表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕ちた勇者がすくうモノ  作者: かにみそ
第一章「二人目の勇者が堕ちるまで」
17/27

コロセウム編-6

あけましておめでとうございます!


本日の更新はこの話だけになります。

よろしくお願いします。

ちょっと用事があると言った鈴麗とは、翌朝にスラムで落ち合う約束をし、その場で別れた。


今優也は、鈴麗から借りた金で奴隷契約用の魔具を買っていた。

盗賊団の奴らに、どうやって奴隷契約をしたのか、怪しまれないようにする為だ。


魔具を買い終えて、用意された宿舎に移動している時、優也は声をかけられた。


「よう、新入り?仕事の方はどうだったんだぁ?」


親しげに声をかけてきたのは、ギースだった。


「ああ、まぁぼちぼちだ。大体目処は立ったぞ。」


「さっすが、期待の新入りは違うねえぇ。―――ところで、そっちのちっこいのはどうした。」


ギースはフローラを指差して言った。

指をさされたフローラが、優也にしがみつく。


「こいつは俺の奴隷だ。見た目が好みだったからな。」


優也は、さっき購入した魔具を見せた。


「ほうほう。おめぇも好きだねえ。くくッ。」


アーラの件以降、ギースはどうやら優也にそっちの気があると思っているようだ。


「―――そう言えば、気になっていたことがあるんだが。」


「ああん?」


「どうしてあれ以来、俺の相手に幼い子供を選ばなかった?」


「そんなもん、またあんなつまんねえことされないようにだろうが。まぁそれに俺はおめえのこと、そんなに嫌いじゃあねえんだよ。」


「それは…嬉しくないな。」


「つれねえなあ…。」


すると、ギースが真面目な声で優也に言ってくる。


「なぁ、おめえ、まじで仲間に入るつもりはねえか?そしたら、奴隷紋も解いてやるぜ?」


「は?」


「おめえがここにやって来たとき、思ったんだよ。―――おめえの目は世界を呪ったことのある目だ。」


「………。」


「俺らと同じ目をしてんだ。…なぁ、俺らと一緒にヤらねえか?今のお前が俺らを憎んでることも知ってる。それでも世界が憎いんだろ?なぁ、どうだ?」


「…考えておく。」


「そうかぁ…。まぁ、今はそれでいい。」


確かに優也はここに来る以前。元の世界に居た頃に、世界を呪ったことがある。

それでも妻のお陰で、その考えを変えることができた。


―――今の俺を美咲が見たら、なんて言うだろうか…。怒る、だろうな…。

それでも―――と優也は少しの迷いを捨てる。


この胸の内に渦巻く憎悪を、どうやって忘れることができるか…。もう後戻りはできないのだ。


「それはそれとして、これからちょっとお楽しみに行くんだが、一緒にどうだ?なんだったらお前の好みに合わせるぜ?」


下卑た顔でギースは言った。


「いや、俺にはこいつがいるから大丈夫だ。」


フローラの肩を抱きながら、優也はその誘いを断った。


「あ~はいはい。そうかよ、…あ、そうだそうだ、見られながら聞かれながらが嫌だってんなら安心しろよ?宿舎の方はそれなりの部屋だからな。くくッ。」


「そうか。それはありがたいな。思う存分こいつとヤれる。」


「くくッ。あー、殺してもいいが、処理は自分でやれよ。」


「殺すわけないだろ。これから何度もこいつでヤりまくるんだからな。」


「くハハッ!ほんとに好きだなおめえ!あー、分かった。今度イイもんくれてやるよ。ちゃんとおめえ好みを用意しとくぜ。そいつに飽きたら言えよ。くくッ。」


「ああ、まぁ飽きることなんてないだろうけどな。こいつ以上の女を、俺は知らないからな。」


「くくッ。そうかい。まぁ、いいや。そんじゃあ、気張れよ新入り。くくッ。」


耳障りな笑い声を残してギースは去って行った。


「ふぅ、行ったか…。??…どうした?フローラ?」


