PIRATES・OF・LAKE~海賊の最後~
源治、凛、菫の3人が武器を取り戻したことによって、形勢は逆転した・・・とはいかなかった。表面上は押しているように見えたが、斬っても突いても起き上がってくる海賊たちに内心打開点を見いだせずにいた。
「HMM・・・さTE、どうしたものカ」
サーベルの一撃を左手で払い、体制が崩れたところに右ストレートを顔面に叩き込み、吹き飛ばせば、今度は左右からの攻撃をバックステップで躱すと、二人の懐に入り込み、二人同時にボディーブローを御見舞すれば、篭手のギミックが作動し拳から衝撃波を発生させ、二人を船外まで吹き飛ばすと、菫が呟く。
「ねえ、さっきの銃以外に何か持ってこなかったの?」
敵の攻撃をいなしカウンターの要領で、脳天、喉、鳩尾に氷の針を刺せば凛が源治に問う。
「悪霊退散、悪霊退散、エイメーーン!!、こんな事もあろうかと・・・ってそんなもんないわ!精々ボート小屋こじ開けてギッてきたモーターボートがこの船の隣に止めてあるくらいじゃい!」
ビビりながらも一番多くの敵を斬り、殴り飛ばす源治が刀を投げつけ、敵に刺すと別の敵にフランケンシュタイナーをかまし、投げつけた刀を引き抜きながら答える。
「それじゃあ頃合いを見て、そのボートで脱出するのはどう?」
「ダメDA、逃げる最中にクラーケン襲われてドボンDA」
「それじゃあどうやって・・・きゃあっ!」
三人共戦いに集中していたためか(約一名は怖さが先行していたため)凛の足元にクラーケンの触手が近づいていることに気づけなかった。
凛が違和感に気づいた瞬間、凛の体は宙に浮かび放物線を描いて水面に叩きつけられると、そのまま触手によって水中に引きずり込まれる。
「凛君!」
「ガキンチョ!」
凛が落としたブルーローズを拾い二刀流で戦いながら源治は水面に目をやる。凛が浮かび上がってくる様子がなければ、源治の内心に焦りが募る。
「菫!」
「あA!わかっているガ、アテはあるのKA?」
「「アレ」を使う、だからしばらくもたせろ!」
「良いのカ?「アレ」はまだ完成していないだろU」
「そんなこと言ってる場合でもないだろ!とにかく任せた!」
源治はそう言うと刀を持ったまま、湖に飛び込む。
「仲間がやられて自棄になったか?それとも逃げ出したか?」
その様子を嘲るように見ていた船長の真横に菫が船員の一人から弾き飛ばされたサーベルが突き刺さる。
「残念ながRA、そのどちらでもないサ。むしろ今ので君は完全に彼を怒らせたZO、彼が上がってきた時どうやっTE許しを乞うか考えておきたまエ」
「ふん、その強がりがいつまで持つかな」
「さあここからは私とお前たちの時間無制限の1ダウンマッチだ。試合終了のゴングが鳴った時果たしてどちらがリングに立っているか・・・勝負といこうじゃないか!!」
かくして水上のリングに立つは鉄腕の女戦士、それに相対するは不死身の海賊たち、ここに戦いのゴングが鳴る!。
菫と海賊たちが熾烈な戦いを繰り広げている時、凛は水中で必死の抵抗を試みていた。
「(これ・・・外れない、早くしないと・・・息が・・・)」
凛の抵抗をあざ笑うように触手は凛の手足に巻き付き大の字に広げると、服の中に触手を滑り込ませていく。
「(やだ・・・そんなとこ、入ってこないで)」
上半身を這い回る触手の感触に、思わず息を吐き出す。反射的に手で口を覆いたくなるが、拘束されている状態ではそれも叶わず、一度口から溢れ出したことによって、次々と凛の口から気泡が吐き出される。
「(くっ苦しい・・・やばい・・・このままだと死んじゃう)」
息苦しさによって凛の抵抗が弱まれば、それまで待っていたのか触手を下半身這わせようとする。
「(そこはっ駄目!やめて!・・・)」
貞操の危機を感じた凛が弱々しくも力の限り抵抗すれば、煩わしく感じたのか触手が凛の手足を締め上げる。痛みで凛の口からソフトボール大の気泡が吐き出され意識が遠のき始める。
「(おね・・・ちゃ・・・かたき・・・・うてなか・・・ごめん)」
水中だと言うのに炎を纏った人影が猛スピードでこちらへ向かってくるのを見たのを最後に凛の目から光が消え、凛は意識を失った。
菫は追い詰められていた。どれだけ武装しても一人の人間、処理能力には限界があり少しづつ体に傷を負い、遂には船首まで追い詰められてしまった。
「ハア・・・ハア・・・そろそろ限界だNA」
「なかなかおもしろい見世物だった。土下座してお願いするなら娼婦として生かしてやっても良いぞ」
「お前のような・・・下衆な男の娼婦など御免こうむる。私が本当に体を許すのはこの世にただ一人だけだ」
「その一人なら今頃小娘を追ってクラーケンの餌だろうな」
「・・・それHAどうかナ?」
