(5)幸せの狂気
彼女は問う。
「好きだったんじゃないの?」
俺は答えない。
「愛していたんじゃないの?」
俺は答えない。
「あなたはどうして、人を殺すの?」
俺は答えない。
「そうすることでしか、手に入らなかったんだよね?」
俺は答えない。
「愛し方を、知らなかったんだよね?」
俺は答えない。
「愛してあげるから、愛して欲しかったんだよね?」
俺は答えない。
「だったら、ずっとずっと愛してあげるね?」
俺は答えない。
(5)
「どうしたの?ぼんやりして」
「・・・・・・あ?」
顔を上げるとそこにはカナタが立っていた。俺は視線を逸らす。
正直なところこの女のことは好きになれそうになかった。見ているだけで胸がざわざわするのだ。
なんとなく・・・そう、なんとなく・・・この女とは仲良くなってはいけないと、近づきすぎてはいけないと・・・まるで警告のように頭の中で鳴り響く何かが俺に呼びかけていた。
事実片瀬カナタというこの女は普通の『ふ』の字も存在しない狂気の人間だ。赤の他人に平然とナイフを突きつけるわビンタかますわで全く意味がわからない。
だっていうのに、こうして平然と子供みたいな笑顔を浮かべて俺の前に立っていられる。そのギャップがまた彼女自身の不思議さというか理解出来ない状態に拍車をかけていた。
里見のせいで部屋を飛び出して行ってしまったレンを追いかけることもせずただ立ち尽くしている俺をあざ笑いにきたのだろうか?何にせよこの無邪気な笑顔の裏側に何か魂胆があるのではないかと勘繰ってしまう。
嫌いだからわざわざあからさまに目を逸らしてやったというのにあろうことかカナタはその視線の先に移動し、俺の視線を追い掛け回すように俺の目の前に目の前にと移動した。
そうしてやがて視線を逸らすのをやめると腕を組んだまま満足そうに笑う。
「視線、逸らさないで」
「・・・・・は?」
「他人を真っ直ぐに見られない人は、自分の事も真っ直ぐに見られない」
何を言いたいのかはわかる。しかしソレを何故今俺に言うのかがわからない。
相変わらずの電波っぷりに盛大にため息をついた。
「あんた・・・なんなんだ?」
「私立探偵!」
えっへん!という効果音が聞こえてきそうなほど誇らしげに言った。俺は「ふーんそーですか」としか言えない。
「少し歩かない?」
「嫌だ。あんたと一緒に居たら殺される」
「殺さないから大丈夫」
「わかんないだろ。この間だって俺を殺そうとしたじゃないか」
「・・・・むー」
にらみ合いが続く。そもそもそこまでして俺と話したいことなんてあるのだろうか。
やがてにらみ合いは終わりを告げた。コートを翻して振り返ったカナタはこちらを見ないで呟く。
「きみのお姉さんの事、知りたくないの?」
「・・・・・・・・・」
その可能性は考えなかったわけじゃない。
姉貴はここの住人だったのだから、同じくここの住人であるカナタやツバキならその私生活を知っているのではないかと。
だというのに何故それを訊けなかったのか・・・いや、今までまるで忘れていたかのような感覚は・・・。
何にせよ、向こうにその気があるのなら着いていくのに吝かでもないが。
「本当に危険はないんだろうな?」
「大丈夫よ」
少しだけ寂しげに、どこか遠い場所を見つめるような・・・ムカツクくらい魅力的な瞳で呟いた。
「もう、殺しは引退したから」
さて、その台詞がどんな意味を持つのかはともかく。
俺とカナタは二人で人気のない通りを歩いていた。河川敷を続く細く古ぼけた道、カナタはコートのポケットに両手を突っ込んだまま楽しそうに歩いていた。
時折見せるその笑顔が何だか妙に可愛くて、それがまた俺をイライラさせる。
落ち葉を踏みながら踊るようにステップを踏む女性。他の人間がやっているのを見たら相当ばかげて見えるはずなのに、どうしてかカナタがやると楽しげに・・・そう、幸せそうに見えるのだ。
生きているということだけで幸せを感じているような・・・満たされている人間が持つ一種の魅力というか。
要はこの女は酷く今幸せで、何やってても幸せで、だから何やっててもましに見えるのだ。
