第7話みんなの広場を守れ!の巻
と、いうわけで。2014年になりましたが。
この世界ではまだまだ2013年です。あしからず
初夏に近い、陀賀市。
その街にある、とある住宅街の道を赤いランドセルを背負い、シニヨンと通学帽を揺らしながら1人の女の子が走っていた。
その女の子は更科みく。体を動かすのが大好きな小学5年生。
他の小学生と少し違うのは、うまい棒サラミ味の力を持つ正義の味方うまいファイターサラミという顔を持ち合わせているということ。
……十分違うじゃないかって?まあ、気にするな。
それはともかくとして、みくは家の玄関に駆け込み……
「ただいまー!!」
ランドセルを玄関先にシュートし、靴箱の横にあるキックボードをつかむと
「いってきまーす!!!」
再び家を飛び出した。
「みく、宿題は!」
後ろから母親の声が聞こえてくる。それにみくは
「あとでやるー!」
と、答えた。典型的な小学生の回答である。
まあ、とにかくみくの日常は大体こういう感じだ。
もっとも最近の放課後はうまいファイターとして出動することが多いためなかなか遊びに行けていない。
(一応、活動は楽しんでいるようだが)
今日は久々のお出かけと相成った。
キックボードを蹴りながら街中を駆け抜けるみく。向かう先はいつも決まっている。
こども公園。ここがみくの定番スポットだ。
放課後や休日になると、この公園にたくさん子供達がやってくる。みくもその1人。
この公園にはアスレチックコーナーやローラーブレードやスケートボードで遊ぶためのスペースもあったりなんかして、みくがこの街で1番大好きな場所だ。
「いやー久々だなー」
あ、着いたようです。
初夏のさわやかな風が新緑の葉を揺らし、その上には青い青空。雲も白い。
「よっしゃあ!!!今日も遊び倒すわよー!!!」
ガッツポーズを決め、みくは公園内に入っていった。
「~♪」
広場内をキックボードで駆けまわる、みく。
と、そこの近くを走るジャージ姿の男の子。顔はなんかこう、貧弱そうな感じ。
なんかどこかで見たような。見たことあるのは当たり前。
「おりょ、コウちゃん」
大田コウキ。みくのクラスメイトにして同じうまいファイター。
「ああ、みくちゃん」
公園内に入ってくる。
「がんばってるねー」
「うん、普段も体力つけたいし」
ご存じのようにコウキはうまいファイターに変身すると、凄まじいパワーとスタミナを持つ格闘家になる。
その代わりというかなんというか。変身前はこのようにへろへろで声も小さい。
体育はいつも欠席、といった感じだ。
そんなことじゃだめだと思ったのか、最近トレーニングの量を増やしたらしい。
これが結果につながるかどうかはやってみないとわからないが。
リュックから縄跳びの縄を取り出すと、コウキは縄跳びを始めた。
「この公園って軽いランニングに適しているんだよね……
所々、軽い運動をするポイントなんかも、あったり……
こんなふうに縄跳びをするには十分な広さの広場もあるしね」
縄跳びをしながらコウキは言う。なかなかの向上心じゃないか。
「がんばってるねぇ、コウちゃ……」
言いかけて止める。目の前にはすっかりぶっ倒れているコウキが。
「ああ、力が出ない……も、だめ」
みくはコケた。
いくらなんでも体力なさすぎでしょうが、コウキ君!
