50 思いがけない電話
夕方になって、君国の携帯にまったく覚えのない番号から電話がかかってきた。
そういった電話には出ないことにしている君国だが、それでも五分おきに連続でかかってくる電話にしびれを切らして、津久田が代わりに電話に出た。
彼は、出たそうそう電話相手に向かって謝っている。何だか嫌な感じがして、自分がとらなくてよかったと、少なからず君国は思った。
津久田がこちらを向く。
とっさに君国は、自分はいないことにしてくれとジェスチャーで示したが、何を勘違いしたのか津久田は君国に代わる旨を相手に伝えている。君国は彼を睨んだ。
「今朝の刑事さんからです」
津久田は携帯を差し出した。
君国は慌てて携帯を受け取った。
「まったく、連絡が欲しいなんて言っときながら、電話しても出ないってのはどうなんだ?」
「すみません」
君国は素直に謝った。
津久田も同じことでなじられたに違いない。君国は自分の携帯のことで怒られたからいいが、津久田にしてみればとんだ迷惑だったことだろう。
「覚えのない番号には出ないことにしてるもんですから。それに、まさか本当に連絡頂けるとは思ってもみませんでしたし……」
「そりゃ、俺だってあんたのところに連絡入れようとは、本当はあんまり思ってはいなかった」
「何かありましたか?」
「あんた、藤堂とかいう同僚の事件について調べてるんじゃないだろうね」
いきなり核心を突く言われかたをして、さすがの君国も言葉をつまらせた。