表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

第4話新メンバーだヨ!全員集合!!の巻

 

 残りの仲間探しをしようとしたら先方が一気に全員見つけてしまうというおたんちんにもほどがあるくだりで終わった前回。

前代未聞が過ぎる展開を描写したことに関してこの場を借りて、深くお詫びしたい次第だ。

まあ、とにかく。今回の冒頭はそのくだりからの続きである。


 そういうわけで。初期メンバー3人は一気に参入した仲間達を武藤商店へと連れ出した。

「ここって、武藤商店じゃない」

最初に口を開いたのは、更科みく。大事な話があるといわれて連れだされた先がいつも立ち寄る駄菓子屋とはどういうことなのか?

みくは頭上に疑問符を浮かべていた。

「……まあ、ここが駄菓子屋ですか。初めて寄りますわ」

駄菓子屋の外観をまじまじと見つめる少女、照屋きらり。

お嬢様の行動範囲に駄菓子屋はないのか、とても物珍しそうに見つめている。

しかし、何故こういったお嬢様が公立の学校に通っているのか。

親御さんの信条によるものなのかそれともただなんとなくなのか。

残念ながら、事情はまだわからない。

「まあ、あれね。わたし達をこんなところに連れてきた意図を教えてくれるかしら?」

メガネをきらりと光らせつつ、新メンバー勝山かごめは言う。

その時。ドアがバーンと大きな音を立てて、開いた。バーン。

「それを今、教えよう!!」

それと同時に現れたのは……そう、矢尾6姉妹のおじいちゃん兼自称うまいファイターズ総司令の矢尾金次郎さんだ。

「……ちょっとおじじ、いきなり沸いて出ないでよ。ビックリするじゃない」

りえは言う。

「ま、ま、ま。立ち話もなんだし。裏庭へ入って入って☆」

こうして子供達は金次郎に連れられ、裏庭へと入っていった。

と、いうわけで。裏庭。第1話以来、久々に出てくる『どこでもドア』が純和風の庭にどでーんと鎮座している。

「なんか、壮絶な違和感を感じる……」

みつあみお下げの少女で新メンバーの蛯原真世は思わず重ね言葉になってしまった。

まあ、そりゃそうだ。純和風の庭に置かれた未来的なそれはとても不釣り合い。

初見の人が見たら思わずドン引きである。

鍵も兼ねているブレスをドアノブに近づける金次郎。

かちゃり、という音とともにドアが解錠される。

「んじゃま、基地へとごあんなーい!」

嬉々とした表情の金次郎を先頭に子供達はドアの向こうへと入っていった。


 「うっひゃあああああああああああああ!すごい!なんかわかんないけど、すごい!」

ドアの向こうに入るなり、みくがはしゃぎ始めた。

「……ありきたりな感じね」

周りを見渡し、冷淡に言うかごめ。

「えー、かっこいいじゃん!なんかいかにもヒーローの秘密基地って感じで!

