Stage3
忙しくて更新が遅くなりました!!
しかも、今回は短めの内容です。
Stage3
『夜の始まり』
First Day~19:00~
‐博麗神社‐
◇◇◇◇◇
‐桜花Side‐
夕日が沈んでいくのを眺めながら、私は神社の屋根から星の瞬く夜空へ、ひらり、と身を踊らせた。
昼間に犯人が見つけられなかった霊夢は、明日に備えて札やお祓い棒の点検をしている。
見つからないのが余程悔しいのか、夕飯を僅か数秒で食べ終えると、部屋に篭って黙々と作業を続けている。
私は、そんな霊夢の雰囲気から逃げる様に、夜の散歩へと出発する。
夜は妖怪の時間──。
神社の上空を飛び回ると、霧の湖へと体を向ける。
最近、参道の整備に忙しくて中々暇が無かったので、久しぶりに笛を取り出して適当に記憶にある曲を吹きながら移動した。
湖に行くなら、まずはチルノの家へ寄るとしよう。最近あまり構ってやれていないから、拗ねているかもしれないし…。
チルノが機嫌を損ねたらとにかく大変なのだ。
この前は悪戯し過ぎてふて腐れたチルノに、どうすれば許してくれる?、と聞いたら──“三日間、あたいと○○○したらゆるしてあげる”と言われた事がある。
本当に三日間も相手をさせられたので、解放された時には正に色んな意味で満身創痍…。腰が抜けて立てなかった。
どれだけ体や精神を鍛えても、あの感覚だけはどうしても耐え切れない。──というか、二日目辺りから記憶が曖昧でよく思い出せない。
様々なプレイを試されたというのはぼんやりと覚えているけど……。
──閑話休題
自分の記憶に悶絶していたら、いつの間にか霧の湖へと到着していた。
しかし、目の前にある湖からは妖精の気配が全く感じられなかった。
かわりに感じるのは──とても大きく、もっと妖しい気配。
目の前の空間が裂ける。
裂けた空間から覗く目玉と人間の手のようなもの。
裂け目の両端には鮮やかな赤いリボン。
その隙間の中から、八雲 紫は優雅に地面へと降り立った。
「おはよう──そして、こんばんは、桜花」
紫は畳まれた傘を片手に持ち、白を基準にした生地と、紫色で複雑な曼陀羅の書かれた生地を使った──ドレスと陰陽師の着物が組合わさった様な服を着ていた。
長い金髪も纏められ、さっぱりとした印象を受ける。
ただ、いつもの倍、胡散臭い雰囲気を感じさせる格好だ。
アンバランスに思える不思議な服なのに、紫が着ると似合ってしまうのだから不思議だ。
「こんばんは、紫。貴女が此処に来るなんて珍しいわね。何かあったの?」
紫はスキマから取り出した扇で口元を隠すと、いつもの胡散臭い笑みを浮かべる。
「ふふふ…どうかしら。でも、貴女も気づいたから此処に来たのでしょう?」
紫はスキマに腰掛けて湖の方へ視線を向ける。
私もつられて見てみると、湖の中心辺りに明らかに自然に発生したものとは別の霧が発生していた。
その霧から感じるのは強い妖気。
力の象徴たる“鬼”の気配。
「彼女がたまたま、此処にいるのに気づいて様子を見に来たのだけれど……」
「紫の知り合いなのね? 私に鬼の知り合いはいないからね」
「まぁね、古い友人の一人よ」
妖気を纏った霧は相変わらず湖の上をふわふわと漂うだけで、まるで私達を見て、楽しんでいる様な印象を受けた。
「ねぇ、紫。彼女を私に紹介してはくれないの?」
「そうねぇ…。じゃあ、私と戦って勝ったら紹介してあげる。方法は……久しぶりに弾幕ごっこでもしましょうか。仕事の息抜きも兼ねて、ね?」
「いつも大半を藍に押し付けてるくせに…」
「あら、式神を上手く使えるのも実力の内よ?」
「…はぁ」
◇◇◇◇◇
BGM「夜が降りてくる~Evening Star~」
紫がスキマを広げると、中から無数のクナイ型の弾幕がこちらに向かってくる。
速度は遅いが範囲が広く、隙間も小さい。
仕方がないので、爪で切り裂いて消していく。しかし、数が多くて全てを捌けない。
私は、自分が通れるくらいの穴を空けるつもりで腕を振る。
私の爪に当たった弾幕達はあっさりと霧散していった。
