第3話どこなんだ?僕達の仲間!?の巻
「いやー。これでうまいファイターも3人かぁ!」
駄菓子屋『武藤商店』……の真下。ここはうまいファイターズの基地兼矢尾金次郎とお孫さんの自宅。
そこに金次郎、孫娘の6人姉妹、武藤商店の1人息子光一君、そしてうまいファイターに選ばれた3人の子供達、
塩原れたす、紺野りえ、明石太郎がいた。
「これで……って……」
少し呆れた口調でりえは言う。
「まあまあ。この調子で他のメンバーも見つけていこう!えいえいおー☆」
腕を振り上げる、金次郎。
「……まあ、おじいさんは残り6つのうまいブレス……置いてきちゃったんだけどね」
あいの冷たい目線がブスブスと金次郎に突き刺さり、金次郎は先程のテンションとは打って変わってしょぼくれた顔で椅子に座った。
「しかし、れたすほどじゃないが……ドジだな、じじい」
太郎の一言が追い打ちをかけ、金次郎は……
「なんだよもお!タロサのバカ!カバ!そんな言い方ないでしょー!?」
すっかり拗ねてしまった。
「でも、うまいファイターって私達3人入れて18人でしょ。
残りはいったいどこにいるのかしら……」
りえは腕を組み、考え込んだ。
「それが問題なんだよねぇー。今回はたまたま同じ学校に3人いたけど
他のファイターも同じとこにいるとは言い切れないし」
同様に、ゆみ。
「でも、そういうのは近場から洗っていったほうがいいと思うよ」
「そーだけど、光一さん。僕達のいる小学校って結構生徒の数多いんだよね」
あいの言う通り。れたす達の通う『陀賀第一小学校』は今どきありえないほどの生徒数を誇っている。
普通にぶーらぶーらと探していては新しい仲間が見つからない。
そういう現実に矢尾さんところの6姉妹は直面しているのだ。
とはいえ、さっさと仲間を集めなければぐだぐだしているうちに高級伯爵はパワーアップしてしまう。
「ひとまず、俺達も協力するぜ。みんなで力を合わせれば何とかなるさ!
……ただし、れたす。お前はだめだ。ドジなお前に重要な仕事は任せられんしな」
「う、うわあああああああああああああああああああああん!!!」
太郎の一言でギャン泣きする、れたすであった。
と、いうわけで。この翌日から1日の日課に『1人でも多く仲間を探しだす』が加わったうまいファイター達。今日もいちにちが始まる。
「おはようございます遅れてすみません!!!!」
れたすは案の定、遅刻をかまし……。
「……本当にすみません」
一緒に来たりえは先生に平謝り。
「やれやれ……」
当然のごとく説教をかっくらう、2人を見つつ肩をすくめる太郎。
説教から解放され、1時間目の国語が再開された。
れたすはやはりというか、なんというか。漢字間違えやら言い間違えを連発し、大恥を晒し、
逆に太郎は流れるような音読(しかも読み間違えや噛みがほとんどない)でクラスを魅了。
ますますれたすのコンプレックスを高める時間となった。
休み時間。らってから1個、うまいブレスを託された子供達はとりあえず、自分のクラスの中をあたった。
……しかし、反応がない。
「りえちゃん、どうだった?」
「んー。だめ」
首を横に振る、りえ。
ここはパーフェクトな俺に任せろっ!といわんばかりにりえからブレスを受け取った太郎もまた……同様の結末だった。
「あのさ、僕にも……」
恐る恐る言う、れたす。
「だめ。お前に任せたら、転んで大事なブレスを壊しそうだしな」
ピシャリと言い放つ太郎。横でりえもうんうんと頷いている。
「ふぇぇぇぇぇ、ひどいよおおおおおおおおお」
泣きじゃくる、れたすを無視してりえは言う。
「本当……一体どこにいるのかしら。新しい仲間」
「まったくだ……」
「今日1日で一気に見つけられたらいいけど……」
「むぅ……」
ええと、今回の話は大体こんな展開の繰り返しになると思いますので、ご容赦ください。
2時間目は理科。教室での授業である。
お題は『種の発芽』。黒板には芽が生えている種の絵が。
その周囲に子供達の意見が書かれていく。
