74 接触
大通に入って、急にシンヤが静かになった。
運転もまた荒いことを予測していたが、今はそうでもない。どちらかというと慎重に(それでももちろん制限時速はこえている)運転していた。
どうでもいいようなかどを幾つか曲がり、大通りを北上して都心部に向かっていた。
まなざしも真剣で、何度かバックミラーを確認している。
トワもそれに気付いたようで、シートベルトを締め直していた。
「……トワ、確認してくれる?」
五分ほど走ってから、彼はルームミラーを調節しながら言った。ちょうどトワに見える角度にしたいようだった。
トワはうなづいた。
「……そこ、もう少し右……それでいいわ」
「後ろ。三台目のマーク2。男が二人だと思う」
そこでようやく私にも話の筋が分かった。
「つけられてる」
私もトワと一緒にミラーをのぞき込んだ。
三台後ろには白のマーク2、かなり離されてはいるがそれでも必死についてこようとしている。どうやら本職の尾行ではないようだ。
「組織の人間じゃないわね。警察かしら」
「もっと車を寄せてみましょうか? 喧嘩売ってるならはっきりさせなきゃ」
そう言うと、シンヤはわざと減速して、車を左車線に寄せた。