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64 寄り道 戦士の閑話

「とれたわよ、今度はホテル住まい。まったく私達も優雅な身分よねぇ」

 夕方シンヤが帰ってくると、開口一番そう言った。

「湾岸のリゾートホテル。ちょっと遠くなっちゃうけど、ビジネスホテルに泊まるような面々じゃないしね、私達。そんなとこに泊まったら、逆に目立つから困るのよ。修学旅行生が何組か泊まってる大きなホテルだから、注目されないですむしね。ああいうところなら、長期間泊まっても不思議じゃないし。今日はもう非常線張られてなかったから、かなり自由に歩き回れるわよ。久々に車を飛ばしちゃったわ。気持ちよかった」

 彼の言う「飛ばした」ははたしてどの程度かかなり悩んだのだが、本当に「とんだ」可能性もあるので、深くは追求しないことにした。

 結局、ここに泊まったのは一晩だけだった。緊張と床の固さのせいでほとんど眠れなかったため、ホテルの布団の中で眠れるのはかなり有り難い提案だった。手荷物もなにもないため、簡単に移動できる。

「時間がかかったわね。手間取った?」

「この時期だもの、全然」

 トワが尋ねると、シンヤはにっこりと笑って言った。

「ただ、ちょっとねー」

 余韻を残す話し方をして、シンヤは私達を手早く車に押し込んだ。運転席には彼が座る。

「今日は私が運転するから、トワは後ろ。ちょっと寄り道するわよ」

 シンヤの運転する車に、私は初めて乗った。

 彼は慎重に車を出すと、公共の道路に出た途端恐ろしいスピードで走りだした。

 トワは何でもないような顔をしてゆうゆうと乗っていたが、私は思わずドアの取っ手を掴んだほどだ。加速も大胆で、カーブも路面とタイヤの摩擦を過大評価した速度で走り抜ける。

 これまでトワが運転していた理由がよく分かった。これではパトモスに捕まるよりも早く、警察に捕まってしまう。

 さすがに信号無視はしなかったが、それでも前の車が道を避けるほどのスピードで私達は東へ向かった。


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