「・・・・・・・・それで・・・姉貴の話があるんじゃなかったのか?」
「そうね・・・それじゃああそこで話しましょう」
芝生の上に容赦なく腰掛けた女はにっこりと微笑んで俺を待っている。
何故だか知らないがいつのまにかデートのような光景になっていて頭の上をクエスチョンマークが行き交っていた。
なんというか、もっと血なまぐさい展開になるのかと思っていたのだが・・・作品的にっていうか、なんていうか。
すぐ隣に座るとカナタは両手を天に投げ出して大きく伸びをしてうっとりとした瞳で寝転んだ。
「なあ・・・・あんた何なんだ・・・・?」
「ん〜・・・・元殺人鬼、かな」
「冗談に聞こえねーから・・・」
にっこりと微笑み、それからあの冷たくも美しい瞳で語り始めた。
「愛染ヒイラギが・・・あなたのお姉さんがあのアパートに居たのは半年間の事。つまり案外最近の事よ。ずっとあそこに居たわけじゃなくて、わたしもツバキも数えるほどしかヒイラギには会っていなかったわ」
「・・・・・・・・それじゃアンタが知ってることなんてないんじゃ・・・」
「そうね」
この女。
「知ってるなんて一言も言ってないもの」
いつか絶対天罰が下るだろうな。俺が呪いをかけてもいい。
「でも、レンちゃんのことは知ってる」
「・・・・・・・レンのこと?」
「あの子はね・・・・いつも誰かに怯えた目をしている子だったわ」
半年前に姉貴に連れてられやってきた少女は姉貴以外には絶対に懐かない子だった。
カナタはおろかツバキにさえ見向きもせず、近づけば泣き喚いて逃げ回った。
少女が安心していられるのは母親の隣、腕の中だけで。だからそれ以外は何もかも恐れていた。
少女の身体はいつも傷だらけで時々身体に包帯を巻いていた。
だから虐待ではないかとツバキは疑ったのだが、そんなそぶりは隣に住んでいるカナタも他の住人も見ることはなかった。
二人は常に仲のいい親子で、少し変わっていたものの誰の眼から見ても良好な関係だったという。
というより、少女は母親以外に全く懐かなかった。怪我をしても、一言も口を利くことも無くとも、ただただ母親を求めその傍を片時も離れようとはしなかった。
そして二人はある日唐突にアパートから消え、数日後母親は死体で発見された。
「レンが他の人間に懐かなかった?」
「そう。だからツバキも驚いていたわ。急にレンちゃん、元気になっていたんだもの」
今のレンからは想像もつかないが、まあそんな時期もあったのだろう。
レン自身が人見知りしていたと考えれば・・・・そうも考えたが、やはりどうにも気にかかる。
俺はレンのことも姉貴の事も知らない。何も知らない。知らなくていいと思っていた。
知ることは恐怖だ。知ることは受け入れることだ。知ることは認める事に他ならない。
炎の中で燃えて燃えて燃え尽きて死んだという姉貴が一体どんな想いを抱いていたのか、俺は知りたくなかった。
知りたいと思う心のどこかで、知りたく無いと思う自分がいて、その二つが奇妙なバランスで頭の中を駆け巡り俺の行動も思考もゆっくりと操っているような気がする。
思えば俺の行動も思考も何もかもいつもどこか矛盾していたような気がする。
いつもそうやって自分でもおかしいと思う気持ちを凍らせて気づかないようにしてきた気がする。
俺はレンの何を知っていて、何をしてやれるのだろう。
よく、わからなくなってくる。
レンを殺そうとした自分も、記憶を消してしまう自分も、全てから目をそむけようとしている自分も、レンを守りたいと思う自分も、一人でいたいという自分も、全部全部俺の一部だ。
だからこそわからない。本当の気持ちはどこにあるのだろう?自分のそれすらわからないくせに、レンの気持ちをわかってやることなんて出来るはずもない。
憂鬱な気分は晴れなかった。ポケットの中にしまったままの万札たちが急に存在感をあらわし始める。
どうしてこんな想いをしてまで誰かと関わらなければならないのだろう。
煩わしいから、こうなるのがいやだから人とのかかわりを捨てたはずなのに。