なんか、戦闘機とかロボとかの格納庫もありそうな!」

みくは目をキラキラ輝かせる。

「うーん、ごめんね。そういうの、ないんだよね」

「むぅ、なんだつまんないのー」

申し訳なさそうに言う金次郎に、みくは膨れた。そんなみくにかごめは言う。

「まあ、この大画面に大量のコンピューター。そして寒色系の壁に床。

大体の秘密基地の要素は抑えているし、妥協なさい」

「ふぃー。そうするかな」

みくは言った。

と、ここで。金次郎が咳払いをし、一斉に注目する子供達。

「チミ達がここに来てもらったのは他でもない!それは……」

それは……っ!一斉に注目する新メンバーの子供達。

悪い予感を覚えつつも、様子を見守る初期メンバー3人。

「……。その前に新メンバーの自己紹介、してもらっていい?」

子供達が豪快にずっこけたのは理の当然の話。


 とりあえず、自己紹介を終えた新メンバーの皆さん。

「で、結局薬局。オレらをこの異空間に呼び出して何用なわけさ」

椅子に座り腕を組み問う少年、小岩井ダイゴ。金次郎は答える。

「うん。チミ達はうまいファイターのこと、もう知ってるよね?」

うんうん、と新メンバー達は頷く。

「だってここの地域一帯の噂の的だし」

と、新メンバーのひとり水戸夏斗。

「それに2回もボク達の学校に現れたしね……」

か細い声で、同じく新メンバーの大田コウキが言う。

「なんといっても、注目なのはやさいサラダで……」

と、みく。

悪い予感を覚えつつも、やさいサラダ=れたすは耳を傾ける。

「なんかいつも大事な時にドジ踏むので有名なのよね……」

かごめの発言でれたすはずっこけ、太郎は大爆笑した。

「でも、あれだよねー。まさかれたす君達が正義の味方だったなんて」

そう言うのは新メンバーの鳥居彼方。

「なんかちょっとすごいかも!ヒーローがクラスメイトなんて!」

思わずはしゃいでしまう、みく。

「まあ、今のチミもそうなんだけどね」

「え、それって本当?!」

「そのために呼び出したんだけどね……」

みくの予想外のアホの子っぷりにさすがの金次郎も冷や汗である。

「まあ、それは光栄ですわ。れたすさん達と同じ、正義の味方『鵜飼いファイヤー』になれるなんて……」

きらりの発言に金次郎ときらり以外の子供達はコケそうになった。

「えっと、『うまいファイター』……ね」

なんとか立ち直りつつ、金次郎は言う。

「それで、とどのつまりうまいファイターの使命って?」

と、みく。

「うまいファイターの使命。それは……」

真面目な顔の金次郎。息をのむ新メンバーの面々。ある程度の『覚悟』をしている、初期メンバー3人。

「説明、めんどくさいから『いくぜ!うまいファイターズ』の第1話を読んでちょ☆」

金次郎はカメラ目線でウィンクをかました。

新メンバーの面々は……えー説明不要。

そんな金次郎につかつかとりえが近付くと、金次郎の頭をスカンポカンと殴った。

スカンポカン。

「こんな楽をしていいわけがないでしょーが!!」

「すんません……」

りえに殴られ、頭の上に特大たんこぶができた金次郎は涙目で言った。

こうしてりえは金次郎に代わってうまいファイターの使命を身振り手振りを交えながら詳しく説明したわけで。

「……なんちゅーか、スケールがでっかいのかちっちゃいのかわかんないな」

かつてのりえと同様の感想を漏らす、ダイゴ。

「理由はどうあれ地球を救うヒーローには間違いありませんわ。

わたくし、照屋きらり!精一杯がんばりますわ……『鵜飼いファイヤー』として!!」

今度はコケた、金次郎と子供達であった。

っていうか、どこかで見たぞこの場面!

 「そういえば、申し遅れたね。ボクちんはこのうまいファイターの総司令!

姓は矢尾、名は金次郎!みんなのアイドル、矢尾金次郎ちゃんだ!!!」

ビッシーン。決めポーズとともに名乗りを上げる、金次郎。

「……決まった」

どや顔でつぶやく。

「しかし、かっこいい基地だなー」

「なんだかワクワクしてきたぜ、ヒーローなんてよ」

「……精一杯がんばろ」

「うまいファイヤー、いい響きですわ!」

「いやだから、ファイターね」

まったく話を聞いていない面々に金次郎はコケた。

「うぅ、なんなのさ。みんな……もういやん」

床に『の』の字をいくつもいくつも書きながら金次郎はうなだれた。

それでも、何とか気合いを入れ直し金次郎は立ち上がる。

「みんなァァァァ!そろそろ、自分の変身した姿がどういうのか気になるころじゃなーい!?」

声を張り上げる、金次郎。一斉に振り向く子供達。

「ああ、そういえば。一体どんな格好なんだろ!」

みくはワクワクした表情を浮かべた。

「……まかり間違っても、やさいサラダやめんたいのような格好はな」

夏斗の言葉で思わずコケそうになる、太郎とれたす。

「それで、オジン」

「ダイちゃん。金次郎ね、矢尾金次郎」

「まあ、なんだっていーけど」

ダイゴは続けた。

「変身、ってどうやるんだ?こういう感じ?変・身!!」

変・身……!

変・身……!

