69 追跡
「ここだ! この交差点。止めてください」
津久田が言った。
路上の混み合い状況を確認する監視モニターの一角に、あのランドクルーザーが映っていたからだ。
「えっと、これは4時52分だね。渋谷23だから……次に映るのは、これかな? 下田さん、文京の28番映してくれる? 4時50分位からの分」
「おいよ」
交通監視センターの職員は大儀そうにそう言って、監視モニターの録画画面を表示させた。
画像はコマ送りになっている。もちろん、記録用ハードディスク容量の節約のためだ。その一角にランドクルーザーを発見する。
「これです。これ!」
「ずいぶんスピード出してるな。前の車パッシングされちゃってるよ。下田さん、次、27番」
「ん」
順を追っていくとよく分かる。車はいったんトウキョウ郊外に出て、そこからまた引き返して、今度は都内を東へ向かったようだ。
主に津久田が追跡し、君国は後ろの目立たないところで煙草を吸っていた。
交通監視センターのモニター前の人間は、この時間、ニュースに間に合わせるために忙しい。録画再生の相手をしてくれたのは引退直前の老人二人で、しかしそれだけに長年やってきた勘と知識は頼りになった。
彼らはほとんど都内中の通りすべてを知りつくしているかと思われるその経験から、思わぬ効率の良さで追跡を行うことができた。
なにより、防衛庁の人間が追っている車ということで、彼らはがぜん張りきっている。何も言わないうちから、秘密は守ると確約されることさえほほえましい。