68 最後の聖餐
「ありがとう、シンヤ」
トワは照れたように言った。
「どういたしまして」
「でも、この歳になって誕生日のお祝いなんて、ちょっと恥ずかしいね?」
「なぁに言ってんの。歳をとったことを祝ってるんじゃないのよ。あんたが生まれてきたことを祝ってんの。別にあんたの存在は恥ずかしくないわよぉ」
いつものシンヤらしい理屈でそう言ってのけると、彼は無造作にナイフで丸のままのケーキを四等分して皿に乗せた。大きなケーキの四分の一が、私の目の前に座り込んだ。
「さ、コトコも遠慮しない」
遠慮も何も、見ただけで胸やけがしそうだ。
「これ、全部食べるの?」
「大丈夫。コトコはまだ成長期なんだから」
一体私をいくつだと思っているんだろう。それに、成長期云々の問題ではない。
トワはそんなケーキの山にひるむことなくフォークを握った。
火の消えたろうそくが、静かに立ちつくしていた。
「ありがとう、シンヤ」
もう一度はにかんでトワが言った。
シンヤは唇にクリームをつけて、にっこりと笑った。