しかし、れたすはまったく言っている意味が理解できずずっと頭を抱えたまま。
もう少し、予習をしておけばよかった……と猛省した。
まあ。他の授業でも言えることなんだけど。
しょうがないので、れたすは板書事項をノートに写すことに専念した。
……ちんぷんかんぷんなのは、変わらないわけだが。
業間休み。廊下の隅でらってと待ち合わせ、経過報告を行った。
「むぅ……そうなんだ」
らっては腕を組み、考え込んだ。
「そうだ!」
れたすは言う。
「らってちゃんのクラスはどうだったの?」
そういえば、そうだ。らっては自身のクラスメイトを調べてみたのだろうか。
もし、1人でもいたとすれば……。
「残念だけど、だめだったよ……念のため、他のみんなのクラスも見てみたけど……」
「だめだったんだ」
と、いうれたすにらっては残念そうな表情で首を縦に振った。
「まあ、でも。1日はまだ始まったばかりだし。そう毎日高級伯爵は現れんだろう」
太郎の言うことも一理ある。
それに、あまり焦るといい結果が出ないものだ。
……それでもまあ、このまま3人だけで活動し続けるのも限界があるのだが。
「ていうか、同じ学校にいればいいんだけどね。新しい仲間」
りえも考え込んだ。
「そんな奇跡、小説やマンガでしかありえんだろーな」
太郎も頭を抱える。
「あのぅ……考え込んでいるところ申し訳ないんだけど
……やっぱり僕も捜索に参加させてよ……」
恐る恐る、れたす。
「「「だめ!!」」」
らって、りえ、太郎の声が合わさる。
「ふええええええええええええええええええええん!!」
やっぱり泣きだした、れたすであった。
3時間目は算数。数の仕組み、と言われてもれたすにはちんぷんかんぷんだった。
大体の学問に言えることだが、やり方さえ押さえれば簡単なものもある。
しかし、しかしだった。黒板に書かれた数字がどうにも別の国の言葉に見えて仕方がない。
算数が苦手なのはれたすだけではないのは確か。
その中でもれたすは……その、うん。あれだった。
今回もまた、かっこいいところを見せやがった太郎を眼前にし、れたすは轟沈した。
っていうか、だんだん言っていることが『眠りの呪文』っぽく聞こえてきて……。
そうしている間に、れたすは……
「グウ」
眠ってしまった。
んで、こんな夢を見た。
気がつくとうまいファイターに変身していた、れたす。
近くには、同様に変身している太郎とりえが。
高級伯爵が大勢の戦闘員を引き連れ、向こうに立っている。
いや、大勢ってレベルじゃない。とにかくもう、星の数だけいるっていう感じなのだ。
3人のファイターはそろって険しい顔つきだ。
「うぅー。このままじゃ負けちゃうよー」
「やさいサラダ、ファイターが弱音を吐いてどうする!」
太郎……もとい、めんたいがれたす……というかやさいサラダに発破をかける。
「そんなこといったって……」
弱音を吐きかけた、その時だった。
「弱音を吐くな、戦士よ!」
向こうから声が聞こえる。そこに視線を移すと……15個の影が。
こりゃあ間違いない。新しい仲間だ……。顔を確認しようと、目を凝らす。
だんだんそれが明らかになってきて……その顔は……。
「え?石政先生??」
15人の石政先生に唖然としていると、れたすの頭上にスパーンと衝撃が走った。
……顔をあげると、怒り心頭な石政先生が。
「……廊下に立ってなさい!」
べそをかきながら廊下に向かうれたすに追い打ちをかけるように、クラス全員が大笑いしたのは……言うまでもない。
4時間目は教室移動であるため、授業が終わるとすぐ教科書を持って教室を出ることに。
ちなみに授業は音楽である。リコーダーや教科書、ノートを持って音楽室に向かう。
授業終了と同時に立たされから解放されたれたすも、同様だ。
「っていうか、れたす。算数苦手なのはわかるけど寝ちゃうことないでしょ……」
「だってぇー……」
しょんぼりしながら、れたす。
一方で、太郎はブレスを片手にうろうろしていた。仲間探しを続けているようだ。