芝生に横になって見上げる空。白い雲はまるで止まっているようで、けれど微かな風の力でゆっくりとだが、本当にゆっくりだったが前に進んでいる。
「なあ・・・・・アンタは誰かを好きになった事があるか?」
「うん?」
「いや・・・・・なんでもない」
「そうね・・・・あるわよ。何度も何度も」
なんでもいいと、もういいと言っているのにカナタは言葉を続けた。
「心から愛した人も居れば愛していなかった人も居るわ。でもそうした関わりや過去や絆の一つ一つが今のわたしを形作っているものだから・・・・思えば全て愛しいものよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・俺はそんな風には割り切れないな」
身体を起こす。川の流れは穏やかだ。
カキーンという、金属バットが硬球を跳ね上げる音がした。頭上を通り抜けていくそれは土手を転がっていく。
「心から愛した人がどうしても手の届かない存在だったら・・・・・アンタはどうする?」
「・・・・・・・・・・・」
ボールを追いかけてきた小さな子供たち。そのはしゃぐ横顔を眺めながら苦笑した。
「すべてを投げ捨てて愛を貫くってのあるだろ?駆け落ちみたいな。結局愛し合う二人のことはその二人にしか口出しできない。そこまで愛し合っているのなら結婚を認めよう・・・みたいなノリ」
「よくある話ね」
「でもそれはそれまで育ててくれた家族や、大切な友達や環境、過去全てを失っても尚それを追いかけるって事だろう?今までにあるすべてをゴミ箱にぶちまけて、新しい物に乗り換えるんだろ?」
それもいいだろう。けれど俺はそれを出来ない。やろうとも思わない。
そうまでしてまで手にしたいものなんかない。今のままでも十分に幸せだから。
多くの人を傷つけてまで幸せになりたくなんかない。それがどんなに正しくとも、俺はその手段を選ばない。
「わたしは無理ね。沢山の人を傷つけてまで一人を選ぶことは出来ないわ。いいえ、それは違うわね」
「違う?」
「それは、たくさんの人を傷つける罪悪感にわたしが耐え切れないから。沢山の大事があるから、沢山の大切があるから生きていられるこの自分自身の命を踏みつけにする事が出来ないから」
「・・・・・・・・・・・・・・そっか」
俺が聞きたかった言葉はなんだったのだろう。
たぶんそれとは違うけれど、でも気に障らない静かな言葉でカナタは答えてくれた。
やっぱり胸のもやもやは消えなかったけれど、俺は立ち上がっていた。
「帰る。レンが戻ってきているかもしれないから」
「・・・・・・・・そう」
立ち去ろうとする俺にカナタは振り向かずに言う。
「幸せになるということはね。誰かを不幸にするってことなのよ」
足を止めた。俺は決まりきっている答えを返した。
「だったら俺は・・・幸せなんかいらない」
やはり振り返ることもせずに。
そう、いつからか憧れは愛情に変わっていた。
憎しみや恨みと羨望の気持ちは紙一重だ。七色の感情の海は言葉に出来ないような関係性や絆を魔法のように生み出して、時に全てを狂わせるような悪戯を演出する。
大嫌いなはずだった、気持ち悪いはずだった自分の姉に恋心を抱いたあの日の俺のように。
それがいけないことだって、おかしいことだって、子供ながらに俺は知っていたから。
薄暗い部屋の中、ストーブの灯りに照らされて怯えていた。
膝を抱え、頭を抱え、怯えていた。
何故そうなったのか理解出来なかった。何故こんなにも自分の姉が好きになってしまったのかわからなかった。
粗暴で横暴でしかも凶暴。だっていうのに優しくていつも凛と胸を張って生きていた彼女。
いつでも俺の手を引いてくれた。いつでも俺を守ってくれていた。
義理の母親よりも、彼女は俺にとって母親らしく、姉らしく・・・言葉に出来ない存在だった。
だからもっと傍に居たいと思ってしまった。繋いだ手を放したくないと願ってしまった。
その手を放していつか彼女が自分ではない誰かと一緒にあの道をあの夕暮れをあの時間を歩くのだと。
今までの自分との想い出を全て忘れてその誰かのために生きてしまうのではないかと。
そう考えるだけで恐ろしくてたまらなかった。