しん、しん、しん、しん、しん……。

ダイゴの声は木霊となって空しく基地中に反響するばかりだった。

「あるえ?」

疑問符を浮かべる、ダイゴ。

「……なんか、違うみたいだね」

か細い声で、コウキは言う。

「……まあ、ひとまず。れた君にりえちゃんにタロサ、やってみせてよ」

金次郎に言われ、初期メンバー3人は新メンバー達の前に立った。

 「まずは、腕のブレスを2回叩くの」

ブレスを2度叩く、りえ。後の2名も同様。

そこからにょきっと出てくる光り輝く棒状の何か。

空中に投げだされてすぐに、3人はうまいことキャッチする。

それと同時に光がおさまり、その姿が明らかになった。

そう、毎度おなじみのうまい棒だ。

これには思わず、新メンバーな子供達はぽかん。

「……これって……」

と、ダイゴ。

「うまい棒……」

と、彼方。

「……ってなんですの?」

きらり以外の全員がコケた。つか、ベタすぎる展開だ。

「……まあ、きらりちゃんは知らなくて当然か……」

「はい、残念なことに」

コケた状態のままで、真世。一方、きらりは実に残念そうな顔をしている。

「と、とにかく!実演続行!!」

……金次郎の一言で何とか立ち直った初期メンバー達はお手本を再開した。

「んで。こうやってうまい棒を掲げて……」

れたすが言う。そして、太郎があとに続いた。

「こう叫ぶんだ」

「「「チェインジ☆うまいパワーボンバー!!!」」」

再び、発光するうまい棒。

一方、新メンバーサイドの子供達はといえば。

「なんか変なパスワードだーね」

「うん……」

「ボンバー……か」

おかしな変身パスワードに戸惑っていた。

まあ、この後さらに戸惑う展開が待っているわけだけれど。

「んで。発光したうまい棒の包みを素早く開けて」

うまい棒の包みを開ける、れたす。

「さらに、素早く食べる!!!」

太郎はそりゃあもうはやいスピードで食べ始めた。

れたすとりえもザクザクザクッとうまい棒を一気に食べる。

瞬間、3人の初期メンバーの身体が光り始め、その光は次第に強くなりそして……収まった。

 「サラダでヘルシー勇気りんりん!うまいファイター、やさいサラダ!」

「コンポタでほっこりまろやか気分!うまいファイター、コーンポタージュ!」

「めんたいでピリッと決めるぜっ、I’mNo.1!うまいファイター、めんたい!」

口上とともにポーズもびしっと決めた、初期3人。

「うっひゃあ……れたす君達が……」

「変身しちゃったぁ……」

当然だろう。学校で机を並べ、共に学び遊んだりしたクラスメイトがヒーローに変身しやがったのだから驚くのも無理はない。

「まあ。チミ達もそうすることになるんだけどね」

少し誇らしげな、金次郎。

「それはいいんだけどさ」

そんな金次郎のドヤァな空気に水を指すように、ダイゴが言う。

「なんぞね」

「……うまい棒を食べて変身って少しめんどくさくないか?」

思わずこれには金次郎はコケてしまった。まあ、そりゃそうだけども。

「仕方ないじゃない……そう言う設定なんだから」

よろよろと起き上がる、金次郎。

「でもさ、1日に何度も事件が起こったらその度にうまい棒食べることになるじゃない?

太ったりしたら、どうしてくれるのさ。それにご飯前のときとか……」

そんな真世の疑問に、待ってました!とばかりに金次郎は言う。

「実は、その変身うまい棒のカロリーやら何やらは

変身している間のパワーとして消費されるんだ。これこそ、名付けて『うまいパワー』!!

