Death of past~源治の過去~
前までの話がギャグ回だったので、バランスを取る意味合いで今回からはシリアスな話が続きます。
源治の過去回なので凛や菫は出てきません。
「お前、小遣いやるから明日は一日出かけてろ」
幽霊船での一件の後、特に怪異狩りも無くゆっくりとした日々を過ごしていた二人だが、ある日源治がそんなことを言い出すと、財布から数枚の札を出すと凛に押し付ける。
「出かけてろって・・・別にいいけどどうしたの急に?お金までくれるし」
「良いから、ほら出てった出てった」
「ちょっちょっと・・・もう」
半ば追い出されるように館を追い出された凛は握らされた札をポケットに押し込むと館を後にし、当てもなく繁華街をうろつく。
しばらくぶらつくき、ふらっと入ったゲームセンターで人だかりができているのを見つけた。気になって覗いてみると、どうやら格闘ゲームのコーナーらしい。筐体には「GIRI GIRI PERFECT KNOCKOUT」(ギリギリパーフェクトノックアウト)とやたら長い名前が書かれている。どうやらそのゲームのプレイヤーが連勝を重ねているようだ。
このゲームは姉とよくやったゲームであることから、懐かしく思った凛は、たまにはこういうのもいいだろうと挑戦者としてエントリーする。選択したキャラクターは「ブレイド」剣による素早い攻撃と豊富な飛び道具で相手を選ばず戦えるオールマイティなキャラクターだ。対する相手は「サゴゾ」動作は遅いが重力トラップで相手の動きを封じ重い一撃を放つやや癖のあるパワーファイターだ。
「このゲームは自信があるんだよね・・・勝つよ」
負けました。完敗であった。すべての攻撃が読まれたかのように防がれると、重力波で動きを防がれコンボを決められた。こうして1ラウンドも取れないまま敗北した凛は、せめて負けた相手の顔を拝もうと席を立ちながら対面を覗くと、そこには見知った顔がいた。
「やA、湖での一件以来だネ」
席に座った菫が凛を見上げていた。
それからしばらく凛は菫が連勝し続けるのを見ると、満足した菫に連れられ近くのファストフード店に入る。
「ゲームが趣味だったんだね」
「まあネ、特に格闘ゲームは得意DA、ところで凛くんHAどうしてここニ?」
「それがさ・・・」
凛が源治に追い出された話をすると、菫は少し難しい顔をすると
「そうカ・・今日は命日だったNA」
「命日って?」
「・・・そうだナ、凛君は知っておいたほうが良いかもしれないNA。・・・一つ昔話をしよウ。君がまだ養成所に入ってなく静葉とは組んでない時DA・・・・」
「はーしんどっ」
菫と凛が、源治の昔話に興じている間、部屋に篭り執筆を行っていた源治は、タイトル部分に「DEATH・THE・CRYSIS~ゾンビ・クロニクル~」と書かれた原稿用紙の横に万年筆を置けば、上半身を伸ばし一息つく。
「そろそろ行くか」
そんなことを呟けば、机の傍らにおいていた花束と酒瓶を手にし屋敷の裏口から出ると、裏庭を進んでいく。
少し歩くと、そこには小さな十字架が置かれていた。
「一年ぶりだな、・・・よっこらしょっと」
十字架の前に胡座をかいて座れば、持っていた花束を十字架の前に置けば酒の栓を開けると一人で酒盛りを始める。その表情は優しく、まるでこの場には居ない人間と会話しているようであった。
少しして程よく酒が回れば、執筆の疲れもあって、うとうとし始める。
そして微睡みの中、過去の記憶を思い出す。
XX年前
真夜中のとあるビル、その屋上に源治は佇んでいた。
外見は、源治が普段任務で着ている服装と大差ないが、唯一違うのはその顔に髑髏を模したフルフェイスのヘルメットをかぶっているという点だった。
