86 部屋の中の会話 再開
リロードの時間を一番短い30秒に設定してから、津久田はキーボードに向かった。
管理人:コトコ さんが入室されました。
管理人:ダイスケ さんが入室されました。
ダイスケ:こんばんは。パスワード、分かったみたいだね。
コトコ:分かりました<パスワード。今日の夕方、マーク2で追いかけてきたのは津久田さんですね。
ダイスケ:そうです。その時運転していた僕の上司が、今、画面の前にいます。この通信を読んでいるのは二人だけです。彼は三年前、川嶋の上司でした。
「君国さん、何か言って下さい」
津久田が画面から顔を上げた。
「え、何を?」
「コトコちゃんにですよ。僕が打ちますから」
「え……じゃぁ、挨拶から……」
ダイスケ:こんばんは<君国(上司の名前です。
コトコ:こんばんは>君国さん<兄の葬式で一度だけ拝見した覚えがあります。車の中から見て思い出しました。
ダイスケ:あの時、君と会いました。三年ぶりの再会ですね。二人の通信、読ませてもらいます<君国
ダイスケ:まず初めに、何のために僕に連絡をとったのか聞いてもいいかな。
コトコ:津久田さんは、何故今日あの車を追っていたのですか?
ダイスケ:小暮ミクを探していた。先週、藤堂という川嶋の親友が亡くなった。その事件に彼女が関わっていると考えている。あの車の中に小暮ミクがいたね?
コトコ:いました。彼女は今は『トワ』と名のっています。ただし、兄も藤堂さんも彼女に殺されたのではありません。
ダイスケ:君は犯人を知っている?
コトコ:知っています。兄のファイルも読みました。