よろよろと起き上がりながら、みくは言う。
「ちょっとちょっと、軽いトレーニングでぶっ倒れる子がどこにいるのさ」
「ここに、いるかもぉ……」
弱弱しい声でコウキは言い、みくはまたコケた。
「とりあえずさ、ちょっとしたトレーニングでもぶっ倒れない体力づくりをした方がいいよ……」
「うん、そうする……」
コウキは目を回しながら、言った。
「みくちゃん、来たんだねー」
広場にまたみくちゃんの知り合いが現れたようです。
武藤光一。駄菓子屋武藤商店店主のお孫さんにして、うまいファイターズの副指令。
正直、影が薄いのが欠点だ。
「……その言い方はないんじゃない?」
あ。すみません。
「……お兄ちゃん、今だれと話してたの?」
「なんでもない……」
A:この小説の地の文。
「まあ、それはそれとして。久々の公園だしずっばーん!と遊んじゃおう!」
「ボクは向こうのベンチで休憩してるよ……」
「そうなさい」
そういうわけでございまして。みくと光一は広場にいた他の子供達を交えて、カン蹴りや鬼ごっこ、Sケンで遊び倒した。
そうこうしている間に空が茜色に染まり、この日の太陽が地球の裏側へ大移動をかましだした。
「もう夕暮れです。陀賀市のよい子の皆さん、とっととお家に帰んなさい……」
物寂しげなBGMに合わせ『お姉さん』の声が町中に鳴り渡る。
広場にいた子供達は三々五々、家へと帰宅し始めた。
ちょうどそのころ、コウキも無事復活を果たしていたわけで。
そんなコウキと一緒にみくも光一も家路につこうとした……時。
たまさか、広場に残っていた他の地区の子供達がこんなうわさ話をしていた。
「なんかさ、この公園なくなるかもなんだって」
「えーまじで!?俺嫌いじゃなかったんだけどなー」
「まあ、あくまで噂、だけどな……」
その子供達も広場から出ていった。
ショックで棒立ちになる、光一、みく、それからコウキ。
「……公園、なくなっちゃうの?」
3人はしばらく、立ちすくみ続けた。
そんなわけで翌日の陀賀第一小学校。
「うーん……」
昨晩からずっと、みくは悩み続けていた。
「広場、どうしたら残せるのかなぁ……」
腕を組み、困った顔をするみく。
とにかくとことん、みくは考え込んでいた。……廊下で。
えっと、どういうことかというと……昨晩から悩み続けた結果宿題を忘れやがったのです。
「みくちゃん、どうしたの?」
横に立つ、れたすが小声で問うた。おお、数十行経過してようやく主人公のお出ましです。
あ、ちなみに。奴さんも宿題を忘れました。
「うん、あのね……あたしがいつも遊んでる公園がなくなるらしいって聞いて……」
「も、もしかして。それで悩んで宿題忘れちゃったの?」
れたすの問いに、みくは答えた。
「そのまさか」
れたすが豪快にずっこけたのは、言うまでもない。
2時間目の授業が終わり、業間休みに入るころ2人は廊下立ちの罰から解放された。
そのタイミングで、みくはファイターの仲間達を呼び寄せた。
「公園がなくなる?ああ、そういえばそんな噂、わたしも聞いたわね」
「かごめちゃんも聞いたんだ。ぼくも、なんだよね。よく弟や妹を連れて遊びに行っていたし」
彼方もまた、さみしそうな顔をしている。
「それでさ、どうしたら公園をなくすのを阻止できるのかなーって」
アドヴァイスを請う、みく。
「それならいいアイデアがあるぜっ!!」
勢い良く、ダイゴが言う。……まさかっ、と皆は思った。
予想は当たった。ダイゴはどこからともなくギターを取り出したのだ。
「そこは俺のメッセージソングd「やめなさい」
ダイゴの威勢良さは、かごめの静かなる一喝で鎮まった。
「名案がありますわ」
きらりが口を開いた。一斉に注目する、全員。
「署名運動をしてみては?皆さんの意思がダイレクトに伝わりますし」
「それだ、それだよ!!きらりちゃん、ナイスアイデア!!それで……」
みくは言った。
「『ショメーウンド―』って、何?」
みく以外の全員が、コケた。
「署名用紙?」
放課後。武藤商店、の真下にある秘密基地。
パソコンから向き直りながら、矢尾6姉妹がひとり、矢尾あいは言った。
「うん。みくちゃん達が公園を守るために署名運動をするらしくて、
その用紙を作ってほしいんだって……」
光一は言う。そして、あいはガッツポーズとともに答えた。
「光一さん、任せて!僕もあの公園好きだし」
そう。この地球に矢尾6姉妹と金次郎が来たばかりの頃、光一と街の探検も兼ねた散歩に出かけた際、この公園にも立ち寄っていたのだ。
6姉妹がこの公園ではしゃぎたおし、そして金次郎さんが年齢を考えずに、はっちゃけてぎっくり腰になり、数日寝込んだのは言うまでもない。
