97 繋がる すれ違う トワとシンヤ
独りでいるという状況と共に急速に拡大していく不安の中で、トワの心が触れ動く。
もしかしたらフロントまで組織の暗殺者が来ているのだろうか。川嶋モトキの名前をだしたことを考えると、関係者に違いない。
トワはもう一度緊張した息を飲みこんで答えた。
「……代わります」
『分かりました。そのまま少々お待ち下さい。おつなぎ致します』
コトコはどこに行った? 本当にシンヤの部屋なのか? だとしたら、彼らにこの電話のことを早く知らせなければ。
『もしもし?』
受話器の向こうから響いてきた声。まったく知らない男の声だった。
キョウでもない、武石でもない、自分の知っている聞き覚えのある声を検索しながら息をつめる。
誰?
『小暮ミクさんですね?』
その名前で呼ぶのは……
受話器を持つ手が震えた。
『切らないで下さい。私は川嶋モトキの同僚だった津久田といいます。川嶋のファイルのことを調べていました。あなたのことは川嶋コトコさんから聞きました』
「コトコ……!」
『突然お電話して申し訳ありませんが、緊急の用件なのです。そこに、武石シンヤはいますか?』
「シンヤ……隣の部屋ですが、……武石?」
『彼が部屋にいるかどうか確認して下さい。彼の名前は武石シンヤ、ご存じありませんでしたか? 中埜貿易の創設者である、武石の甥です』
「ちょっと待って下さい。どういうこと? シンヤが……何? 彼が……タケイシ?」