そういうわけだから仮に食べ過ぎたとしても、太ったりお腹いっぱいになったりはしないのさ!」

金次郎はそっくりかえった。

「……なんかどうにも都合のいい設定ね」

りえはつぶやく。……まあ、それは百も承知だ。

「ああ、そういえば。まかり間違ってファイター以外の人が食べちゃったりしたら……」

続いては、きらり嬢の疑問だ。

「うん、その点も心配ないよ。そうじゃない人にはただの『ちょっとおいしくなったうまい棒』だから☆」

「はぁ……」

金次郎の回答に納得する、きらり。

「あ、あと。普通に売られているうまい棒じゃ変身できないの?」

さらに、みくが問うた。

「うん。この『変身うまい棒』は特別だからね」

「へー」

それにしてもアレだ。先程から設定の朗読しかしていない気がする。

こんなんだから、あれなのだ。あれ。

 「よし!設定の説明も一応終わったし!改めてチミ達に変身してもらうよ☆」

金次郎はそのメガネの向こうでつぶらな瞳をキラキラさせた。

「よっし!早速やってみよー!」

ブレスを2度叩く、みく。他の皆さんも同様だ。

先程見たように、うまい棒がそれぞれブレスから出現した。

また設定が羅列することになるが、しばらく辛抱してほしい。

みくのは『サラミ味』、きらりのは『テリヤキバーガー味』、ダイゴのは『チーズ味』。

んで、コウキのは『たこ焼き味』、かごめのは『とんかつソース味』、彼方のは『チキンカレー味』。

そして、真世のは『エビマヨネーズ味』、夏斗のは『なっとう味』だ。

「ひゃあー。本当に出てきたー☆あたしのはサラミ味か。好きなんだよね♪」

「なっとう味!ヒャッホウ!!」

「まあ、テリヤキバーガー味ですか……」

各々がまじまじと、でてきたうまい棒を見つめる。

「ほらほらほら、眺めている場合じゃないっての!」

そうであった。声を出さずとも、新メンバーの顔はそんな感じであった。

「よっし!早速いっちゃうよー!チェインジ☆うまいパワーボンバー!」

発光する、うまい棒。みくはパッケージを素早く開けて食べ始めた。

れたす達と同様に、今度はみく自身の身体が光り出す。

一瞬で光はやんだ。そこにいたのは黄色い指だしグローブを両手にはめ、

青いTシャツに紺色のハーフパンツ。そして青いラインの入ったスニーカー。

まあ、平たく言うと。やさいサラダやめんたいよりまともなデザインなのだ。

「サラミで超ウルトラパワー全開!うまいファイター、サラミ!」

口上も、びしっと決まりました。

一方、やさいサラダとめんたいは指をくわえそのコスチュームを羨ましがっていた。

「わたくしもいってみますわ。チェインジ☆うまいパワーボンバー!」

うまい棒ピカー、からの素早く開封、からのサクサク。

「まあ、うまい棒って結構おいしいんですのね」

そういいつつ、きらりの身体が発光していく。収まった。

赤いシャツに黄色い蝶ネクタイ。青いスカートが素敵なバーガーショップ店員風のコスチュームだ。

「てりやきバーガーで皆さん仲良くスマイルですわ☆うまいファイター、テリヤキバーガー!」

口上の方もエレガントに決まった。

「……」

そんなテリヤキバーガーにドキドキする、やさいサラダであった。

 「うっし!チェインジ☆うまいパワーボンバー!」

今度はダイゴ。同様の手順を踏んで、彼もまた変身である。

青いジャケットに赤い水玉の蝶ネクタイ。そして、赤色のズボン。

ええと、なんていうか。ちょっと昔の歌手的な格好だ。

「チーズであーたもオレもデュワデュワワー♪うまいファイター、チーズ!」

チーズの方の決めポーズも決まったところで、次はコウキ。

「いくよー……チェインジ☆うまいパワーボン……」

ぼて。……コウキ君、ぶっ倒れちゃいました。

「ありゃりゃ。無理せず休んでていいよ……」

そんな光景に思わず、汗。な金次郎。

「それじゃ、いきますか。チェインジ☆うまいパワーボンバー」

やけにミステリアスな感じだが、あとの手順は一緒。

かごめは赤がメインの宇宙服姿へと変身を遂げた。

