95 彼女の所在 彼の不在
「それだ。悪いが連れの二人を起こしてくれ。今すぐだ。こちらに連絡を入れるように言って欲しい」
『でも、あの……テロリスト……』
「早く起こしてくれ。川嶋モトキから連絡が入ったと言ってくれれば分かる」
『……え? 何……』
電話の相手は、向こうで何者かと話しているようだ。
『あの……もしもし?』
「聞いている」
『お連れのお客様のうち男の方は、先刻どこかに出ていかれたようです』
「……では、女だけでいい。天城トワを起こしてくれ。防衛庁の川嶋からだ」
『分かりました。少々お待ち下さい』
君国がこちらを伺っているのが気配で分かる。
津久田は険しい顔をして言った。
「やはり、武石シンヤはホテルを出たそうです」
君国は何も言わずうなづいた。ただ、アクセルを踏みこんだ。
覚醒を待つ朝の気配は肌に心地いい。だが、それを感じてはいられなかった。
早朝で車が走っていないのをいいことに、昨日の追いかけっこよりもさらにスピードを上げてマーク2.は南へ向かった。