「このクラスに1人はいそうな予感がするが……」
太郎は考え込んでいた。
「如何せん、人数が多すぎる……」
ひとまず、続きは昼休みだな……そう考えている間に音楽室についた。
この日はリコーダーの演奏だった。
指使いは最近ようやく覚えたものの、楽譜が読めないという割とよくある現状に身を置くれたす。
りえに音階を書いてもらったので、今回は何とかなったのだが……。
「おいおい、5年生にもなって楽譜が読めないのか?」
それを太郎に見つかってしまったわけで、ええ。
「仕方ないじゃん!読めないんだもん!!」
むくれる、れたす。
「とりあえず、今回音階書いた楽譜で読み方覚えるといいわ……」
「ありがとう、りえちゃーん」
れたすはまたまた泣きそうになった。
「しかし、あれだ。お前ってマジでれたすの保護者だな」
「……自分でもそう思うわ」
片手で頭を押さえつつ、りえは言った。
その横では必死に楽譜の読み方を覚えようとするれたすの姿が。
なお、れたすが楽譜の読み方を完全マスターするのは……もうちょっとだけ先の話である。
気がつくと、向こうの給食室から漂ってくる匂いが少し強くなりだした。
そう。もうすぐ、お楽しみの給食タイムが近付いているあかし。
ほとんど学校での楽しみが給食のみというれたすにとって、待ち遠しい時間。
……と、その証拠にお腹が鳴り太郎にバカにされまたまたべそをかく羽目になったのは想像に難くない。
と、いうわけで。給食の時間。
本日のメニューは鶏の竜田揚げ、納豆和えにけんちん汁、ご飯に牛乳、オレンジ
……と、牛乳とご飯との相性を別にすれば割とバランスのとれた献立だ。
それに、竜田揚げはれたすの好物。数日前からこの日を楽しみにしていた。
手洗いを誰よりも先に済ませワクワク気分で席に座る、れたす。
「準備ができたから、並んでいいよー!」
給食当番の声が教室内に反響する。
それと同時に、歓声とともに子供達が我先にと並び始めた。
れたすもそのうちのひとり。なるべく大きい竜田揚げを確保するにはとにかく早めの行動が重要なのだ。
……しかし、案の定。
ドンガラガッシャァァァァァァン。
机の脚に躓き、れたすは豪快にスッ転んでしまった。
「……ダサっ」
太郎が一言だけ、れたすに言う。
……ぶっちゃけ、ブスリと来ました。
「ふぇぇぇぇぇ……」
それでも何とか立ち上がり、列に並び直す。
「れたす君、れたす君……」
頭上から声が。あれは……クラスメイトの蛯原真世。
「床に手、ついてたよね……もう一回洗ってきた方がいいんじゃ……」
いいたいことはわかるけど、そういうのは列に入る前に言ってくれ
……と、思いつつれたすは列を離れ手洗い場に向かった。
んで、手を洗い直して戻ってきたころには一部除くクラス全員が並んでおり
とても大きめの竜田揚げを確保できる状況ではなくなっていた。
もう泣きそうである。午前の授業は散々だったし、
自らのドジのせいで大きめの竜田揚げを確保するのは難しくなってしまった。
それでも、竜田揚げは一応もらえるんだ……と、自らを元気づけ、列の最後尾に並びなんとか給食をもらったれたす。全員給食をもらったら、席について……
「合掌。ありがとうございます、いただきます」
「「「「「いっただっきまーす!!」」」」」
と、いうわけで。放送委員会提供のお昼の放送をBGMに給食タイムが始まった。
「ふぅー」
けんちん汁を一口飲んだ、れたす。
そして、そのまま竜田揚げへと箸を進める。ぱくり。
「はぁー。おいしいぃぃぃぃぃぃ……」
恍惚の表情。そうして、竜田揚げをひとつ残し(高学年は1人2個)、次はご飯……である。
「れたす、本当に幸せそうね……」
「そりゃあ、もう!」
本当、れたすの幸せは安いわ……とりえは思ったとか思わなかったとか。
「納豆和え、余ってるけど食べる人いるー?」
と、そこに給食当番の声。
「食べる人いるー、って……進んで食べようと思う人いないんじゃ……」
