71 夜に踏み出す
それを確認した後、君国はやっと煙草を捨てて言った。
「今から麻布に向かいます。もし、この地区からランドクルーザーが出てきたら、私の携帯に電話をください」
「分かった。だが、暗視システムが組みこまれているわけじゃない。完全に暗くなったら、判別することはできないよ」
「分かる限りでけっこうです」
津久田と君国は連れだって交通監視センターを出た。
かなりあたりは暗くなっている。
「何だか、近付いてきた感じですね」
津久田が緊張した面持ちで言った。
「でも、見つけたらどうするんです? 現行犯以外に逮捕権はないし、小暮ミクとまったく関係のない男かも知れないんですよ? 中埜貿易の人間かも。だとしたら、」
「とりあえず、川嶋モトキを殺しましたかとでも聞いてみるか」
「ファイルの在りかとか? 教えてくれますかね」
「だとしたら有り難いがな」
うそぶいて、君国は車に乗りこんだ。
地図を頭の中に思い描く。麻布、彼の住みかだろうか。あるいはそこに川嶋のファイルを隠しているかも知れない。
はやる気持ちを抑えて、彼は車を飛ばした。