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第0話平凡な日常が終わる日……の前の夜の巻

それはある晴れた夜のこと。日本のどこかにある街、陀賀市だがし

なんてことはない、新学期前日の夜……のはずだった。

星空キラめく夜空に流星が降ってきたのである。それも、7つ。

そんな、ななつの願い星を目視した子供達はそんな星達に願いをかけていた。

そのうちの幾人かの子供達は気付かない。

この流れ星が運命を大きく変えやがることを。


住宅街。普通の2階建て住宅の一室。その窓辺で必死に祈る男の子が1人。

「ドジが治りますように、ドジが治りますように、ドジが治るま……あ」

見事に噛んだようだ。残念ながら、願いはかないそうにない。

「もおー。何やってんのさ!」

妹さんと思われる女の子が横に現れる。

「お星様に願っても、ドジは治んないと思うなー」

「うえーん、ひどいいいいいいいい!」

泣きだした、男の子であった。


それはさておき、そのお隣。前述の男の子と同じくらいの女の子が同様に窓辺にいた。

「お父さんとお母さんが仲直りしますように、お父さんとお母さんが仲直りしますように

……長いわね……なんで3回言わなきゃなのかしら」

この女の子は家庭に何かしらの問題を抱えているようだ。

そのことについては追々話す機会があるだろう。


さて、続いてはまた違うエリアにある住宅街。

自室にあるベランダに立つのは……男の子だ。

流れ星をじっと見据え、願いをかけた。

「もっとカッコよく、もっとカッコよく、もっとカッコよく……」

なんというナルシスト。少し頭冷やしなさい。

とにもかくにも、願いをいいきれたこの男の子。

少しの間をおいた後、バンザーイをした。

「バンザーイ、言い切れたぞー!!!ヒャッホウ!!!!」

と、そこに2つの影が。

「近所迷惑でしょ!」

「いい加減になさい!!」

「ひいいいいいいいい!ごめんなさあああああああああああああああい?!?」

彼のお御堂様、及びお姉様と思われる存在に雷を落とされたナルシスボーイであった。 

場所は変わって、また違うお家。窓を開けて空を見ているのは……女の子。

シニヨンがかわいらしい、そんな感じの子。

「新しいキックボードがほしい、新しいキックボードがほしい、新しい……あわわわ」

残念ながら、いいきれなかったようだ。


続いては、大きなお屋敷。庭園あり、大理石の柱あり、それからプールもあり

……と、お金持ちのステレオタイプといってもいいそんな邸宅。

自室の大きな窓に立つのは……ふわふわとしたワンピースを纏ったこれまたいかにもなお嬢様。

黒いロングヘアーがとても美しい。

「てりやきバーガーをくださいな、てりやきバーガーをくださいな、てりやきバーガーをくださいな……」

無事に言いきれたお嬢様。と、横にいたメイドさんがお嬢様に話しかける。

「お嬢様、何もそんな願わなくてもシェフがお作りしますよ……」

……シェフ。すごすぎる、この娘のお家であった。


次に出てくるのは庭に立つ男の子。なんだか貧弱そうだ。

「体力がつきますように、体力がつきますように、体力がつきま……あへ」

言いきる前にヘタレてしまった、少年。

しかし、この体力のなさは異常である。


続いては、兄弟姉妹が仲良く窓辺で顔を並べている光景。

幼稚園くらいの子供から、高校生くらいの子供もいる。

「家族がこれからも仲良くできますように、家族がこれからも仲良くできますように……」

きょうだい達が、声をそろえる。

ああ、家族の絆は素晴らしい……。


ところ変わって商店街。一部の『夜のお店』を除き、ほとんどの店舗がシャッターを下ろし明日に備えている。

その中の一軒、魚屋の2階の窓。

三つ編みお下げがかわいらしい女の子が窓の外に映る、幻想的な光景を見ながら祈りをささげていた。

「珍しいお魚と出会えますように、珍しいお魚と出会えますように……」