そう思いながら、納豆和えを食べるりえ。
「はいっ!!」
元気よく手をあげる少年……水戸夏斗君ではないか。
始業式の自己紹介で、名前を聞いたときなんか納豆っぽい名前だなと思っていたら
……本当に納豆が好物だったりしてビックリした出来事をりえは思い出していた。
「っていうか、全部ください!!」
りえはのけぞった。……ここまで納豆が好きだとわ。
嬉々とした表情で、山盛りいっぱいの納豆和えを食べる夏斗。
十人十色とは言うけど、ここまで人はいろいろいるものだ……と思った。
そんな中、れたすは食器をほぼ空にしていた。……ただひとつ、竜田揚げを残して。
珍しい食べ方をするものだ、と今度はれたすに注目するりえ。
そうして、竜田揚げに箸を伸ばした……その時だった。
竜田揚げがホイ、と宙に浮きそのまま……太郎の口の中にシュートされた。
「ふええええええ!竜田揚げがー!!!」
当然のように、泣きだすれたす。
「だってよ、いらないかと思ったしー♪」
太郎は言う。
「う、うわああああああああああああああああああああああああああん!!!」
泣きだすれたすに仕方なく竜田揚げを分けてあげる、りえであった。
と、いうわけで。昼休みである。
今回は気分を変えて、自分達のクラスを一旦離れ廊下をあたることにした。
「ええと、そのぉ……太郎君?」
「……だめ」
後ろからそーっというれたすにけんもほろろな対応をする、太郎。
っていうか。捜索を始めてからこの展開を何度繰り返したか。
「れたす、いい加減諦めたら?」
「でもでも、僕だって一応……」
まあ、うまいファイターの一員として少しは役に立ちたいれたすの気持ちは理解できる。でもねぇ……。
「はぁ……しょうがないな。ただし、1分37秒だけだぞ」
あまりにも微妙過ぎる時間配分にれたすはコケそうになったが、
兎にも角にもようやく自分も役に立てる時がきた。
天にも昇る心地でブレスを受け取ろうとした、その時。
向こうから、少し身長が低めの男の子が駆けてくる。
下級生かと思ったか?……残念。同じクラスの鳥居彼方君だ。
「れたすくーん!石政先生が呼んでるよー」
……ブレスを受け取ろうとするその表情、そのポーズのまま……れたすは固まった。
「……行ってらっしゃい、先生が待ってるわよ……」
りえの言葉を背に、れたすは職員室へと歩き出した。
想定通り、本日のっていうかここ最近のドジっぷりについて先生からこってり絞られたれたす。
「うぅー……」
とぼとぼと職員室から出てきましたよ……。そんなれたすにりえは言う。
「もお。これに懲りたらきちんと生きることね……」
「そうしたいです……。で、それはいいけど。僕がいない間に見つけられた?」
りえは首を横に振った。
「そっか。じゃあ、改めて……」
気を取り直して、ブレスを受け取ろうとする。ところが。
「掃除時間5分前です。掃除の場所に向かい、準備をしましょう……」
美化委員会からの放送が入った。唖然とするれたすに太郎は言う。
「残念だったな、れたす」
「う、うわあああああああああああああああああん!!!」
あんまりな出来事に泣きだすれたす。
こうしてまた、石政先生に怒られる羽目になるのであった。
この小学校の掃除の担当場所は1週間交代制。
今週、れたす達のグループは教室前の廊下を担当することになっている。
(無論、れたすは初日である月曜日に場所を間違えた)
掃除にとりかかる前、太郎がおもむろに右腕にブレスを付けた。
(ちなみに3人は左腕に各々のブレスを付けている)
「……?太郎君、何してるの?」
「掃除の間に反応があるか調べようと思ってるんだが、
掃除しながらやるのは流石の俺でも不可能だろう。だから……」
「はぁ……」
れたす、納得。
「でも、この班の中にいるとは限らないと思うけど」
「りえちゃん、りえちゃん……悔しいけど、そこは太郎君を信じよう。
いや、本当に悔しいけど……」
『悔しいけど』の部分がリアルに切実な、れたすであった。
