Death of past~出撃~
源治が亜紀と結ばれた一週間後、二人は地下の訓練場で打ち合っていた。
亜紀が上段から木刀を振り下ろしを、源治はその一撃を柄の頭で受け止めればそのまま力づくで押し戻し
「ずぇあ!」
その勢いで亜紀に向かって振り下ろす。亜紀はそれをバクステップで避ければ木刀を水平に構え突きを繰り出す。
「貰いましたよ!」
狙うは源治の額、しかし源治は振り下ろした直後に、重心が前に移っているのを利用し姿勢を低くして避けた源治は、そのままの体勢で木刀を手放し亜紀の懐に潜り込むと服を掴み背負い、投げるが亜紀は投げられる直前、自分から飛ぶことでうまく着地し源治との距離を取る。
源治は木刀を拾わずに素手でファイティングポーズを取ると、一直線に亜紀に向かっていく。
「素手で来るとは!舐めないでいただきたい!」
そう言うと横薙ぎに迎撃しようとするが、源治は急停止し、スウェーバックで切っ先のギリギリの距離で躱す。
「舐める?こっちのほうが今日は性に合ってるだけだ!」
そう言うと、源治は左手でジャブを繰り出す。そのプロ顔負けのジャブに亜紀は押されていた。離れようにも、徒手空拳故のフットワークの軽さで距離を詰められる。反撃したくても高射砲のように鋭いジャブがそれを許さない。
亜紀が攻めあぐねていると源治が動いた。放つのは右フック狙いは亜紀の持つ木刀だった。
武器を狙った攻撃に思わず亜紀の反応が遅れる。源治の右拳は木刀の側面を捉え中程から真っ二つに粉砕し、二の太刀で放たれた左ストレートは亜紀が反応する間もなく顔の前で止まっていた。
「・・・これが、本気で戦った源治殿の実力ですか」
「まあ、一番得意なのがルール無用のどつきあいだからな、訓練所だとルールでガチガチすぎてやりづらいのなんのって・・・」
「源治殿らしいですね、兄を倒したのもジャーマンスープレックスでしたし」
「そういや、兄貴との関係はどうなったんだ?あのアホあの後反省したんだろ?」
「兄は・・・今は行方がわかっていません。数年前から家を出たまま音信不通です。」
「音信不通って・・・前に聞いたときはリベンジに燃えてるって言ってたじゃねえか」
「あれは・・・数年前の話です。」
「まったく・・・何やってんだあのアホは」
そんなことを話しながら訓練所を後にする。
最近の源治は、少しずつ変わり始めていた。まだ亜紀以外の人前に出るには女児向けアニメのお面を付けているが、亜紀の前ではマスクを被らずに生活している。
そんな折、二人のもとに、怪異狩りの指令が届いた。今回も今までと同様、怪異とそれに関わった人間の殲滅が内容に含めれていた。心配する亜紀を前に源治は言い放つ。
「今まで疑わしきは罰せよでさんざんぶっ殺してきたが、今回もこれからも人間は殺さねえ。怪異は殺す、人間は殺さない。俺はこれから怪異と人間は絶対的に線引して生きていく。多分これで上からもやいのやいの言われるだろうし、お前の立場も悪くなるだろう。それでも俺と来るか?」
「もちろんです!言われるまでもありません!私は死ぬまで源治殿と離れる気はありませんよ!」
「そこまで腹が決まってんなら拒否する理由もねえな、いっちょ地獄の底まで相乗りと行こうか」
そう言って源治は怪異狩りの準備を始める。普段から使っているショットガンの調子を確かめ弾を装填し、他にもサイドアームとなるリボルバー等をコートの内に収めていく。ふと亜紀の方を見ると、亜紀は特に準備をしておらず、確認できる武器は腰に下げた刀だけであった。
「お前、本当にそれだけでいいのか?武器がないなら貸すぞ?」
「ご心配なく!私の腕とこの愛刀「斬無」にかかれば戦車ですら切り伏せてみせましょう!」
「そうかい、だったらその腕を存分に信用するとしようか」
「はい!」
源治が準備を終えれば、亜紀を後ろに乗せると
「と、その前に源治殿、そのお面は外したほうが・・・」
「・・・駄目?」
「・・・駄目です・・・」
「ならこれで」
「・・・わかりました。それなら良いです」
そうやり取りをかわせば、女児向けのお面を捨て指定された現場へとバイクを走らせた。




