35 援護
シンヤは眉をひそめて私をふり返った。
「コトコ、銃は使える?」
小さく尋ねる。
私はためらうことなくうなづいた。
私が少しもためらわずにうなづいたことにシンヤは少し驚いたようだった。
しかし、
「援護して」
彼はそう言うと、部屋の片隅に置かれていた机に静かに手をかけた。
多分、シンヤはその机に登って、上のほうから扉の向こうに跳びこむつもりだ。
キョウは多分、私達がドアの隅か地面に近いところを使って移動すると考えているだろう。足を狙うために銃口も低いところを向いているに違いない。
高いところを使えば、瞬間だけでもキョウの反応が遅れるかも知れない。机に乗って跳び移れば、瞬間だけ遅れた反応を味方に、非常階段の方向へ行けるかも知れない。
窓はある。でもここは五階だ。マンションの部屋よりは地面が近く見えても、そこから飛び降りれば無事ではないだろう。やはり非常階段を使うしかない。
シンヤを援護しようと、私は彼の代わりに向こうの部屋が見えるぎりぎりの壁際に立って、拳銃を構えた。
シンヤのほうを見る。
彼はうなづいた。
私は戸の影から気配を伺う。足音からキョウのだいたいの距離を感じ取る。
息を吸う。
止める。