まあ、それはさておき。
「あたしも協力するよ!」
らっても、
「いちごもやっちゃうよ!」
いちごも、
「私もやるわね」
あずきも、
「もも、手伝う!」
そしてももや、
「あたいも全力でやっちゃうぜ!」
ゆみもその趣旨に賛同した。
「おーい、ボクちんも忘れないでよねー」
あ、金次郎も。
「みんな、本当にありがとう。……さぁ、力を合わせて公園を守ろう!」
「「「「「「「「えいえいおー!!」」」」」」」」
8人の掛け声で、地下の基地が満たされた瞬間だった。
「あ、それでこーちゃん」
と、そんな雰囲気に水を指すように金次郎は言う。
「何さ」
「……『署名運動』って何?」
矢尾6姉妹と、光一はコケた。
こうして、署名用紙が出来上がりうまいファイターの仲間達と矢尾6姉妹、そして金次郎に光一は署名運動を始めたわけで。
みく達、うまいファイターの仲間達と矢尾さんちの6姉妹は学校で、
光一は駄菓子屋近辺に加え、自身の通う高校でおのおの活動した。
「こども公園の廃止を阻止する署名運動にご協力願いまーす!」
昼休み。子供達はそれぞれの場所で行動を起こしていた。
体育館、図書室近辺、グラウンド、廊下。
各グループに分かれ、署名を集めていく。
矢張り、この公園を訪れる子供や教員は多いようで順当に署名が集まっていった。
「うへへー。いい感じだー!!」
嬉しそうに、みくは笑う。
「そりゃま、人気のスポットだし」
みくにつきそう、かごめは言う。
「ん、ん、ん。そーだ!公園近辺で署名を集めれば、もっともっと集まるかも!」
「あの公園の?」
「そーに決まってるじゃない、かごめちゃん!」
ぐっと指を立てる、みく。
「……けど、そういうことは管理の人に許可を取らないと」
お、かごめちゃん冷静です。
「ふっふっふー、その点に抜かりはないさー」
「どういうことよ」
疑問符を浮かべる、かごめ。
「あたしって、公園管理してる人と顔なじみなのよねっ!」
みくはどや顔とともに、そっくり返った。
「なんかすごいわね」
「そりゃまそーよ!ほぼ毎日遊びにいってりゃ、顔なじみにもなりまさぁ!
うっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
そうしてどんどんそっくり返り……みくは見事に転んだ。
足をVの字にし、頭を下にするというマンガのような美しい転び方であった。
「あなた少し落ち着いたら?」
「はい……」
冷静にツッコむ、かごめ。そして、みくはとほほであった。
そうしている間に、掃除時間5分前を告げる放送が流れた。
と、いうわけで放課後である。
ランドセルを置いて、署名用紙とクリップボード、それから筆記用具を持ってみくは公園へと走り出した。
今回は遊びに行くわけではない。
公園を守るための活動をするのだ。遊んでなんて、いられない。
やがて、同じ方角かられたすとりえ、かごめ、そして光一がやってくるのが見えた。
「れたす君、りえちゃん、かごめちゃん、それにお兄ちゃん!!」
「……こういう許可を取るには年長者が必要だから。
わたしも応援に来たわ。……ついでにりえとれたすも連れてきてやった」
かごめは淡々という。
「ちょ、連れてきてやったって……僕だってみんなの力になりたいし!」
「……どうかしら」
「ふぇぇぇぇ……」
かごめに肩をすくめられ、れたすは泣きだした。
「ってやってる場合じゃないって!早く管理事務所に行かなきゃ」
という焦るようなみくの一言ではっとなった3人はみくの案内で管理事務所へと急いだ。
管理事務所は公園のはずれにある、プレハブだった。
数回ノックし、反応を確認しドアを開ける。
「みくちゃんだね、こんにちは」
「こんにちは」
管理人に、みくは会釈した。他の3人も同様だ。
「えっと。実は今日、重要な用事で来ました!」
「重要な用事?」
管理人に問われ、みくは署名用紙を取り出した。
それに顔を近づけ、眼鏡を少しずらしながら管理人はそれを見る。
「署名用紙?」
「はい!署名用紙です!!」
みくは言った。
「あたし、聞いたんです!この公園がなくなるかもしれないって!!」
それで、とさらに続ける。
「それで!あたし、この公園をなくしたくなくて!!
署名活動をしてるんです!で、今回はその許可を取りに来ました!!」
ぜー、はー。
普段以上の大声を出したため、みくは息を切らした。
その様子を、光一たちはただ見守るだけだった。
しばらくの間を置き、管理人は言った。
「なくなる、っていうのは少し大げさな表現かもしれないね」
『つまり、どういうことだってばよ』と言いたげな表情を浮かべる子供達。
「近々、この公園の近くの道路が拡張工事をするよね?