「とんかつソースで小宇宙コスモ感じてみる?うまいファイター、とんかつソース」

口上の方は……うん、なんていうか。はい。

「じゃあ、ぼくも!チェインジ☆うまいパワーボンバー!」

ちっちゃな体で変身パスワードを叫ぶ、彼方君。

先に変身した他のメンバーと同じく、パッケージを開けうまい棒を頬張る。

一瞬で変わる、その姿。ターバンを頭に巻きそれはまさしくアラビアの王子様。

「チキンカレーの魔法できらぴかりん☆うまいファイター、チキンカレー!」

決めポーズもかわいく決まった。

「まよも!チェインジ☆うまいパワーボンバー!」

続いて、真世。うまい棒を頬張った後、一瞬で魚屋風のコスチュームを纏った。

「エビマヨで大漁大漁超大漁☆うまいファイター、エビマヨネーズ!」

エプロンに『大漁』の文字が躍る。魚屋の娘らしい。

「っしゃあ!チェインジ☆うまいパワーボンバー!」

最後は夏斗。とりあえず、中略。

「なっとうで、大和やまとの心、感じてみよ!うまいファイター、なっとう!」

どうやら、水戸黄門の格さんを思わせるコスチュームをなっとうは纏ったようだ。

「やったー!これで一応、全員そろったね!」

金次郎は指パッチンとともに、歓声をあげた。

「いや、一応って。確かにまだ1個残ってるけど……」

と、めんたい。

「ふぇ!?そうなの!?!」

素っ頓狂な声をあげる、金次郎にめんたいは頭を抱えた。

この爺、大丈夫なのだろうか。

「でも、あれね。宇宙服は憧れだったけど、地上で着ると、少し動きづらいわね」

と、とんかつソース。

「でも、かっこいいよー……」

「そりゃどーも」

後ろの方で休憩している、コウキに褒められまんざらでもないとんかつソースであった。

「チキンカレーさん、とてもかわいらしい格好ですわ☆」

なでなで。チキンカレーを思わずなでなでな、テリヤキバーガー。

「へへっ☆」

チキンカレーもうれしそうである。

「それにしても、ファストフードの制服。憧れでしたの!」

くるくる舞いながら、自分の格好にうっとりするテリヤキバーガー。

……やさいサラダ、再びドキドキである。

「むむぅ、家の手伝いの時の格好と同じだー。

まあ、こっちの方が慣れてるし……いっかー」

と、エビマヨネーズ。

「拙者の格好は……渥美格之進殿と同じでござるか……」

……なっとうの口調が心なしか時代劇調というか武士である。

「ちょちょ、どういうことなの??」

コンポタは思わず、金次郎に問うた。

「はっは。実は、ファイターによっては変身後のキャラが変わることがあるんだ」

「……なんかいろいろ大変そう」

コンポタはぼやく。

「えー面白いじゃん!」

目を輝かせるサラミに、思わずキョトンとなるコンポタである。

「よっし!変身したついでに敵とか倒しに行きますかー!」

サラミはファイティングポーズをとった。

「けど、ついさっきやさいサラダ達が追い払ったばっかだろ、その高級伯爵。

1日に2度もやってくるもんかなぁ……」

その横で、チーズが言う。

やさいサラダはそれに続いた。

「それに、警報なってないしね……」

「え、敵が来たら警報なるの!?すごーい!!」

再度はしゃぎ始めた、サラミに少し呆れるやさいサラダであった。

その後、少し待ってみたが警報が鳴る気配は見られない。

「こないねー」

少しぶーたれる、サラミ。

 「やっぱ2度も来るわけないって」

「ふぇー。せっかく変身したのにもったいなーい!」

チーズの推測にサラミはつまらなさそう。

そんなサラミに、テリヤキバーガーが言う。

「サラミさん、提案がありますわ」

「なんなの、テリヤキバーガー」

「パトロールですわ。ご近所を見て回って、異常がないか確認する。

それも、私達ファイターとしての使命だと思いますの」

テリヤキバーガーの意見に反対した者は……いなかった。

そういうわけで。ひとまず、うまいファイターの皆さんはパトロールに出発したわけで。


 「のわっ!」

ゲートを出た先には武藤商店の一人息子、武藤光一がいた。

