52 長く長く繋がる
「小暮ミク……!」
「同じ銃なら、誰が撃ったって同じ線条痕しか出ないさ。それに、藤堂とかいう男を撃った拳銃はまったく別物だ。だが、三年前の事件に使われていた拳銃を、誰かが回収したことは確かだな。……それと、もうひとつ弾丸が壁に埋まっていた」
「もうひとつ?」
「これはまったくの別物。藤堂を撃った拳銃とも別物だ。非常階段の方向に向かって撃たれていた。比較的新しい弾痕だそうだが、弾の変形が激しくてこっちは銃の特定はできなかった。ただ、それには壁に貼ってあったクロスの一部と思われるものが付着していて、この弾丸を撃ったのは壁にクロスが張られていた時、誰かが弾痕を作ったあと、壁に貼ってあったクロスを剥がしたのだと考えられる。管理人によれば室内は一年ほど前にコンサルタント会社が出て行って以来そのままだったそうだ」
「誰かが最近その室内を片付けた……」
「ってことだな。状況から考えると、藤堂を殺した人間である可能性が高い」
「後始末屋も……当たってみます」
「それと、現場に残されていたナイフにあった指紋に前科はない。あれはどこにでも売っている単純なサバイバルナイフで、購買者の特定は難しいそうだ」
「そうですか……」
「今んとこ、有益な情報はこれくらいかな。悪いがこの情報は外には洩らさないでくれよ。上司の許可を取ってない」
「え? ですが……」
「こういう秘密漏洩は罪が重い。それくらい、あんたも分かってるだろう? ここだけの話にしといてくれ。じゃぁな」
「あ、」