この工事の範囲にこの公園の一部が入っているんだ」
そういえば、こんな話をどこかで聞いた。
でも、この公園の一部が範囲に入っているなんて今日初めて知ったわけで。
みくはもちろん、光一やれたすにみく。クールで知られるかごめまでもが唖然とした。
「一応、その工事の予定表ももらってあるんだ……」
机に件の品を置く、管理人。いっせいに注目する子供達。
「……結構がっつりといっているわね」
冷静に、評するかごめ。
「全部が全部なくなるわけじゃないってのがせめてもの救い、かな」
光一も続けた。
「け、けど、やっぱり……」
次第に言葉が小さくなっていく、みく。
管理人が、口を開いた。
「実際のところ、ぼくもあまり賛成できないんだ」
「……」
「公園に遊びに来る、子供たちの笑顔が大好きでね……。
特に、君のような毎日公園を訪れる子はね」
「ありがとう、ございます……」
ちょっとだけナーバスだったみくに笑顔が戻った。
「公園の縮小で、それが少なくなると思うと……ね」
「だ、大丈夫です!公園が縮小しても、これからも遊びに行きますし!」
「みくちゃん……」
「それに!なくなるわけじゃありませんし、ね!」
空元気をかます、みくを管理人およびれたす達は心配そうに見つめる。
「とりあえず、署名には協力しておくね……」
さらさらさら。署名用紙に管理人の名前が書かれた。
「ありがとう、ございます……でも、なんかすみません」
かごめは見た。
みくが一瞬寂しそうな表情を浮かべたのを。
しかし、それをあえてれたす達には言わなかった。
結局、署名活動は行わずそのまま帰ることになった。
「みくちゃん、本当に署名活動やらないの?」
みくの顔を覗き込み、れたすは言う。
「アホのあたしでも、『公共の福祉』ぐらいはわかるよ……。
公園の前の道って結構せまくて前々から改修してほしいって声があったらしいしね」
「……そうはいっても、遊び場が縮小されるって結構イタいわよ」
と、かごめ。
「まあね……でもまあ、その代わり工事が始まるまで毎日公園に来ようと思う」
その口調はやはりさみしげだった。
「僕も遊びに行く!」
「私だって!」
「わたしも行かせてもらうわ」
「僕も、混ざってもいいかな」
れたす、りえ、かごめ、そして光一は言う。
「ん、みんなありがとう」
友達の優しさが少し胸に来た、みくなのでした。(←きょうのわんこ風に)
さてさて、そんな心温まる光景が地上で繰り広げられている頃……上空の高級伯爵の城では。
「……なるへそ」
地上の光景をモニターで見ていた、伯爵がほうとしたため息とともに言った。
「市民にやさしい街づくりのために、公園をいくらか犠牲にする……か。
まあ、悪くもありよくもある考えってところか」
―だが、と前置きし高級伯爵は続ける。
「それもいいけど、それもいいんだけど、やっぱあれだ。
『高級スイーツ』だ!工事が始まるまでの間、『GO☆ジャス堂』の店舗を置く!
そして、たくさん金を巻き上げるのだああああああああああああ!」
「短期集中作戦、ってやつですね」
「しょうゆうこと!」
キリッ!
「それでは、早く実行しましょう!」
全身タイツ部下ははやる気持ちを抑えられない。
「いや、明日だ。だってもう遅いし」
真顔で言う、高級伯爵に全身タイツ部下はコケた。
と、いうわけで。翌日である。
みくはキックボードを、りえはバドミントンを、光一は缶蹴り用の缶、
れたすは、ビーチボール(膨らませ前)そして、かごめは縄跳びを持って公園へと急いだ。
「ていうか、ビーチボールて……あなた」
「季節は関係ないでしょ!」
かごめに突っ込まれ、れたすは少し涙目に。
まあ、ともかく。4人は公園に到着した様子である。
「な、な、な、なああああああああああああ!?」
公園の広場にバシッと建てられた、看板。
『高級菓子GO☆ジャス堂 特設店舗近日OPEN☆』
昨日までなかったはずの看板が立っていたもんだから、
子供達は前述の叫びをあげてしまったのである。
「……またやったのね、高級伯爵」
そんな中、冷静にかごめは言った。
「あったりー!ピンポンピンポン大正解!そこのメガネ娘に3000点!」
噂をすればシャドウ。高級伯爵のお出ましである。
っていうか、あんたどこのクイズなダービーですか。
「ってコッラー!あんたいきなりなにしてくれてんのよ!」
そして、御冠なりえ。
「何してくれてんの、ってあーた。見ればわかるでしょう!」
「ぐぬぬぬ……」
りえがぐぬぬ……となる中、広場前にいた他の子供たちを前に、高級伯爵は言った。
「さあさあさあ!OPEN前に特別先行販売!この焼き菓子詰め合わせを
今なら、な・な・なんと!77700円でご提供!」
……だから!あまり安くないっての!