いきなり、奇抜な格好をした一団が出てきたもんだから思わず腰を抜かし、先の変な声をあげたという事の次第。

光一はその中のひとり、ピエロの格好をした少年……やさいサラダを呼びとめた。

「……ね、れたす君。ってか、やさいサラダ。もしかして……」

「うん、一気に見つかっちゃった。仲間」

「……こういうのって普通結構話数かけるんじゃあ……」

「そのはずなんだけど、ね」

仲間が一気に見つかる。通常ありえない展開は想像以上に初期メンバーな子供達に衝撃を与えたようだ。

「ちょっと、やさいサラダー!何やってんのよー!」

遠くからコンポタの声が聞こえる。

「まーたみんなの足を引っ張る気かー?」

続いて、めんたい。

気づくとやさいサラダ以外のメンバーは全員、結構な距離を歩いていた。

「え、あ、あう!待ってよ、みんなぁぁぁぁぁぁっ!!」

慌てて皆の後を追うべく、走り出すやさいサラダ。

そして、予想通りというべきか……思いっきり転び、

「ふえええええええええええええええええええ……」

大声で泣き出してしまったわけで。

そして、先が思いやられるなと光一は思った。 

 「んー。至って平和だねー」

てくてくてく。

「平和が一番ですわ、サラミさん」

てくてくてく。

「でも、ヒーローの出番がなくなっちゃうしなー」

てくてくてく。

うまいファイター達は歩く。このご近所を。

至って平和な、このご近所を。

と、そんな空気の中……聞こえてきたのは。女の人の絹を裂くような悲鳴だった。


「きゃああああああああああああああああ!ドロボウネコオオオオオオオオ!」


パーマを振り乱しながら、主婦が叫んでいる。

んで、近くにはお魚を銜えたどら猫が。

「まちなさーい!!!」

フライ返しを持って、裸足でダッシュな主婦。

「あ、福田さんとこの笹江さんだ」

主婦……福田笹江の後ろ姿を目で追いながら、サラミはつぶやく。

走る主婦。駆ける野良猫。この追いかけっこは……あっさりと終わった。

なんでかって。笹江さんが電柱に豪快に激突したから。

「……なんかやさいサラダを見ているみたいだ」

「いや、めんたい!言ってる場合じゃないから!笹江さんを助けないと!」

ひとまず、ノビている笹江さんに駆けよるうまいファイター達。

「あなた達……噂には聞いているわ。うまいファイターね……。

私のことはいいわ……あのどら猫を……お仕置きして」

それだけ言うと、笹江は気を失った。

「よし、俺らであのどら猫をとっちめてくるから、やさいサラダは笹江さんを見ていろ」

「……めんたい。それって、戦力外通告ってことだよね?」

そんなやさいサラダの突っ込みをスルーし、めんたい達はさっさと行ってしまった。

果たして、めんたい達はあっさりとどら猫をお仕置きし、戻ってきた。

魚の方は……残念ながら食われた後ではあったが。

「ありがとう、うまいファイターの皆さん……!」

いつの間にか気絶から復活していた、笹江さんに見送られうまいファイター達はパトロールへと戻っていったわけで。


 パトロールを続ける、うまいファイター達は商店街へと流れついた。

そこでは迷子の子供を助けたり、かごから落ちた野菜を拾ってあげたり。

まあ。至極日常的な事件の解決に奔走したわけで。

たった今も、買い物メモを落として困っていた子供を助けてあげた。

とりあえず、今日のところは高級伯爵がまた現れることはないだろう。

そう判断し、武藤商店へと戻ろうとしたときであった。


 「おい、そうはいいながらもあるんだろー金―」

「そうだ、今ここで跳んでみろよー」


ベタもここまで極まれりなツッパリに小学生が襲われている。

ここはうまいファイターの出番だ。

「お待ちなさい、そこのツッパリ達!!」

コンポタがツッパリ達を指差しつつ、叫んだ。

「なんだなんだー?」

ツッパリがファイター達にメンチを切ってくる。

やさいサラダは完全に震えあがっていた。

「あー。聞いたことがあるぞ、うまいファイターズとかだろー」

「なんか人数増えたよな、この……チンドン屋」

バタバタバタ─────ッッッ!!!