手を繋ぐたび、彼女が微笑むたびに熱くなる胸が苦しかった。
誰にも言えない、誰にも理解されないであろうその感情はいつも俺を苦しめた。
俺は狂っているんだ。
まだまだ子供だったはずの自分がそう感じ始めたのはいつからだろうか。
抑えきれなかった。感情なんて切り捨てて生きてきたはずだったのに。
母が死に父が距離を置き誰もが立ち入ることをしなかった俺という存在の輪郭を彼女はあっさり掴んでしまった。
俺は狂っているんだ。
好きで好きで堪らなかった。何もかもをかなぐり捨てても彼女を好きで居たかった。
それに値しない世界だった。彼女と天秤にかけたら世界は軽く宙を舞う。その程度に過ぎなかった。
何もかもにおいて彼女の笑顔が全てだと感じた時、自分がもう逃げ出せないくらい彼女に囚われている事実に気づいた。
俺は狂っているんだ。
もしも彼女が自分の手から離れてしまうようならば。
もしも彼女が俺の手を放してしまうようならば。
そのときは、俺が壊してしまいたい。
今までの関係も人生も世界も何もかも何もかもすべてすべて俺が俺の手で彼女の全てを壊したい。
そう、願ってしまった。
「サクラ・・・・」
部屋に戻るとリンが畳の上に座っていた。
寒かった。十二月の夕暮れ時、レンは膝を抱えて俺を見上げている。
「おかえり、レン」
「うん・・・・・おかえりなさい、サクラ」
隣に座って抱き寄せる。壁を背にしたまま静かに互いの温もりを感じていた。
レンの身体は冷たかった。その手も冷たい。俺の手を強く引いていた彼女のように。
髪を解いて滑らかな指触りを堪能する。指先にくるくる巻いて見せるとくすぐったそうにレンが笑う。
「なあレン・・・・本当に俺でいいのか?」
「なにが?」
「お前の家族になるのに相応しいのは、俺なのか?」
「・・・・・・・どうしてそんなこと聞くの?」
悲しげな目から視線を逸らしてポケットから大量の一万円札が入った封筒をレンに手渡した。
いくらあるのかは俺にもわからなかったがレンにもその金額がとんでもないことは理解できたらしい。
「俺は強がっても何もわかってないただのガキだよ・・・だからレン、お前を守れない・・・それどころか俺はお前を・・・・」
額に手を当てる。レンの顔を見ることもこれ以上口を開く事もつらくてたまらなかった。
到底無理な話だったのかもしれない。勿論納得したわけではない。納得なんか出来るわけもないけど。
「もしもあの里見って男のほうがお前の父親に相応しいのなら、俺は・・・」
「やめてっ!!!」
静かな部屋に叫びが反響した。
「あんな人パパなんかじゃない・・・あんな人知らない・・・!ママも言ってたもん・・・あんな人パパじゃないって!あたしのパパは・・・・違うもん!」
ぎゅうっと強く爪を立てるように腕にしがみついたレンは息のかかるようなすぐ近く、俺の目の前で言った。
「レンのパパは・・・サクラだもん」
「・・・・・・・・・・・レン・・・・でもな・・・」
「違うよ・・・・レンとサクラは血の繋がった親子なんだよ」
レンの目は真っ直ぐで、俺のことを心から信頼していて。
だけど信じるがゆえに何かにとりつかれたような、狂気をはらんだ綺麗な瞳。
「だってサクラ、ママとしたでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・レン?」
様子がおかしいと思った。けれどその違和感がなんなのか判らず俺は首を傾げる。
いや、思えばずっとずっと感じていたそれはすぐ目の前にあって、けれど俺の目には見えないようななにか。
「あたしは、ママとサクラの間に出来た子供なんだよ?だからあたしのパパはサクラしかいないの。そうでしょ?」
「・・・・・・・・・・・何を・・・・・・・・・・言ってるんだ・・・・?」
「ママがね、言ってたもん!サクラがママにどんなことしたのかも、ママがどんな気持ちだったのかも全部全部!だからレンはママとサクラの子供なんだよ?ねえそうでしょ?そうなんでしょ?」
笑っている。一体何がおかしいのだろうか?全身から冷や汗が噴出した。何故?