優也は顔を隠してプルプルと震えるフローラを心配する。


「な、なんでもないのじゃ…あ、主様…は、早く、泊まるとこに行くのじゃ…。」


「あ、ああ。」








宿舎は、コロセウムに向かう途中の地下内にあった。

自分に割り振られた部屋に行く途中、フローラにちょっかいを出そうとしてくる輩には、魔力による威圧をしておいた。

顔を青くして謝っていたところを見ると、もう何かしようとは思わないだろう。


「あ、主様…?も、もう寝るのかの?ちと、み、水浴びをさせてくれぬか?わ、妾、その汗臭いじゃろ?」


「ん?問題ないぞ?別に明日で良いだろ?」


「そ、そうか…そうじゃな…どうせ今から汗をかくわけじゃしな…。」


「??…ああ、とりあえずさっさと寝るか…鈴麗との待ち合わせに遅れたら困る。」


ベッドが一つしかないので一緒に寝ることになるが、フローラは小さいし問題ないだろう。

優也は挙動不審な様子のフローラをベッドに誘う。


「ほら、早く入れ。」


「は、はい。…あ、主様…よ、よろしくなのじゃ…。」


「ん?ああ、よろしくな。」


今日からよろしく、ということだろうか。案外律儀なところがあるな。


そして、優也は眠りについた。









―――しかし明朝、フローラの叫び声で目が覚めることになる。


「なあぁぁ~~~~ぜじゃあああぁぁ!!!主様!!!」


「ど、どうした?!」


「これはあれか?!放置プレイというやつか?!…あ、そう思うとちょっと興奮してきたかもしれんのじゃ…。」


「はぁ?」


「はぁ?…じゃないのじゃ!!昨日はあんなことを言ってた癖に!!妾あんなことやこんなことを妄想して、もうお股がびしょびしょなのじゃ!!」


「それ漏らしたんじゃね?」


「マジか。」


「いや俺に聞くなよ。」


「―――って、んなわけないのじゃあああああ!!もうほれ!今からヤるのじゃ!ズボッと入れてドバっと出せばおしまいじゃ!ほれ早くするのじゃ!!ほれ!!」


「いや、無茶言うなよ。」


「さっさと妾を抱くのじゃああぁぁぁぁぁぁ~~~ッ!!」



―――そんなフローラの叫びを聞いて、優也は朝からどっと疲れを感じるのだった。
















「いいか?余計なことは言うなよ…お前は俺の女。おーけー?」


「まぁ、仕方がないわね。私可愛いし。ええ、分かったわ。今だけアンタの女になりましょう。」


したり顔で鈴麗は頷いた。

優也たちは、仕事の報告をするために、盗賊団「謝肉祭(カーニバル)」の首領である、ガリウス・ベイリーに会いに来ていた。

ドアの前に立つ男に声をかける。


「『力は?』」


「『己と』」


「『金と?』」


「『業』」


優也が急いで懸命に覚えた複数の合言葉に、ドアの前の男が頷く。


この合言葉は魔術も利用していて、質問にあった答えと同時に、それに合った魔力を生成し放たなければならない。

その性質上、ある一定以上の実力がある者しか、単身でこの先に入ることはできないのだ。





「やぁ~やぁ~よく来ましたねえ。まぁ、座って下さいよユーヤくん。おや?そちらの女性は?―――ああ、話してもいいですよ?」


「―――こいつが、今回の犯人だ。好みだったので俺の奴隷にした。調教はしておいたから問題ない。」


「ほうほう。ん~~~?あれれれ?確かユーヤく~んは、小さい娘にしか興味がな~いので~は?」


「ギースか…。いいや、それは勘違いだ。確かにそれもイケるが、こっちもイケる。」


「ふむ。まぁユーヤくんが欲しいと言うのなら、認めましょうかね…。じゃあこれが報酬で~すよ。」


「―――貰ってもいいのか?」


「あ~たりまえじゃ~ないですか。もうユーヤくんは俺らの仲間なのですよ?本当は幹部にしたいくらいなのですがねえ…ギースくんがそれはまだ早いと…ギースくんもユーヤくんのことを嫌ってはないようなので~すが。」