うまいファイター達は盛大にずっこけた。

「チンドン屋じゃない!れっきとした正義の味方だ!!!」

素早く立ち上がる、めんたい。

「正義の味方、ねぇ……なんなら必殺技でも出してみろや」

ずいっと迫ってくる、ツッパリの皆さん。

「ああ、出してやるさ!必殺、明太パァァァァァァァンチ!!!」

素早くダッシュし、拳を振り上げるめんたい。

そうして、めんたいの拳がツッパリの皆さんにヒット……しなかった。

なんつーか、いいタイミングでツッパリがバナナの皮を投げ捨てたことにより、めんたいは豪快に転んだのである。

よろよろと起き上がり、めんたいはつぶやく。

「くそ、俺としたことが……バナナの皮のトラップに引っかかるなんて……」

「めんたい、強く生きなよ……」

少なくともめんたいよりドジなやさいサラダに慰められ、ますますヘこむめんたいであった。


 「っていうか!道にゴミを捨てるなんて、横断歩道だよ!!」

壮大な言い間違えをかましたサラミに、テリヤキバーガーは言う。

「サラミさん、言語道断……では?」

「それだよ!絶対に許さないから!!!」

「なんだなんだ。ガキが偉そうに……全員やっちまえええええええええ!」

ツッパリが一斉に襲ってきた。

「ふえええええええ!こわいよおおおおおおおお!」

「ってバカ!逃げちゃだめでしょ、やさいサラダ!」

「そう言うコンポタ達だって逃げてるでしょ!!」

うまいファイターでも、ツッパリには勝てない。商店街にいた皆さんが諦めかけたその時だった。


「待てや!!!」


向こうから聞こえる、関西弁。そこには仁王立ちする、ボクサーの姿が!

「たこ焼きパワーでタコ殴り!うまいファイター、たこ焼き!遅ればせながら、到着や!」

新たな戦士の登場に、沸き立つ商店街の皆さん。

そして、ぽかんとなるうまいファイターズ。

「やいやいやい!さっきから見とったら……小学生相手にカツアゲとはええ度胸やな?