「77700円ってなんか中途半端なんですけどー!」
「っていうかやっぱり高いんですけどー!」
ブーイングな子供達。それをバックに、かごめは言う。
「他の子たちが高級伯爵に注目している間に、変身しときましょ。
……まあ、変身を見られた際のペナルティは知らないけど」
「「「うん」」」
りえ、れたす、みくはいっせいに首を縦に振る。ま、ようするに「イエス」ってことだ。
こうして、腕のブレスを2度叩きうまい棒を召喚。そして、天空に掲げ……叫んだ。
「「「「チェインジ☆うまいパワーボンバー!!!」」」」
(中略)
「サラダでヘルシー勇気りんりん!うまいファイター、やさいサラダ!」
「コンポタでほっこりまろやか気分!うまいファイター、コーンポタージュ!」
「サラミで超ウルトラパワー全開!うまいファイター、サラミ!」
「とんかつソースで小宇宙感じてみる?うまいファイター、とんかつソース」
「「「「サクッと参上!うまいファイターズ!!」」」」
4人でも様になる、前口上である。
「なっ……出たな、お邪魔虫!まあ、今回は4人だけで口上にさほど時間をかけなかったから、よしとしよう」
まあ、毎回全員出して全員の前口上やっていたら内容も薄くなりますしおすし。
「……それはそれとして、戦闘員の皆さん!
私の計画を邪魔するうまいファイターズをやっつけておしまいなさい!」
「イー!」
どこからわいて出たのか、大量の戦闘員が今回もご登場である。
ていうか、第2話以来戦闘シーンでの出番がなかったため必要以上にノリノリだ。
「はっ!はっ!どりゃっ!」
蹴りやパンチをバランスの良い配分でかます、コンポタ。
「えいえーい!」
変身したことでさらに体力全開になったサラミもまた、同様。
「……ふん」
少ない口数で敵に攻撃をかます、とんかつソース。
地上では歩きにくいとされる宇宙服での戦闘にも慣れたのか、そのフットワークは軽い。
「え、えーい!」
やさいサラダもやさいサラダなりに頑張っているご様子。あ、コケた。そんで泣いた。
「ってコッラー!やさいサラダ、また泣いてる!」
これにはコンポタもブチ切れ。
「だって痛いんだもーん!!」
「……そろそろしっかりしないと、主人公の座を下ろされるわよ、やさいサラダ」
「ひどいよ、とんかつソース!!」
と、漫才を繰り広げている間に……戦闘員を掃討していたうまいファイターズであった。
「やるようだな。でも、ここからが本番だっ……!」
胸ポケットの赤いバラが飛んでいく先は……近くの松。
煙と爆音とともに、松モンスターが誕生した。
「ふえええええ!毎回だけど、怖いよおおおおお!」
「毎回だから、泣くんじゃないの!いい加減慣れなさい!!」
「そんなこと言われても、コンポター!」
なーんてやっていたもんだから、松モンスターの腕が地面を殴り……
「「なああああああっ!!」」
コンポタとやさいサラダはブッ飛ばされることになるのだ。
「コンポタ!やさいサラダ!!」
吹き飛ばされた、2人の戦士に駆け寄るサラミ。
「……もう、あんたのせいよ」
「コンポタ、ごめんなさいいいいいいいい」
と、そんな2人をバックにとんかつソースはクールに言った。
「武藤さん、他の子供達を安全な場所に退避させてあげて。
このままこの場所に居続けるのは危険だわ」
「わかったよ、とんかつソース!」
こうして、光一に連れられほかの子供達は避難していった。
「よし!ここから気合入れていくわよ!特にやさいサラダ!」
「……はいっ!」
と、いうわけで。ある意味このシリーズの見せ場といえる巨大モンスターとうまいファイターズとの戦いの火ぶたが切って落とされたりなんかした。
「「「「せーの」」」」
いっせいにジャンプ。今回やさいサラダは無事に空中静止できたみたいだ。
「えいえいえいえいえーい!」
目を固く閉じ、顔部分に連続パンチを与えるやさいサラダ。
「はいっ!」
右こぶしを重点的に蹴っていく、コンポタ。