「それは、どうも…。しかしなぜ俺のことをそこまで?」


「―――それは目ですよ。」


「………。」


「その目は俺らと同じ目をしています。あ、もし俺が死ぬこ~とがあったらこの組織ユーヤくんに差し上げま~すよ。どうです?」


「…考えておこう。」


―――同じ目をしている、か。…昨日ギースにも言われたことだ。

美咲に救って貰っても、その根底までは治せてなかったと言うことなのだろうか。


自分の中にコイツらと同じ物があると思うと、身体中を掻き毟りたくなるな…。


「あ、次の予定で~すが、近々~村の襲撃を行いま~すので、準備しておいて下さいね~。」


村、と聞いて優也の鼓動が早くなる。

受け取った資料に目を通し、ホッと胸を撫で下ろす。

資料をガリウスに返すと、優也は頷き、部屋から出た。










「あー、気持ち悪かったあー。アンタよく平然として会話してられたわねえ。」


「あー、まぁな。あれくらいの嫌悪感、コロセウムで生活してれば、日常茶飯事だからな。流石に慣れた。」


「慣れたってアンタねえ。ああ、…まだ鳥肌が立ってるわ…。」


そんな会話をしながら、店の陰で待たせていたフローラと合流する。


「おう、待たせたな。」


「あ、主様。」


「ん?どうかしたか?」


「あのじゃな…さっき話しかけてきたオジサンなんじゃが、目の前で消えたのじゃよ…まさかのぅ…。」


「ああ、そりゃあ、相棒の餌になったんだろうな。」


「マ、マジでか…。」


「あ、安心しろよ?害意がない者は食うなって言っておいたから、そいつはおそらく、フローラの体目当てで声をかけてきたんだろうな。」


「主様以外に、そういう目で見られても、嬉しくないのじゃ…」


「フローラ様が無事でなによりです。」


ニコリと笑いながら、鈴麗はフローラの頭を撫でた。




フローラと鈴麗の関係だが、鈴麗はどうやらユグドレシア皇国の勇者のようだ。

その際に鈴麗がお世話になったのがフローラだった。


鈴麗は異世界に召喚されると、メキメキとその魔術の才能を開花させ、すぐに大賢者となった。

研究の末、「召喚魔法」を編み出したまでは良かったが、エルフの国で大賢者は大変だった。

同姓からも貞操を狙われる日々に嫌気が差し、鈴麗は国を出たのだった。


その時に手引したのが、フローラだった。どうやら鈴麗はその時のことで恩を感じているようだった。

余程皇国内での生活が嫌だったのだろう。


優也はこの話を聞いて、絶対にユグドレシア皇国には行かないようにしようと、もう一度、固く決心するのだった。




「あ、それで私はこの後、どうすればいいの?さっきの作戦ってやつに参加すればいいわけ?私イヤよ?善良な村人を殺して周るなんて。」


「ああ、それはしなくていい。鈴麗には他に頼みたいことがあるんだ。」


優也はさっきガリウスから受け取った報酬を取り出す。

中身には、金貨一〇枚が入っていた。日本円にして五百万円の大金だった。太っ腹である。

その中から一枚だけ抜き、残りを鈴麗に渡す。


「その金を、ある村の女性に渡して欲しいんだ。」


優也は、村の場所を鈴麗に説明する。


「え?こんな大金受け取ってくれるかしら…?」


「ああ、キミを心配する者から…とでも言えばいい。あ、俺の名前は出すなよ。」


「―――わかったわ。事情は聞かないでおいてあげる。」


「助かる。―――あ、昨日借りた金は、この金貨を純銀貨に替えてから返す。それと、一週間くらいで例の作戦が始まる。それまでに戻って来て欲しい。いなくなって怪しまれると困るからな…。」


「お金の方は了解したわ。でも一週間ってねえ!無理言わないでよ!どう考えても無理でしょ?!」


「天龍に乗っていけばすぐだろ?」


「て、天龍を馬車代わりってアンタ…。」


「そんなわけで頼むよ。」


「ああ、もう!わかったわよ…それまでに帰ってくればいいんでしょ?!」


自棄を起こしたように言い放ち、鈴麗は優也の前から去って行った。






それから作戦開始まで特にこれと言って、前進は見られず、盗賊団のメンバーにフローラとの仲をからかわれながら、日々を過ごしていた。


気になることと言えば―――


―――フローラの様子が、少しおかしいということだけだろうか。

読んで頂きありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