「なに?」
突然湖で爆発が発生し大きな水柱が発生した。
何事かと船長と船員が動揺していると、水柱から出てきた影はその勢いのまま船体に突っ込み船の内部を破壊していく。そして下から甲板を突き破り着地したのは、ぐったりと気絶した凛を抱えた源治が立っていた。
「遅いゾ・・・それで、お姫様は無事救えたのKA?」
「ああ、気絶してるだけみたいだから後頼むわ」
そう言って凛を菫に渡すとグシグシと乱暴に菫の頭を撫でる。
「・・・さてお前ら、人の可愛い後輩を傷物にしようとしたり、ダチをここまで傷だらけにしたり好き勝手やてくれたな・・・ほんとうに・・・ドタマに来たぜ。お前ら皆殺しだ!」
斬無を構える源治の目には今まであった怯えが完全に消え去っており、そこには今まで通り敵を完全に殲滅する一人の狩人が立っていた。
「皆殺しとは大きく出たな、我々は不死身だぞ?どうやって殺すというのだ?」
「御託は良いからよ、とっとと来いや。お前らがどれだけ復活しようとそのたびに細切れにしてやるよ」
「面白い、そこまで言うなら・・・お前たち相手してやれ!」
そう言って船長が呼びつけると船員たちの中から一際巨大な船員が二人現れる。それぞれてには柄まで金属でできた巨大なハンマーを持っている。
「うちの船員の中でオツムはてんでダメだが、腕っ節なら一番の二人だ。大きなことのほざくのはこいつらを倒してからにしてもらおうか、やれ!」
船長が合図すると、二人の船員がハンマーを振り下ろす。
衝撃でホコリが巻き上げられ、少しの間三人が見えなくなる。ホコリが晴れると源治は挽肉になってはおらず、むしろ刀は鞘に収めており、片腕でそれぞれの武器を受け止めていた。
「軽い・・・軽すぎるな、お前らやる気あんのかぁ!」
源治が腕に力を込めると金属できたハンマーの柄が飴細工のようにグニャリと曲がる。そのまま体を撚ると、なんとかハンマーを取り戻そうとしている船員をハンマーごと湖に投げ飛ばす。
「次!」
「あいつらを倒すとは、やるじゃないか。だが粋がるのもそこまでだ。お前と俺の間には無数の船員、そしてクラーケンがいる。どうやってその小娘を救い出したか知らんが、お前は俺にたどり着くことすらできんぞ」
「タコならさっきくたばったぜ。嘘だと思うなら呼んでみろよ。」
それを聞いた船長がドラを鳴らさせるが、何度鳴らしても一向に現れる様子はない。初めて船長の顔に焦りが浮かぶ。
「そら、ここは男らしく一騎打ちといこうや。お前も「元」海の男だろ?ここで男意気見せてみろや。それとも怖いのか?一晩中動き回って疲労している男に負けるのが、・・・腰抜け」
「こっ腰抜けだと・・・てめえなんか怖くねえ!」
挑発する源治に青筋を立てながら腰に下げたサーベルを抜けば、突如船長は手にしたサーベルを自分の体に突き刺す。
「野郎ぶっころしてやらあああああああああ!!」
そう叫ぶ船長のもとに船中の船員が集まっていきグチャリグチャリと肉が潰れる音が聞こえる。音がやんだ頃には、そこに先程までの船長はおらず、あらゆる海洋生物を混ぜたような名状しがたい生物がそこに居た。
「それがおまえの正体ってわけか、お前さんもしかして出身が魚面しか居ない村だったり、親戚にタコみてぇな邪神が居たりしない?」
「俺がこの姿を晒した以上お前はもう終わりだ!本来の姿の俺は不死身ではないがこのパワーならお前殺すのに十分だ。オマエを殺したあとは後ろの女たちだ。見せしめに徹底的に犯し殺してやる」
「確かにパワーじゃちと敵わんが・・・菫!ちょうどいいから見せてやるよ。俺の、変身!」
そう言って腰のベルトの髑髏の目が光ったかと思うと船の上で巨大な爆発が起き、それ以降この湖で幽霊船が出ることはなかった。
目を覚ました凛が居たのは、車の中であり、いつの間にか服も着ていた。
「あれ・・・ここって・・・海賊船は?」
「あいつらなら揃って湖の底だ、もう出てくることもないだろうよ」
「そう・・・ってなんでなんで私着替えてるの!?・・・まさか私にいやらしいことを・・・」
「だからしねえって!俺が相手するのはボンキュッボンのナイスバディだけだと決めてんだよ!この脳内ピンクのまな板女!」
「まな板・・・一度ならず二度までも・・・ぶっ殺す!」
「このくだりやるの二度目だぞ!菫!このバカ抑えろ!」
「やれやレ、怪我人使いが荒いな。凛君、今回はこの男が居なかったら本当に終わりだった。そこに免じてこの場は収めてやってくれ」
「それを言われると・・・わかった。けど帰ったらホラー映画連続で10本視聴の刑ね」
「アイエエ!ジュッポン!?ジュッポンナンデ!?」
こうして、源治、凛、菫の三人組の休暇旅行はふとしたことから怪異狩りとなったのであった。