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東方~青狼伝~  作者: 白夜
萃夢想編
67/112

Epilogue


 ちょっと短いですが、Epilogueです。



 



 その夜、幻想郷の東の果てにある博麗神社では盛大な宴会が開かれていた。


 人間、妖怪、亡霊、吸血鬼……。


 幻想郷の中でも一際力の強い者達が集まり、酒を飲み、食事を楽しんでいた。



 そんな中、博麗神社の巫女──博麗霊夢は神社の縁側で、親友の白黒の魔法使いと共に座っていた。



「ほぉ~、私が気づかぬ間にそんな事があっていたとはなぁ」



 白黒の魔法使い──霧雨魔理沙はけらけらと笑いながら、手に持っている酒の入った猪口を傾ける。

 若干頬が赤くなっているので、既に軽く酔いが回っているのだろう。



「笑い事じゃないわよ。誰も気づかなかったら私の家の家計が危なかったんだから……」



 霊夢は溜め息をつきながら魔理沙と同じ様に、猪口を傾けて酒を飲む。

 こちらは魔理沙と違ってまだまだ余裕のある表情だった。



「しっかし、本当に気づかなかったぜ。まさか異変が起きていたなんてな。前回までの異変なら簡単に気づけたんだがなぁ……」



 魔理沙は宴会の中心で踊っている少女を見る。

 彼女よりも小さいその少女は子供の様に無邪気な笑顔を振り撒いている。

 しかし、その少女の頭には二本の角がしっかりと生えており、間違いなく人外の存在であると理解させられる。



「鬼、ねぇ……」



 目を細め、萃香を見る魔理沙を、霊夢は苦笑いしながら見つめていた。

 普通なら、誰があんな小さい少女がとんでもない力を秘めているなどと考えるだろうか。

 実際に戦った霊夢だからこそわかる。彼女は明らかに手加減してくれていた。

 もし本気の戦いなら、霊夢でも良くて相打ちに持って行けるかどうかといったところである。



「でも、本気のあれに勝っちゃったのよねぇ……。家の神様は……」


「はは、流石は守り神だな。で、その肝心の桜花はどうしたんだ?」



 霊夢は無言で背後の襖を指差す。その顔はどこか引き攣っており、魔理沙は首を傾げながらも襖を少しだけ開いた。


 中には布団が敷いてあり、上半身だけ起き上がった桜花が虚ろな目で虚空を見つめていた。

 その隣に、心配そうな顔をした彩花が座っていて、桜花の頭を撫でながら何か語りかけている。

 桜花は彩花の言葉に反応してはいるが、何故か「ぁっ…」「ぅ…?」といった反応しか示さない。


 魔理沙は襖を閉めると、霊夢へ向き直る。



「……何だ、ありゃ」


「紫によれば、チルノがね、最近桜花と会えなかった分の欲求を一気に解放したらしいのよ。……まぁ、その結果がアレってわけ。ちょっとやり過ぎたらしいわ」


「おいおい、あれじゃ幼児退行じゃないか。……一体何をしたんだ?」



 霊夢は「さぁね」と一言呟くと、立ち上がって宴会の中心に向かって歩き出す。


 やがて、宴会会場の中心で酒を飲んでいる萃香の隣へ並ぶと、その小さな鬼の頭に手を乗せる。

 そこで萃香はやっと霊夢に気がついたのか、「はぇ?」と間抜けな声で見上げてくる。



「暫く桜花が使い物にならないから、あんたに掃除を手伝ってもらうわ」


「えぇ~、何で私がそんな事しなくちゃならないんだい?」



 萃香は赤くなっている顔を嫌そうに歪めると、唇を尖らせてばたばたと両腕を振って抗議する。

 そんな萃香の額に霊夢は容赦無くデコピンをくらわせた。

 萃香が「あぅ……」とのけ反る様子を横目に見ながら、霊夢は宴会会場をぐるりと見渡す。



「一人でかたずけるには大変なのよ。幸い、あんたの能力なら簡単に終わるしね」


「はぁ、鬼使いが荒いねぇ……」



 でも、と萃香は酒の入った瓢箪を再び傾けながら思う。


 萃香にとって、人間と縁を切ってからこんなに楽しい気分になったのは久しぶりだった。

 一方的に畏れられた昔とは違い、目の前には自分をありのまま受け止めてくれる奴らが沢山いる。

 それが嬉しくて、彼女は微笑むのだった。




──あぁ、こんなのも悪くはないさ。







◇◇◇◇◇



東方萃夢想~Immaterial and Missing Power.~



  ~END~





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