学校に参上!
「待て、シャムナ!!!」
いち早く追いついた探偵が叫ぶ。
くるくるっ、と長い手足をしなやかに動かし、2つに結び分けたロングヘアを振り乱し宙返りをして着地する、闇夜の怪盗。
「ふふ、こんなところで待てと言われて待つ怪盗がいるはずがないと思うんだけどにゃ?」
月明かりで照らされた鮮やかなピンクの猫目がこちらを向く。
手元では盗まれた宝石のネックレスがともに輝いている。
「おや、そろそろお時間なのにゃ、探偵くん」
そう言うとバサァッ、と何処からかマントを出した。
「神出鬼没、闇夜の大怪盗シャムナ二世!!これにてさらばなのにゃ!!!」
こう告げて、マントを翻して消えた怪盗。
探偵は今宵もまた、がくっ、と肩を落とすことになったのだった。
「はー…」
窓際の自席に座り、ため息をつく地味男子。この男子の名は木乃本蓮。高校2年、長い前髪を下ろしていたりしていて地味キャラ。しかし裏の顔は、シャムナを追い続ける探偵。毎回、手の内を読み取られたように逃げられてしまうのだが。
今日は、転校生が来るということになっている。転校生は女子だということで、クラスは転校生話で持ちきりである。
「ねぇ、可愛い子くるかな?」
「んー…くることを願おうw」
…女子は転校生がどんな姿なのかを気にしているらしい。一方男子はというと・・・?
「デブだったらどうする?w」
「それだけは避けたい!w」
・・・こちらも容姿を気にかけているようだ。
俺的にはどうでもいいんだが。
全く、とため息をつくと担任が入ってきた。
―転校生を連れて。
その転校生を見た瞬間、生徒からは黄色い悲鳴、歓声が上がった。
俺はそこまで騒がなかったものの、なんだか見たことがあるような気がした。
彼女は、クリーム色のロングへアに、ピンク色の丸っこい目。身長は167cmほどと窺えた。
一部を除くと、まるで…シャムナのようだった。
でも、目の形だって違うし。
目の形はさすがにかえられない。
「静かにしろ。今日からこのクラスに編入することになった子だ」
じゃあ自己紹介よろしく、と担任が転校生に告げた。
すると、はい、と返事をして黒板に名前を書き始めた。
如月 華夢南
「如月華夢南です。よろしく」
か、むな…?!!
「かむなちゃんだって、可愛い!!」
「超タイプ・・・」
「なんだって?!抜け駆けは許さんぞ!」
「はいはい、静かにしろ!!席は窓際の一番後ろの男子の隣に空席があるだろ?あそこだ」
「ありがとうございます」
俺の、隣…か。
まぁ、シャムナなんてありえないよな。
「よろしくね」
そう挨拶してきた。
「あ、ああ…よろしく、如月。木乃本蓮だ」
「お世話になります、蓮くん」
ニコ、と笑った。
ま、可愛いっちゃ可愛いが。
なんか、引っかかるような気がするな…