まあ、ひとまず。現時点は太郎に任せることにして掃除に集中することに。
掃除場所が廊下に変わっても、れたすは相変わらずだった。
具体的なドジは……第1話で教室掃除でかましたのとほぼ同じなので割愛させてもらう。
そんなれたすにやはり呆れ果てながら、りえは言う。
「これじゃまた、お説教させられるわよ……」
「うぐぅ……」
れたすはパーペキに落ち込んだ。
それはさておき、太郎はといえば……。
「見つからんな。紺野の言うことは正しかったのか?」
考え込んでいる間に、掃除時間終了を告げる放送が校内に響いた。
太郎はブレスを右腕から外し、ポッケにしまう。
「……これは見つからなかった、ってことでいいの?」
りえの問いに頷く、太郎。
「矢張り、この班の中にはいないようだ……続きは5時間目の後の休み時間ってところだな」
「そうね。……っていうか、なるべく早く見つけたいわね。仲間」
「まったくだ」
この時、れたすは思っていた。
(……なんか僕、わきに追いやられている気がする)
5時間目は社会。
『日本について改めて知ろう』という感じの内容。
とりあえずもう怒られたくないため、何とか授業についていこうとするれたす。
板書事項をノートにとり、同時に先生の話を聞く。
それだけでも幾分かましになれた気がした、10歳の午後。
まあ。そういうわけで。なんとかつつがなくれたすは5時間目の授業を終えた。
そんな5時間目の後の休み時間。
「……本当に、誰がだれだかだわ……」
今度はりえに任せ、教室内を偵察したのだが……結果はご覧の有様だ。
「……はァ、一体どこにいるっていうのかしらっていうか、何度この言葉を吐いたかわかんないし」
「……本当、何回言ったやら」
ため息な、りえ。同様に、太郎も。
「お困り事ですか?」
横に立つ、影。……クラスメイトの照屋きらりちゃんだ。
黒髪ロングでとても美しいおぜうさん。れたすは思わず顔が赤くなった。
「あ、えとえとえとえと……実はう」
「わー!!」
慌てて、れたすの口をふさぐりえ。
「て、照屋さん!大丈夫!!私達でなんとかするんで、ええ!」
「まあ。でもどうしてもクリアできない状況になりましたらお力になりますわ……」
そうしてきらりは去っていった。口ふさがれから解放され、れたすはりえに抗議した。
「なにするのさあ!」
「ヒーローの仲間探しっていってもそう簡単に信用してもらえないでしょ!
まあ、とにかく。放課後、改めてやってみようと思うわ……」
「前半何いってるかわかんなかったけど……そうしようか」
と、いうわけで。本日最後となる、6時間目の授業が始まって終わった。
ちなみに科目は引き続き、社会である。
……何も1ページまるまる授業の描写を書くことに飽きたわけじゃないので、その点はご容赦いただきたい。
まあ、でも。授業の光景→休み時間の光景→授業……の繰り返しだといい加減ぐだぐだになるのは間違いないだろう……。
作者にとって一番の脅威はネタ切れ及びだらだら文なのだから。
とりあえず、この時間も何とかれたすは乗り切ったとだけいっておこう。
「きりーつ、れーい」
「「「さようならー」」」
はい、帰りの会も無事終わりました。
「よし、やるか……」
「そうね……」
「うん……」
ブレスを手に立ち上がる、太郎。それに続く、れたすとりえ。
「何を?」
音もたてず、いきなり誰かが沸いて出た。
「「「なああああああああっ!?!」」」
当然のように、ビックリしてコケる3人。
「……3人ともなんなの、人をおばけみたいな風に見て……」
「ってなんだ。勝山さんか」
安心したように、れたす。勝山さん……こと勝山かごめは言う。
「それで、結局薬局何をしようと」
「ななな、なんでもない!なぁ、れたす!紺野!」
「「うんうんうん!」」
それにしてもこの3人、必死である。
「じゃ、勝山さんまた明日!」
慌てて教室の外に出る3人。
まあ、そういうことだ。本日は見つからずじまいってこと。
「はぁ……本当に長い1日だったわ」