なんとも魚屋の娘らしい願い事だ。

そんな彼女の足元には魚の図鑑が。

いずれ、出会うだろう珍しい魚に思いをめぐらせ、微笑む女の子だった。

 商店街や住宅街から少し外れた場所にある、一軒の店舗兼住宅。とんかつ屋のようだ。

その3階の一室。物理の本やら何やらが散らかるそんな空間に怪しくメガネを光らせる女の子がひとり。

「……宇宙飛行士、宇宙飛行士、宇宙飛行士……確実に3回言いきるには

単語オンリーにすると、おっけー……」

口調もどこかミステリアスだ。

エニウェイ、宇宙から降り注ぐ星達はこの娘の願いをかなえてくれるのだろうか。


 さてさて。今度は高層マンション。……あ、6階のある部屋のベランダに男の子の姿が。

「納豆たくさん、納豆たくさん、納豆たくさん!!!!」

……なかなか変わった願いだ。最も納豆を大量購入すればそれで済む問題なのだが。

「あ……『サムライになりたい』でもよかったかなー。ああでも、もう流れ星消えてる。」

とほほのほ。これぞ、『あとの後悔先に立たず』だ。


 さてさて、そんな流星群は全部全てなぜか駄菓子屋の裏庭へと一点集中的に落っこちていった。

そして、ドンガラガッシャーンと音を立て、全部地面に到着したわけで。


ドンガラガッシャーン。


 「ななななな、なんだ!?」

子供達と同様、窓辺で流れ星を見ていた青年が先の大音響におったまげ、庭に下りてくる。

……結果的に、さらにおったまげることになるわけだが。

どういうことかというと、庭にカプセル状のなんともありきたりな1人乗りポッドが合計7基、落ちていたから。

目を白黒させる青年のことなどつゆ知らず、同時に開かれる、ポッド。

そこから出てきたのは……まっ白な髭、ぐるぐるメガネに一本毛なおじいちゃん。

そして、それぞれ違う感じの服を纏った女の子達。年齢も何気にバラバラなようだ。

まだまだポカン状態を続ける、青年におじいちゃんが歩み寄り、言った。

「ね、チミの家に基地作っちゃってもいい?」

青年はコケた。挨拶もなく、ましてやご近所に迷惑をかけたにも関わらず謝罪もない。

どういうモラルしてるんだ、と思う青年。

「あ、おっけーだって^^」

おじいちゃんの言動に、立ち上がろうとしていた青年はまたコケる羽目に。

話聞けよ……と青年はさらにぼやいた。

とりあえず、ポッドは回収された。

それと入れ替わる形で、何やらおかしな機械がセッティングされる。

SFチックというか、マンガ的というか、なんというか。

そんな感じの経常の機械が何の断りもなしに庭にでんと置かれた。

そんな光景をただ、見守るだけな青年だった。

「それじゃ、基地建設いっきまーす☆」

アイドル風のフリフリドレスを纏う女の子が機械についたスイッチを押す。

いやいやいやいやいや、ちょっと待って!うちの庭狭いから!!!

などと、突っ込む間もなく……ボタンがポチッと押された。


ポチッ


軽い揺れ。それも数秒で終わる。

庭は……何の変化もない。肝心の基地はどこに行ったんだろう。

そんな疑問を青年が抱いていると……。


「最後はゲートだね。ほりゃ!」


カウガール風ファッションの女の子が身の丈以上ある所謂『どこでもドア』風の何かを置いた。

カウガールちゃんの言う、『ゲート』という奴だろうか。

「おじいちゃん、終わったよ!」

「おお、ご苦労さん。さて、今日は夜も遅いしこの家の人達への挨拶は明日にしよう。

チミ達も明日から学校だろう?明日に備えて、ゆっくり休みなさい」

「「「「「「はーい」」」」」」

そうして、『どこでもドア』をくぐるおじいちゃんと女の子達。

……できれば、ご挨拶は今日お願いします。と、青年は思ったとか思わなかったとか。


とりあえず、世にもおかしな物語の序章はここまで。

お話はこの翌日に動き出すことになるのであった。

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