48 理由
それは死んでもなお発効している力、『大きな権力』よりも大きな力だった。
私はその力の名前を知っていた。
でも、理解したくはなかった。
私が必死で生きてきた三年間が否定されるから。
私は何のために、海外で三年も拳銃に慣れる訓練を受けてきた?
この空虚な何のために?
兄を殺したのは小暮ミクではなかった。トワではなかった。
あの日、それを知った。
藤堂さんが死んだ、あの日。
藤堂さんのことは知っていた。三年前から兄の親友だった。
多分彼は今でも兄の親友だろう。
同郷だということで、休みには何度か実家に遊びに来たこともあった。
真面目で朴訥、融通がきかないが義理堅そうなほんの青年だった。
彼は、あの日、死んだ。
私をかばって。
ナイフを突きつけられて脅された、私をかばって。
あの場所にいた三人目の男、彼がそのすべてをし、私はそれに気付いている。
声が、それだけだった。
一瞬目の前が明るくなって失った視力のために、ほとんどその顔は見えなかったけれど、わざとらしく低くしていたその声から私は知った。
藤堂さんが私に見せてくれた文書を、彼は奪って逃げた。
だから知っている。
彼が持っていることを私は知っている。
彼はどこに隠した?
どこにおいてある?
私は探さなくてはならない。
兄の意図したところを、婚約者のトワに伝えるために。
兄の行動を説明するために。
最後まで兄が考えていたのは、婚約者の小暮ミク、すなわちトワのことだったということを。
兄が藤堂さんに伝えたことを、今度は私がトワに伝える。
だから私は取り戻す。
兄の書いた告発文。