学校の玄関。りえはため息をついた。
「しかし、その『長い1日』が明日もあるとなるとな。
よし。明日、らってから追加で2個ブレスを貸してもらおう。
……1人ずつ交代で行くよりは効果が増すだろう」
太郎の提案に、れたすは心が躍った。
「じゃあ、何!?僕も混ぜてもらえるってこと??」
「うんにゃ、違う」
「へ?」
呆然とするれたすに、太郎は言った。
「俺が2個担当、紺野が1個担当……ちゅーこっちゃ」
あんまりすぎる展開にれたすは盛大にずっこけた。
刹那。突如、正門前から聞こえるラウドボイス、
「はーい!よい子の皆さーん!!」
「あの声は!」
すばやく立ち上がり、れたすは言う。
「……高級伯爵ね」
りえの言葉に太郎も頷いた。
「ひとまず、変身して向こうに向かうぞ」
すばやく木の陰に移動し、3人一斉にブレスを2度叩く。
宙に放たれる3本のうまい棒。やさいサラダ味、コーンポタージュ味、めんたい味。
「「「チェインジ☆うまいパワーボンバー!!!」」」
それをキャッチし、天に掲げる。発光、そしてパッケージを開け、食す。
一瞬で3人の小学生はヒーローへと変身した。
「サラダでヘルシー勇気りんりん!うまいファイター、やさいサラダ!」
「コンポタでほっこりまろやか気分!うまいファイター、コーンポタージュ!」
「めんたいでピリッと決めるぜっ、I’mNo.1!うまいファイター、めんたい!」
いつものように口上を終えると、正門近くへと走り出した。
「と、いうわけで!本日こそ開店記念といたしまし……って。出たな。お邪魔虫!」
「お邪魔虫じゃない!正義の味方よ!」
びしっと高級伯爵に指を指す、コック姿の少女。
「「「うまいファイターズ、参上!!」」」
ヒーローの登場に一斉にどよめく、正門前。
「ほうほう。しかし、あれだな。今回の話、私の出番がないまま終わるのかとひやひやしたぞ」
「そんなことより!なんで2話連続で同じ場所にお店を建てようとすんのよ!」
メタネタの掛け合いな、高級伯爵にコンポタ。
「それは……」
間。
「なんとなくだ!!」
盛大にずっこける、ファイター達。こんな展開あってもいいのか。
「あってもいいだろう、ギャグ小説なのだから」
さいですか。
「ええい!とにかく!!今日という今日は!ぎゃふんと言わせてやるかんな!!!いけ、戦闘員!!!」
一斉に襲いかかる、戦闘員。
うまいファイター達はお互いに頷くと……一斉にかけ出した。
「めんたい旋風脚!」
技名を叫びつつ派手にアクションをかますめんたい。
「あんた達、『イー』以外の言葉、言えないの!?」
襲い来る戦闘員に連続パンチで応酬する、コンポタ。
「……え、えと。えーい!!!」
怖がりつつもパンチやキックを繰り出すやさいサラダ。
ある程度倒した頃、高級伯爵が動いた。
「さーて、お次の相手はこいつだー!」
バラが投げつけられる。刺さった先は……卒業制作のトーテムポール。
「シャギャアアアアアアアアアアアア!!」
トーテムポールの化け物、爆誕である。
「ぶえええええええええええ!また変なのが出たああああああああ!
ちょっと、高級伯爵さん!こんな化け物いきなり出すなんてずるいよお!」
れたすの泣きながらの抗議に高級伯爵は
「巨大怪物が出るのはヒーローもののお約束だろう。それもわからんのか」
「わかるけど!こわいもん!!!」
やさいサラダ君、涙目である。
「もう、やさいサラダは……ひとまずこいつを倒すしかないでしょ」
コンポタは呆れ果てていた。
「う、そりゃそうだけど……」
「じゃあ、さっさと行くわよ!」
と、いうわけで。うまいファイター×3VSトーテムポールの化け物。レディ、ファイッ!
「え、えーい!」
やさいサラダ。力半分で跳躍し、パンチ!
「お前さん、なんか変な顔だよな!」
めんたい。得意の挑発で相手を錯乱!
……って。もとは卒業制作なんだから失礼なこと言わない!
「この隙に!レードルクラッシュ!!」
そして隙を見せたところでコンポタお得意の技がっ!!