……あんたらには地獄すらも生ぬるいわ!」

「……くっ。ガキがっ……!」

殴りかかる、ツッパリ。しかし、それよりも早くたこ焼きの拳が舞った。

クリーンヒット。ツッパリは見事に地面にひれ伏せた。

「さて、残りの奴らにもお仕置きせんとな」

つかつかと歩み寄る、たこ焼き。一方のツッパリの残党達はすっかり青ざめている。

「ぎゃああああああああああああ!ゆ、許してくださァァァァァい!!!」

一斉に逃げだす、ツッパリの皆さん。

「あ、ちょ!逃げてんじゃないわよ!!」

追いかけようとする、コンポタ。そこに、金次郎からの通信が入った。

『コンポタ!胸元のチーフタイを外して、振り下ろすんだ!』

「え、こお?」

チーフタイを胸元から解き、思いっきり振り下ろす。

瞬間、それは意思を持ったかのように伸びそして……。

「おたすけぇぇぇぇぇぇ……」

ツッパリの皆さんを華麗に絡め取った。

こうして、商店街が歓喜に沸いたわけで。

  ツッパリどもを交番に引き渡した後もいくらか事件を解決したファイター達は

光一に改めて今回の件を報告すべくいったん武藤商店へ向かうことにした。

変身を解いた後、子供達は驚愕の事実を知ることに。

「ううううううう、うまいファイターたこ焼きって……コウキ君だったの!?!」

れたすは文枝師匠よろしく、椅子ごとコケながらビックリした。

「うん……実はそうなんだ」

「で、でも全然わかんなかったよ!キャラとか全然違ってたし!」

「みくちゃん、なんか変身うまい棒食べたら……すっごく力が湧いてきて、

なんでもできそうな気がしたんだー……」

「いや、『すっごく』ってレベルじゃないくらいすごかったぞ、コウキ」

太郎は思わず突っ込んだ。

確かに変身したら身体能力やら何やらが向上するわけだが、たこ焼きの場合はどうもそのレベルを超越している。

「そういえば、うまい棒のたこ焼きって調味液を2度漬けしてるんだよね。そのせいかな??」

「そういうもんなの……?」

みくの推測に、思わず冷や汗なりえ。

「みくちゃん、あったりー!!ピンポンピンポンだいせいかーい!」

「○」が書かれた札を片手に金次郎が踊り狂う。

あまりの出来事に、みくとコウキ、それから金次郎以外の全員がコケた。

「うっわーい☆やったね!!」

「よかったね……みくちゃん」

自分の考えが大正解で喜ぶみくを、温かく見守るコウキであった。


 「そんなことより、じーちゃん。早く報告しなきゃいけないって気持ちはわかるんだけど。……なんか別に明日でもよかったような」

「えー、なんでだよ。こーちゃん」

「だって……時計、6時過ぎてるし」

危機の間にある、時計(←アナログ)に注目する一同。一瞬の間。

「「「「「「うわあああああああああああああああああああ!?」」」」」」

一斉にゲートへと駆けだす子供達。次々とくぐり、ドタバタと基地を出て行った。

「別にいいじゃんよー。報告は迅速正確ねちっこく!そういうもんでそ!」

「けど、みんな一応小学生だよ。遅くなって怒られでもしたらどうすんのさ」

「……そりゃ、そうだけど……」

すっかり縮こまる、金次郎であった。


 そして、光一の不安は見事に的中し……子供達はいろいろな目にあっていた。

「ふぇぇぇぇ、ごめんなさいぃぃぃぃ」

れたすは見事に閉め出しをくらい、大泣き。

「……うぅ、それは重々承知の上であります。ごめんなさい」

りえは母親からの叱責をいただき、うなだれ

「あぎゃ!あひぃ!ぐぇぇぇ!」

太郎は姉と母から「お仕置き」をくらい、あられもない声を出し

「うぅー。いっかげつは引っ込まなさそう」

みくは親からゲンコツをくらい、頭上に特大たんこぶが。

「はぁ……聖徳太子さんがうらやましいですわ」

きらりはばあや及びお手伝いの皆さん軍団からのお説教をステレオで聞き

「ひ、す、すんません……」

ダイゴは親からのカミナリに思いっきり震えあがり、

「ハニャ」

コウキは罰として町内をうさぎ飛びで100周する羽目になり

「……苦行」

かごめは大量のキャベツのみじん切りをさせられ

「足痛い……」

彼方はきょうだいからの長時間にも及ぶお説教で、足がしびれ

「ふぇぇぇぇ……」

真世もまたお説教をくらい、とほほな顔を浮かべ……

「あはははは……」

そして、夏斗はご飯抜きをくらった。

陀賀市界隈の平和を守るヒーローも普段は小学生。

怒られると、ちょっとかわいそうな感じであった。


 それはそれとして、陀賀市上空。

「ほう、うまいファイターも11人か……。面白くなってきたぞ」

今回出番のなかった、高級伯爵がモニターを前ににやりと笑った。

「そう!俺の活躍もここからが本番というわけだ!はーっはっはっはっは!」

まあ、そうはいっても。今回の話はこれでおしまいなわけだが。

「な、なんだと!?……ウッガー!」

チャン♪チャン♪


つづぐ?


解説の件


※1今回のサブタイ:伝説のお化け番組「8時だヨ!全員集合」 


※2違和感を感じる:よくある重言。私も気をつけます


※3きらりのボケ:特撮『鳥人戦隊ジェットマン』第1話にてスワンホワイトこと鹿鳴館香が

『ジェットマン』を『ジェントルマン』と勘違いしまくったシーンが元ネタ

まあ、確かに鵜飼いは火を使うけども。


※4姓は矢尾、名は金次郎:日本映画『男はつらいよ』シリーズの有名なオープニングナレーションの一部、『姓は車名は寅次郎』から


※5設定の朗読:創作する上で1番やってはいけないことです


※6てりやきバーガーの前口上:『スマイル』は超大手ファストフードのマクドナルドで無料で提供している商品


※7とんかつソースの前口上:少年マンガ『聖闘士星矢』の有名な一文「君は小宇宙を感じたことがあるか」


※8主婦・福田笹江:国民的アニメ『サザエさん』の主人公『フグ田サザエ』

元ネタに負けず劣らずのうっかり主婦である


※9あんたらには地獄すらも生ぬるいわ:少年マンガ『北斗の拳』でケンシロウがジャギヲ倒したあとに言った

「貴様には地獄すら生ぬるい」から


※10椅子ごとコケ:長寿番組『新婚さんいらっしゃい』におけるお約束

あの椅子、何度も修繕して長いこと使っているそうだ。すごいね!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