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東方~青狼伝~  作者: 白夜
花映塚編
89/112

Epilogue


 今回はいつもよりもシリアスなEpilogueです。



 


 満開の桜が舞い散る中、博麗神社の境内を霊夢は箒を握りしめたまま憂鬱そうに眺めていた。

 掃いても掃いても舞い散る桜は尽きる事がない。

 満開の桜は彼女が掃いた場所をすぐに桜色に染めていく。



「……はぁ」



 盛大に溜め息をついた霊夢は鳥居にもたれ掛かる。

 日常的に掃除をしている彼女もこの花びらの数には辟易していた。

 箒を立てかけ、そのまま空を見上げる。



「おや、サボっているのですか?」


「あんたは……」



 階段を昇ってくる人影を見つけ、霊夢は目を見開く。


 きっちり着込まれた服に、紅白のリボンの付いた帽子。

 そして、肩までで切り揃えられた緑の髪。


 四季映姫・ヤマザナドゥ。


 霊夢を見据えながら、彼女はやれやれと首を振った。

 そんな彼女の後ろには欠伸をしながらついて来る小野塚小町の姿もある。



「あんた達……何しに来たの?」


「いえ……少し話をしようかと……」


「……私に何か用?」


「いえ……貴女ではありません」



 首を傾げる霊夢に、映姫は悔悟の棒を握り直して視線を向ける。



「彼女は……桜花さんはどこですか?」


「桜花なら出かけてるけど……」


「そう……ですか。ならば日を改めましょう。私も忙しいですから。……ちなみに、彼女は何処へ?」


「──紅魔館よ」








◇◇◇◇◇◇



 ティーカップに注がれた紅茶を飲みつつ、彼女はゆっくりと部屋を見渡す。

 壁も、天井も、床も、全てが彼女とは反対に真っ赤であった。


 ここは紅魔館。悪魔の住む館。


 その館の一室にて、桜花は紅茶を飲んでいた。



「突然悪いわね。連絡も無しにおしかけて……」


「いえ……貴女には恩もありますから、お嬢様も何も言わないでしょう」


「そう……ありがとう」



 テーブルを挟んだ反対側に座るのは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜である。



「お嬢様ももうすぐここに来るでしょうから、私は仕事に戻るけれど……」


「えぇ、わかったわ。ありがとう」



 桜花のお礼に微笑みを返すと、咲夜は一瞬で姿を消した。

 世界がぶれる感覚がしたので時間を止めたのだろう、と判断した桜花は再び紅茶に口をつけた。


 同時に、がちゃりと扉が開き、レミリア・スカーレットが少し眠そうな目をしながら入ってきた。



「久しぶりね、レミリア」


「えぇ、久しぶりね桜花」



 先程まで咲夜が座っていた椅子に座ると、頬杖をつきながら桜花に視線を向ける。

 桜花の蒼い瞳と、レミリアの紅い瞳が交際する。



「ごめんなさいね。本来は貴女にとって、まだ寝ている時間でしょうに……」


「あら、そんなに気にしなくてもいいのよ? 貴女の頼みならば私は喜んで手をかすつもりだからね」



 レミリアはクスクスと笑いながら、指を踊らせる様にして腕を組む。



「それで、私に何の用だい?」


「えぇ……実は貴女に確認したい事があってね……」



 桜花の顔が何時になく真剣だったので、レミリアも目を細める。

 吸血鬼特有の鋭い眼光で桜花を見返しつつ、レミリアは翼を広げる。



「頼みたい事……?」


「そう。レミリア、貴女に聞きたい。貴女には────」










「私の運命が見える?」



「────」



 レミリア眉がピクリ、と動いた。

 そして、桜花を見るレミリアの瞳が怪しく輝く。


 数分……いや、数十秒の後、レミリアは困惑した様に顔をしかめた。



「運命が……見えない?」



 困惑するレミリアを見つめながら、桜花はやはり、と小さく呟いた。



「桜花……貴女は───」


「待って、レミリア。……今は何も聞かないで」


「──そう……わかった。なら、私は何も聞かないよ」


「ありがとう」



 静かに頭を下げる桜花に、レミリアは静かに首を振る。



「気にすることはないよ。気にはなるけど、友人の秘密にずかずかと踏み入るつもりはないさ」


「レミリア……。うん、本当にありが───」


「ああーーー!!桜花だぁ!!」


「──うわっ、フラン!?」



 レミリアへの感謝の言葉は部屋に飛び込んできたフランによって遮られた。


 フランは桜花を見つけると、瞳を輝かせながら飛びついた。



「フ、フラン……ちょっと今は──」


「ねぇ桜花、遊ぼうよ!!」


「え、えぇっと……」



 先程までの雰囲気は何処へやら。

 フランの乱入により桜花は盛大に困った顔をしながらレミリアに助けを求める視線を送る。

 レミリアは苦笑すると、フランの頭を優しくぽんぽんと叩く。



「仕方ないわね。話も一段落していたし、桜花と遊んできなさい。……桜花もいいわね?」


「やったぁ!!」


「……えぇ、わかったわ」



 レミリアからの許可が下りたフランは桜花の腕を掴むと、そのまま部屋から出て行った。

 苦笑したまま連れていかれる桜花を眺めながら、レミリアは再び腕組みをして思考に耽る。



 レミリアが見た桜花の運命には何も描かれていなかった。


 真っさらな純白。何もない虚無。



「──桜花、貴女は………」




 “一体何者なの?”


 その言葉を飲み込んだレミリアは、桜花と同じく青い空を小さな窓から見上げていた。



◇◇◇◇◇◇



東方花映塚編


~End~




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