「ぐええええええ……」
なかなかのダメージである。
でも、なんとか持ち直し……
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
奴さんはグラウンドの真ん中でドスンドスンとストンプを。
「あうっ!ふにゃあああああああああ、いたいよおおおおおおおおおおおお!」
これにより、やさいサラダが顔面から転び……大泣きした。
「コッラー!やさいサラダ、泣いている場合じゃないでしょ!」
「だってぇ……」
「ハッー!ハッー!ハッー!ざまぁないな!さあ、トーテムポール!
うまいファイターズをぺしゃんこのぺしゃにしてやれ!!」
高級伯爵の指示で、トーテムポールの化け物の足が次第に3人の頭上に迫り、哀れ3話目にしてぺしゃんこのぺしゃに……
「「はっ!」」
ならなかった。そう、めんたいとコンポタが足の裏を抑えつけたのだ。
「ふぇぇぇ、死ぬかと思ったぁ……」
べそをかく、やさいサラダ。
「言ってる場合じゃないでしょ!やさいサラダも一緒に抑えつけて!2人だけじゃ限界があるし!」
そんなわけで。やさいサラダも加わり、3人で仲良く足の裏を抑えつけだ。
そして、最後の仕上げに……
「「「せーの!!!」」」
……地面に倒した。
「さて、最後の仕上げに!」
地面をけり、宙に舞うめんたい。
「いきますか!」
同様にコンポタ。
「あ、あう……」
そして、後に続くやさいサラダ。
こうして空中でうまいこと静止し(やさいサラダは……気合いで)、一斉に急降下。
「トリプルキックじゃァァァァァァァ!!!!」
めんたいの計画だと、3人の蹴りがうまいことこの化け物に当たる……はずだった。
しかし、やさいサラダは目方を誤ったのかそのまま化け物を行き過ぎ……地面に穴をあける形で激突した。
まあ、一応ダブルキックという形にはなり、今日もうまいファイター側の勝利となった。
「お、おぼえてろー!!!」
高級伯爵は今日も今日とて捨て台詞と共に去っていく。
そして、今回もやさいサラダはあまりいいところがなく終わった。
「ふぅ……今回は3人でもなんとかなったけど、次は分かんないわね」
「違うだろ、紺野」
変身を解き、伸びをするりえに太郎が言う。
「……俺とお前の2人だけ、な」
ぶすぶすっ。太郎の言葉が深く胸に突き刺さる、れたす。
「でもまあ、次は分からないというのは正しいな。明日も仲間探し気合い入れていくぞ」
「そうね……」
やや傾いた太陽を前に決意を新たにする、子供達。
「あのォ。決意を新たにしたところに水を差すようで悪いんだけど……」
そこに後ろから、らっての声。りえは問う。
「え、なんなのよ」
「実は、先程の戦闘の間に……一気に見つけちゃったんだ、仲間」
こう言った、らっての近くには前話と今話に意味ありげに名前付きで登場したれたす達のクラスメイトが……ブレスをつけて立っていた。
まあ、そんなわけで。決意を新たにしたところであっさりと急展開を迎え、盛大にずっこけたれたす達なのでした……。
と、ほぼ忘れられているようだが。太郎は現在らってから1個うまいブレスを預かっている。
果たして、その残り1個のブレスのマスターとなるのは。
その結果は忘れたころに!
つづぐ?
必要なのか、知らん解説の件
※1今回のサブタイ:スマイルプリキュア第7話『どこなの?わたし達のひみつ基地!?』
※2ご飯と牛乳の相性:……なんでご飯の日も牛乳が出てきたんだろう
※3作者にとっての一番の脅威:今回はショートカットで乗り切ったのだが次回はそうはいかないだろう
※4出たな。お邪魔虫!:テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」で悪事を邪魔されたばいきんまんがよく言うセリフ
※5ぺしゃんこのぺしゃ:児童書『小さなおばけシリーズ』から「カレーライスはこわいぞ」に出てくるワード。
お化けなのに怖さを感じさせないアッチは激辛カレーを食べることで怖い顔になろうとする。
そうして、怖いお化けになった際にやりたいことを空想した際にそれが出てきた。