「違う・・・・・・・・・お前は俺の子供なんかじゃない・・・・」
姉貴にそっくりな顔で、姉貴にそっくりな泣き顔で、姉貴にそっくりなその黒い髪で。
でもそれは姉貴なんかじゃないはずなのに、どうしてだろう?俺は今、誰を目の前にしているのか?
俺は、誰と喋っている?
「俺とお前のママが関係を持ったのは、七年前・・・・七年前だよ。お前は七歳じゃない。俺はそれからお前のママには会ってない・・・それくらいわかるだろ?」
「うそだよっ!!だって、でも、でもママがいってたもん!ママとサクラは愛し合ってたんでしょ!?」
「レン・・・・違う。それはそうだけど違うんだレン・・・・・お前のママと俺は間違ってたんだ・・・・」
「うそうそうそ!ねえなんでいじめるの?サクラはレンのことが嫌いになっちゃったの?レンのこと好きって言ってくれたよね?レンとずっと一緒に居てくれるんでしょ?傍に居てくれるんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目の前に居るのは誰だ?
これはレンなのか?レンというものなのか?
違う・・・・コレはレンじゃない。この子に宿っているのはそのまんま彼女だ。
この子は彼女だ。まるで生まれ変わったかのように彼女そのままなんだ。彼女の意思が、思いが、この子の身に・・・心に宿っているんだ。
それは素敵なことなのか?それは素晴らしい奇跡なのか?
俺はそうは思わない。
こんなの狂ってる。
レンは何故俺を好きになるんだ。
理由も無く人が人を愛するはずがない。
何故レンは、誰にも懐かなかったレンは俺の傍で笑うのか。
「レンはね・・・・ママの代わりにサクラを愛してあげるの」
胸に手を当て、少女は笑う。
「レンはママの代わりなの。ママの代わりにサクラをずっとずっと愛してあげるの。傍に居てあげるの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから愛して・・・・レンを捨てないで・・・・一人ぼっちにしないで・・・・サクラ・・・・さくらあっ!!!」
ぼろぼろと涙を零しながらレンは笑っていた。
俺は悔しくて悔しくて涙を零していた。こんな単純な事にも気づけなかった自分が情けなくて。
少女を救ってやれないことが悔しくて。自分が今まで何も知らないで生きてきた事が口惜しくて。
「レン・・・・・・・・・違うんだよ・・・・・・・」
レンを抱きしめた。
何故こんなことになってしまったのだろう。
姉貴はレンに何をしたのだろう。
レンに、何を求めていたのだろう。
「お前は姉貴じゃあないだろ・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
彼女は何を思って何のために死んだのだろう。
俺は、どこで間違ったのだろう。
あとがきおまけまんが
〜それいけ!アウグストス!〜
*前回までのあらすじ*
ゲームセンターでサクラがゲットした兎のぬいぐるみアウグストス。新たな持ち主であるカナタと共に彼は今日も世界平和のために戦うのだった!
サクラ「レンを殺そうとするなんて俺はなんてことを・・・」
カナタ「おぉおおりあやあああ!!!死に晒せボケエエエエ!!!」
サクラ「ぐはあ!な、何をするんだ・・・」
カナタ「僕の名前はアウグストス!人殺しをしようとするロリコンを裁くために存在する正義のヒーローなんだ」
サクラ「ロリコン言うな!!!」
カナタ「君はもうTVとかで取り上げられている犯罪者そのままじゃないか!小学生の後をつけて可愛かったから持ち帰って殺そうとするなんて!」
サクラ「大体あってるのがムカツク・・・」
カナタ「まあ君みたいなロリコンが一人くらい居てもいいけどね。悪が滅んだら正義が必要とされなくなるし」
サクラ「おい、お前ろくでもないこと言ってんな・・・」
カナタ「それじゃあまた会おうねロリコン野郎」
サクラ「・・・どりゃ!」
カナタ「あーーーー!!!アウグストスがーーー!」