一方、左こぶしはサラミが担当している。
「……それー」
松モンスターの腹部に向かってパンチをかます、とんかつソース。
まあ、つまり各箇所でうまいファイターズが攻撃をしたりしてるのだ。
「だああああ!もうちょこまかとうっとおしい奴らだ!松モンスター、やってしまいなさい!」
松モンスターが松の葉を飛ばしてきた。
「うわ、うわ、うわ、うわ、うわ!」
必死によける、やさいサラダ。なお他の3人も同様である。
というか、ご存知のように松の葉は刺さったら果てしなく痛い。
だからこそ、回避に必死なのだ。
しかし、いくら体力が幾分か向上したとはいえ延々回避を続けていたら疲れてしまうのは当たり前。
次第にファイター達はへばり始めた。
「ふえええ……もう、だめぇ……」
やさいサラダをたしなめるように、コンポタは言う。
「何いってんのよ、やさいサラダ……ここで……止まったら」
「確実に死ぬわね」
「ぶえええええええええええ!?僕、死ぬのお!?」
あらら、やさいサラダパニックになっちゃった。
眼からは滂沱の涙を流してます。
と、そんな単純なやさいサラダにコンポタは心の中でコケた。
が、すぐに持ち直し……
「んなこたーない」
やさいサラダの頭をレードルで軽く小突いた。
「とんかつソースも、そんな冗談言うんじゃないのっ」
「こりゃまた失礼しました」
まったく悪びれないとんかつソースに、コンポタは頭を抱えた。
なお、以上のやり取りは松の葉マシンガンからの回避と同時進行で行われたわけで。
「っていうか、そんなやり取りしている場合じゃないし!」
はい、その通りです。サラミちゃん。
あ、そうだった。と言いたそうに他の3人は顔を見合わせた。
「まあ、よけてばかりもいられないわよ……ね」
「まったくね」
「いざ!特攻!!」
「ま、まけないもん!」
決意を固める、うまいファイターズ達。
「ふははははは!松モンスター、さらにどんどんやってまえー!」
かくて、4人は松の葉の雨あられの中を進撃することに……なったのだが、
どーも様子がおかしい。松の葉が風を切って飛んでくるあの気配を全く感じないのだ。
「……あ、松の葉ぶっ放させ過ぎた」
高級伯爵の言う通り、そこには松の葉がすっかりなくなった松モンスターが。
「松の葉がなくなって、力がでなーい」といった感じだろうか。
「「「「ヘコー」」」」
そんな間抜けなありさまに、うまいファイター4人は一斉にコケた。
「『詰めが甘い』なんてレベルじゃないわ……」
コケつつ、とんかつソース。コンポタが続いた。
「やさいサラダほどじゃないけど、相当な間抜けね……いや、同等クラス?」
一方その頃、高級伯爵は……爆発寸前だった。
年端もいかない子供たちから『詰めが甘い』とか『間抜け』とか言われちゃあ。
ましてや、やさいサラダと同レベルのあれと言われちゃあ。
そりゃ怒りたくなる。激おこぷんぷん丸ってなとこだ。
顔が赤くなり、そこからは蒸気がシュッポッポ。
「う、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさーい!」
あ、今爆発しました。
「さっきから!言いたい放題!いいやがってええええええええ!
こうなったら、もう1度モンスター作っちゃうもんね!」
と、高級伯爵は件の赤いバラを取り出し適当な木にぶつけようとしたのだが
「そうはさせない」
とんかつソースは冷静に右人差し指を伯爵に向ける。
「サイエンスガン」
大気中のイオンを結集させた弾が人差し指の先端から放たれ、バラを見事にはじいた。
「むきゃー!何すんの!何してくれてんの!」
妨害を受けた高級伯爵は、やはり怒った。
それに反論したのは……サラミだった。
「それはこっちのセリフだよ、みんなの広場をのっとろうとするなんて!
広場はみんなで一緒に遊んでわいわい楽しむための場所なんだよ!
絶対に決して独り占めする場所じゃないんだからね!!