しかし、そんな事を紫が黙って見ている筈がなく──紫が空間をなぞる様に腕を動かすと、私へと一直線にレーザーの様な弾幕が放たれる。
それを半身になりながら避けると、次は頭上に隙間が開き、中から墓石が降ってきた。……なんて、罰当たりな。
少々気が引けるが、墓石を蹴り飛ばして逆に紫へと飛ばしてやった。
まさか飛ばしてくるとは思わなかったのか、紫は一瞬、目を見開くとスキマを開く。スキマは墓石を飲み込むと、跡形もなく消えてしまった。
「脅かさないでほしいわ…」
「こっちこそ、急に墓石なんかが降ってきて驚いたわよ」
お互いに顔を見合わせて笑うと、同時に距離を詰める。
紫は手に持っている傘を広げると、それで体を隠す様にその場でくるりと回転する。
そして、傘が突然発光したかと思うと、四方向に光を放ちながらまるで回転鋸の様にこちらに向かってきた。
私は地面を殴ると、砕けて浮き上がった岩を紫に向かって蹴り飛ばした。
しかし、その岩は紫の傘にぶつかった瞬間に砕け散ってしまった。一体、あの傘はどれだけ固いのだろうか。おそらく、紫が境界を弄ったんだと思うけど…。
「──ふっ!!」
私は小さく後ろに跳びながら槍型の弾幕を四本投げつける。
すると、紫は傘を回すのを止めて普通に回避した。
「あら、何故その傘で弾こうとしないのかしら?」
「もぅ、あんなに妖力の篭った弾幕を弾こうとしたら、流石に私の傘ももたないわよ」
「ありゃ、ばれてたんだ」
流石は紫だ。私が弾幕にこっそり仕込んだ妖力に気付くなんて…。
昔からの知り合いなだけあって、私の癖や性格をよくわかっている。
「じゃあ、お返しね♪」
「…げっ!?」
紫の周りに無数の小さなスキマが開いたかと思うと、色々な物が飛び出してきた。
墓石、卒塔婆、道路標識……果てには自販機まで飛んできた。
というか、自販機や道路標識は最早見るまで形を忘れていた。久しぶりに見たな、この形…。
とにかく、ひたすら飛んでくる物を避け続ける。
半減しようとこちらが弾幕を撃っても紫がスキマで無効化してしまう。
むぅ…やはり紫の相手は大変だ。
「仕方ない、ちょっと荒々しいけど…」
ポケットの中から一枚のスペルカードを取り出す。
─神霊「夢想封印・爪」
両手に纏わせた夢想封印を、思いっきり振り抜くことで前方に飛ばす。
夢想封印は、スキマから飛び出してくる物を次々と両断しながら進んでいく。
「ふふ、無駄よ」
しかし、紫は余裕の顔で目の前に一際大きなスキマを開いた。
紫のことだ、スキマを使ってスペルを跳ね返そうと考えているんだろう。しかし──。
「残念、それじゃ無理だよ、紫」
私の夢想封印は紫のスキマを“切り裂いて”彼女に命中した。
「…がっ…なっ!?」
腹部に直撃したためか前屈みに地面に膝をついた紫に歩み寄って助け起こす。
ぶつかる寸前に威力を落としたから、強い衝撃はあれど彼女の体は切断されてはいない。
まぁ、やろうとも思わないけど。
「くっ…何故?」
紫は私を見上げながら尋ねる。
「いくら空間の境界であるスキマでも、紫が作り出している以上、私の夢想封印は効果を与える。
簡単に言えば、妖力で作られてるなら、強制的に封印できるわけ」
「そういうことか…。能力に頼りすぎた私の負けね…」
「そういう事。でも、紫も本気じゃなかったでしょ? スペルを一枚も使わないなんて…」
紫は苦笑いすると、しっかりと立ち上がった。
お腹を摩りながら傘を広げると、スキマに腰掛ける。
「実は、スペルカードを持ってきてないのよ」
「あら、どうかしたの?」
紫は扇で顔を隠しながら照れた様に笑った。
「えっと…寝ぼけて忘れてきたの…てへ♪」
「……え?」
「………」
「………」
二人とも無言でその場に固まった。
勿論、それからしばらくの間、何とも言えない空気が続いたのは言うまでもない。
◇◇◇◇◇
Stage Clear!!
少女祈祷中……
少々手違いで、パソコンの中にある私のイラストがいくつか消えてしまうというハプニングが…。
心が折れそうになりました(泣)