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54 信用談義

「鈴見君、この世でもっとも得難いものはなにかな?」

 ちょうど、キョウは自分の腕の傷に包帯を当て直しているところだった。

 鈴見はパソコンから顔を上げた。

「は? なぞなぞですか?」

「違う……あぁ、いや、そうかな」

 そう言って彼はくすりと笑った。器用に自分で結んだ包帯の締まり具合を試しているようだ。腕を何度も曲げている。

「いや、答えはつきなみだけどね」

 鈴見は報告書を書く手を止めないで、首を傾げた。

「つきなみって……『信用』とかですか?」

「大正解。そんなに簡単だった? 僕も歳をとったかなぁ」

 彼は自分の発言を回顧して、反省しているようだ。確かに鈴見のほうが若いが、それもほんのわずかな差だ。

 それでもその会話は飽くまで自己完結的で、鈴見の存在などこれっぽっちも気にしてはいないことを隠してさえいなかった。そして、鈴見もそういう人間をあしらうことには長けているつもりだった。

「僕はそんなのは信じてはいない。だが、日常生活がたくさんの信用でできていることは確かだ。例えば、手を伸ばせばマグカップに手が届くという信用、明日は今日の続きであるという信用、百二十円で缶ジュースが買えるという信用、今夜も月が出るという信用、見たこともない外国が存在するという信用、起きた時眠った場所と同じ場所で目覚めるという信用。他にもあるね」

                                          

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