いた亜紀が意識を失い地面に倒れるとそれを合図に網剪は絶命したのか、亜紀にかけた術が解除される。
二人が倒れた場所を源治が見つけたのはそれからすぐのことであった。