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47 君への、

 中埜貿易。

 私はそこから来た。

 トワとシンヤ、中埜貿易組織を見限って任務半ばで逃亡したとされる二人の人間の始末を任されて。

 何も知らなかった。

 兄は、小暮ミクという見たこともない婚約者に殺されたのだと思っていた。

 だから彼女を捜すためにすべての手を尽くし、最後の手がかりを中埜貿易から得るために、そこに所属した。

 兄が意図していたことを知ったのは、あの日。

 あのビルの中で。

 私は、確かに兄の書いた文書を手にした。

 それは告発文。

 中埜貿易という仮の名を持つ組織を公にするためのファイルだった。

 何故、兄があそこまで私のトウキョウ行きを渋っていたのか、それを知った。

 兄は知っていた。

 自分が危険な状態にあることを。

 だから私を呼ばなかった。

 ひとりでトウキョウに帰って行った。

 その文書には、私に組織が手を伸ばす可能性についても書いてあった。

 そうしてそれを避けるためのあらゆる手段を講じるようにと、誰だか分からない人物に向けて発信されていた。

 兄の文書は、ほぼ正確に中埜貿易の内部状態について把握されていた。

 不完全な形の告発文書ではあったが、それを防衛庁のもっと上のほうに提出していれば、兄は死なずにすんだだろう。それどころか、パトモスの組織壊滅に向けてもっと大々的な行動がとれただろう。

 しかし兄はそれをしなかった。

 私のことを心配しておきながら、彼の文書は私の組織所属という事態を防げなかった。私に関する限り、その文書は不完全な効果しかあげなかった。

 兄はそれを『大きな権力』に預けなかった。

 そして、それ自体が大きなメッセージだった。

 彼はそれを『大きな権力』ではなく、秘密を守れそうなたったひとりの友人に預け、三年も守り通させたのだ。


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