それに!もうすぐなくなる広場に対して失礼だよっ。
ひとりだけが楽しい広場なんて、そんなの広場じゃない!」
言い切り、肩で息をするサラミ。
「っ……!御託をっ……!でもバラはまだたくさんストックあるもんね!」
と、バラを取り出そうとする高級伯爵。
「五択じゃないよ、一択だよ!今日はここで倒されるのっ!」
サラミは素早くブレスをたたき、アイテムを召喚する。
……出てきたのは、キックボードだ。それに乗り、地面を蹴り上げ走り出す。
「キックボードアタック!!!」
キックボードとともに光弾と化したサラミは、高級伯爵とついでに松モンスターに特攻!
「おーぼーえーてろー」
高級伯爵と、松モンスターは吹き飛ばされ……午後3時過ぎの星となったわけで。
「たっだいまー!」
そんな騒動の翌日、みくは今日もランドセルを玄関先に置いて公園へと向かった。
まあそんな日も残り少ないのだが、その日までパーッと遊んじゃえばいい。
それがその広場にとって、1番いいことだから。
あ、そうそう。件の松の木はあいの気合いのサーチで見つけ出し、
いろいろやって元通りにし、キチンと植えなおしたとのこと。
みくがキックボードを駆っていると、塩原兄妹とりえに出会った。
「おー!れたす君に珠音ちゃん、それにりえちゃん!」
「うん、珠音も公園で遊びたいって言ってね」
「ってか、れたすがドジしてしまわないか見張るために、ね☆」
あんまりなことを言いやがった珠音にれたすはコケた。
その後も彼方君とこの弟や妹達、矢尾6姉妹と金次郎さん。
そして、うまいファイターの仲間達と合流した。
え、省略しすぎじゃないかって?気にするな。
まあ、とにもかくにも広場にはフルメンバーが集った。
「さあ、今日も元気に遊び倒すぞっ!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
暖かな太陽、緑の青葉がそんな子供たちを見つめていた。
つづぐ?
いるのかいらないのか解説
※1キックボードを蹴りながら:本当は道交法違反なのだが、演出上……。よい子はまねをしないでね
※2誰と話してたの?:地の文との会話はこの小説のお約束です
※3『お姉さん』の声:夕方ごろになるとその手のBGMとともに小中学生に帰宅を促すアナウンスが流れることがある。
作者の出身地では春夏には5時半ごろ、秋冬には4時半ごろにこの放送が流れていた
※4とっととお家に帰んなさい:テレビアニメ『ふたりはプリキュア』のキュアブラックの決め台詞から。
キュアホワイトの「闇の力のしもべたちよ!」を受けて、言う。
※5数十行経過して:MicroSoftOfficeWordで言うと、大体4ページ目です。一太郎、ほしい
※6つまり、どういうことだってばよ:少年マンガ「NARUTO」にたびたび登場するセリフ。
何度説明してもこのセリフが出てくるものだから
※7公共の福祉:本来は中3の『公民』の授業で初めて耳にすることになる単語。
アホの子キャラ設定なみくちゃんですが、その言葉を知っているなんて意外とインテリ?
※8しょうゆうこと:芸人村上ショージの持ちギャグ。2008年の27時間テレビ(フジ系)で多くの人に知られるようになった。
※9あったりー!云々:テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の某回でばいきんまんがトライアングルを手に言っていた……気がする。
※10そこのメガネ娘に3000点!:テレビ番組『クイズダービー』で一般出場者の皆さんが
正解しそうな回答者に点数をベットする際の発言から。
そんなわけで、使用法が間違っているわけだが気にしないでほしい
※11出たな、お邪魔虫!
テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』において悪事を邪魔されたばいきんまんがいつも言うセリフ
※12ますしおすし:本来は「ですしおすし」。元ネタはFF11におけるプレイヤーが「○○ですし」と語尾に「ですし」と付けること及び、彼がFF11内でよく用いるアイテムがお寿司であったこと。このことから「ですし」と「おすし」が組み合わさり「ですしおすし」となった。
引用:http://netyougo.com/game/4728.html
※13松の葉がなくなって云々:同じく『アンパンマン』で主人公アンパンマンが
何らかの要因(つぶされたり、液体がかかったり、顔を削られたりした際など)で顔に異常をきたした際に言うセリフから
※14五択じゃないよ:「御託」と「五択」を掛けました、以上