表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/120

46 猫たちの櫓

 トウキョウ郊外の耕作地に囲まれた古めかしい住宅街に、工事途中で無防備に放り出されたビルが、新しい住居だった。

 周りを塀で取り囲まれていること、不法に駐車されたり投棄されたりする車が多くランドクルーザーが目立たないこと、動物が多く(主に猫だったが)侵入者に敏感に反応すること、出入り口が複数ありそのうちの幾つかはまったく人目につかないで外に出られること、などが大きな選別理由だった。

「それほど長く私達だけに網を張っていられるほど、彼らも暇じゃないわ。何日かしたらホテルに移りましょ」

 シンヤは元気よくそう言った。彼は本当にエネルギッシュで、思考型のトワとあまり喋らなくなった私の分まで明るい。

「だいたい、お風呂もないじゃないのぉ。布団もないし、車の中で寝たほうがましだわ」

 それでも彼は、夜までに「まともな」物が食べられるようにすると言って、一台しかない車に乗って午後にはどこかへ出かけて行った。彼のことだ、今後のことについて何か考えでもあるのだろう。

 トワは車に乗っていた地図を頼りに、ひとしきり辺りを散策して、この辺りの地理をはっきり頭にたたき込んでいるようだった。

 私は自分の拳銃をトワに預けていた。本当ならば手放したくはなかったのだけれど、まだ記憶が混乱しているはずの人間がそれを手放さないとなると、いくらなんでもトワもシンヤも私が記憶を取り戻したことに気付くだろうと思ったからだ。

 トワもシンヤも、私がどこから来たのか知っている様子だった。

 多分、それはあの日から。

 新橋のビルで私と会った瞬間に、トワは悟ったのだろう。

 そして私も思いだす。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://nnr2.netnovel.org/rank01/ranklink.cgi?id=koguro
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