91 語られる真実とネットカフェの静けさ
ダイスケ:犯人の名は? ファイルの在りかは?
ディスプレイに小さく映る文字。
コトコは息を飲んだ。キーボードの上を指が滑って、事件のあらましを語りはじめる。
いつの間にか午前四時をまわり、辺りは朝の静けさに満ちている。
静かな音楽がかかっている。お世辞にも上品とは言えない味のコーヒーが、どこも揺れてはいないのに静かに波打っていた。
暗い窓の外は、しかし確かに朝の静けさを伝えていた。
硝子張りのネットカフェ。意外にも、数人の客がまだ残っている。
キーボードを打ちながら、私はふと何かを感じて顔を上げた。
暗い窓の外をふり返る。何を感じたのだろう。自分でもよくは分からなかった。
外から誰かが歩いてくる。ホテルの方からだ。
客……?
大きな男。
端正な顔つき。
鋭い目。
見たことのないような表情。
彼は店のガラスのドアを開けると、ためらうことなく真っ直ぐにこちらに歩いてきた。
店員が一度ふり返ったが、彼が構う素振りを見せないとそのままテレビの方向に視線を戻した。