源治は、地面に置いていた先端に鉄製のフックが装填された銃を構えると、向かいのビルに向かって発射する。発射されたフックは鋼鉄製のロープを引いて向かい側の少し低いビルの屋上の手すりに絡まり、2つのビルの屋上を結ぶ。
源治はロープがしっかりと固定されていることを確認すると、腰に付けているフックをロープに掛け、ロープ伝いに空中を渡る。
途中で、腰のフックを外せば、源治の体は、落ちながらビルのある一室へ向かっていく。窓ガラスに衝突する寸前、源治は両手に持っているショットガンを発砲し窓ガラスを割り、部屋に侵入する。
ガラスが割れた音で、ショットガンやアサルトライフルを持った男たちが集まってきた、男たちの装備はこの時代の日本が銃の所持が認められたとはいえ、過剰とも言える装備だった。
「武器を捨てろ!」
「・・・ここは宗教法人幻夢会のビルで良いんだな」
「だったらどうした」
「お前たち、その服装、銃の構えからして警備員じゃないな。大方ここの信者たちだろう」
「だからそれがどうしたと聞いている!」
「そうか、これなら・・・心置きなく殺れる」
そう呟いた瞬間、源治の両手に一丁づつ握られていたショットガンが火を吹き、両側に居た信者を吹き飛ばす。
「宗教法人幻夢会、怪異を崇め、尚且つその力を使い国家転覆を図った罪で処刑する」
ショットガンが火を噴く度に、銃を持った信者もそうでない信者も分け隔てなく倒れていく。
立ちふさがるものもそうでないものも全て殺しながらビルの中を進む源治。一際荘厳な扉を蹴り開けると礼拝堂らしき部屋に出た、そこには体は人間、首から上が蛇の怪異「蟒蛇」(うわばみ)と傍らには恐らくこの教団の教祖である小太りの男がいた。
「お前が怪異「蟒蛇」か、処分する」
「処分・・・処分だと?我らよりも劣る存在である人間ごときに我らの生殺与奪権があると思っ!」
蟒蛇はその言葉を言い終える前に火を吹いたショットガンによって頭を吹き飛ばされ即死した。
蟒蛇を即死させた源治は。マスクに隠れ表情が見えない顔を教祖へと向ける。
「おお・・・ありがとうございます!私はこの化物に脅され仕方なく教祖をやらされていたので・・・これは。なんのご冗談ですか?」
ショットガンの銃口は次の標的を向いており、その標的とは教祖のことであった。
「俺の任務は「幻夢会のビルにいる人間、怪異その一切を問わずに皆殺しにしろ」という内容だ。例外はない」
「どうすれば見逃していただけるので?お金ならいくらでも差し上げますとも!ですから何卒!何卒命だけは!」
土下座して命乞いをする教祖の後頭部に源治は無情にも銃口を突きつける。
「金ではないなら女ですか!?それなら残った信者の中からお好きなの女を持って帰って頂いて結構ですので!」
「悪いな、恨むなら恨んでくれて構わない。「死神」に目をつけられたのがその身の不幸と思え」
「死にたくない!死にたくない!死にたくない!死にたくない!」
命乞いをする教祖の声を一発の銃声がかき消した。
こうして、教祖と怪異を殺した源治は、ビル内の他の部屋を探り、そこに誰かいれば老若男女問わず殺して回った。
小一時間もした後ビル内の人間全てを殺害した源治はマスクの耳の部分を抑えどこかと通信を始める。
「こちら「リーパー」任務は完了した。宗教法人幻夢会は今日この瞬間を持ってこの世から消滅した。」
それだけ伝えると通信を切りビルの裏口から出ると、裏路地に止めてあった車の後部座席に座れば運転手の手によって車が路地裏を後にする。
「・・・おれは一体いくつこんなことをすれば良いんだ」
マスクをしたまま頭をかかえ、独白を始めるその声は震えていた。




