87 彼女を殺すため
君国は画面の中をのぞき見て、息を飲んだ。
彼女は知っている。それも、自分たちでさえ知らないこと、すべてを。
君国は横から津久田の肩をつかんだ。
「彼女がファイルを持っているのかどうか、聞いてくれ」
画面を見たまま、彼はうなづいた。
ダイスケ:君は川嶋のファイルを持っているの?
コトコ :持ってはいません。でも、藤堂さんが亡くなった日、数分だけ私の手元にありました。内容は知っています。
ダイスケ:あの日、藤堂に会っていたのは君だった?
コトコ :新橋のビルで深夜、彼に会いました。彼はファイルをトワに預けようと、そこに来ていました。私はトワよりも先にそこへ行き、藤堂さんと三年ぶりに会って、ファイルを読ませてもらいました。
ダイスケ:念の為に聞く。内容は?
コトコ :中埜貿易、という暗号名で呼ばれている、暗殺組織の告発文書です。
「知っていますね。彼女」
津久田が低く呟いた。
「何故、彼女が小暮ミクと一緒に行動しているのか、と」
ダイスケ:何故、君は小暮ミクと一緒に行動している?
コトコ :兄の死後、私は小暮ミクを探すために中埜貿易に入りました。そこで情報をもらい、彼女を殺すために近付きました。