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東方~青狼伝~  作者: 白夜
妖々夢編
50/112

妖々夢Finalstage



 ほとけには 桜の花を たてまつれ


     我が後の世を 人とぶらはば





 


Finalstage


『彼の世に嬢の亡骸』


BGM「アルティメットトゥルース」





 妖夢の案内に着いていく形で桜花と霊夢、そして橙。


 彩花は既に役割を終えた、とばかりに桜花と一体化した。

 橙はその光景に驚いていたが、桜花と彩花は同一人物であるとわかるとすぐに懐いた。現在は桜花に肩車されてご満悦である。


 霊夢は彩花の存在を知っても「ふ~ん…」ですませてしまったし、半人半霊の妖夢は自分と似た様なものだと自己解釈し逆に仲良くなってしまっている。


 しかし、妖夢も幽々子の命令は忘れておらず、こうして桜花達を幽々子のもとに案内する事は結果的に残りの春度を集める事になる、と考えているのだ。……たぶん。


 そんな時、桜並木を進む四人の周りをひらひらと蝶が舞いはじめる。

 淡い紫や黄色、青や赤の蝶は桜花達の周りを少しの間だけ飛ぶと、奥へと向かって飛んでいく。


「…幽々子様が呼んでいます。どうぞ奥に…」


 そう言って妖夢は奥に進むように促す。どうやら彼女の案内はここまでらしい。


 妖夢にお礼をいって先に進む三人は、やがて巨大な桜の木の下にたどり着く。


「何よこの桜、枯れてるじゃない…」


 霊夢が西行妖を見ながら無表情に呟く。


「ただの枯木ならよかったのだけれどね…そうでしょう、幽々子?」


 桜花の声に答えるかの様に幽々子が姿を現す。

 その姿は最後に見た時と少しも変わっていなかった。桜花は久しぶりに会った友人に声をかけようとして…


「久しぶ…「にゃあ!?…くぎゅっ!?」


 突然現れた幽々子に驚いて、肩車の状態から落ちそうになった橙が思わず尻尾を桜花の首に巻き付けたために奇妙な声になってしまった。


「ふふふ…まったく、貴女も変わってないわね、桜花」


「ぐっ…げほっ…ひ、久しぶり…幽々子」


「はわわ…ごめんなさい!!」


 桜花は、涙目になっている橙を地面に降ろして頭を撫でてやると、再び幽々子に向き直る。


「さてさて…それじゃあ、どうしてこんな事をしているのか教えてくれないかしら、幽々子?」


 幽々子は手に持っている扇子で口元を隠すと小さく頷く。

 そのままゆっくりと振り返ると西行妖を見上げる。


 その隙に霊夢が桜花の隣にたって桜花に小声で質問をする。


「…ねぇ、あんた達知り合いなの?」


「ええ、私の友人の一人よ。──名前は西行寺 幽々子。この冥界を管理する亡霊のお嬢様よ」


「…ふ~ん」


 霊夢は聞きたい事を聞き終えたのか元の自然体の姿勢に戻った。





─桜花Side─


 霊夢へのちょっとした情報提供をした後、幽々子はぽつりぽつりと話し出した。


「少し前、この白玉楼の蔵から一冊の本を見つけたの。それによれば、この西行妖の下に何者かが封印されているらしいということが解ったわ。私はそれが何なのか知りたいの」


「封印してあるくらいなんだから、解かない方がいいんじゃないの?」


 霊夢がお祓い棒を軽く振りながら言う。


「そうね…でも、私は知りたいの。西行妖が一体何を封印しているのか…」


 幽々子の言葉にチクリと胸の奥が痛むのを感じた。


 西行妖が何者かを封印しているんじゃない。西行妖はその下で眠る者──幽々子の身体によって封印されているのだから。


 あの日の光景は今でも鮮明に思い出せる。


 朝日が昇ると同時に自らの胸に短刀を突き刺した幽々子の姿を…。


 今から死ぬとわかっていながら微笑んでいた幽々子を…。


 そして、死んだ幽々子を抱きしめて泣き叫ぶ紫の姿を…。



 ぎりっ、と歯を食いしばる音が聞こえそうなほど、今の私は険しい顔をしているに違いない。

 幸い霊夢や幽々子や橙にはばれていないのが助かった。

 この顔は誰にも見せたくないから…。


「さぁ、幻想郷の春を返してもらおうかしら?」


 私が黙っている間に話が進んだのか霊夢が幽々子にお祓い棒を突き付けていた。


「残念だけど、ここまできたら私にも意地があるのよ~。と、いうわけで……」



「桜の下に還るがいいわ、春の亡霊!」

「桜の下で眠るがいいわ、紅白の蝶!」



 そして、戦いは始まった。






BGM「幽雅に咲かせ、墨染の桜~Border ofLife~」







 幽々子から放たれる大小様々な弾幕を回避しつつ、こちらからも弾幕で反撃をする。


 幽々子の弾幕は規則的に並んでいる様でそうではない、という何とも避け辛いものが多い。と、言っても私は全然平気なのだが…。


 ちらりと横目で見れば、霊夢も特に問題なく避けているようなので大丈夫だろう。

 幽々子の弾幕はスピードが遅いものが多いので普通に回避できる。


 幽々子が扇子を広げると何処からともなく一枚のスペルカードが現れた。



──亡郷「亡我郷─自尽─」



 左右から挟む様に飛び交う幽霊が現れ、それを押さえ付ける様に右側からレーザーが撃ち出される。


 霊夢は札を投げつけて幽霊を弾き飛ばすと、左に大きく旋回してレーザーを回避する。

 私も霊夢の後をついて行きながら弾幕を放ち続ける。


 すると、幽々子は今度はくるりと回転させながら左側からレーザーを撃ち出してくる。


「…ちっ!」


 霊夢の腕を掴んで自分の後に投げ飛ばす様に移動させる。

 その後、体を捻って迫るレーザーを回避すると、お返しとばかりに同じ様なレーザーを撃つ。


 幽々子のスペルがブレイクすると、チャンスとばかりに霊夢が札を投げつける。


「これで成仏なさい!」


 しかし、霊夢の札は幽々子にたどり着く前に大量の桜の花びらによって掻き消される。


「…さぁ、集まりなさい」


 幽々子の周りに集まった花びらは、幽々子の背後へと移動し、徐々に融合して形を変えていく。


 そして…次の瞬間、幽々子が両手を大きく広げるのと同時に、彼女の背後に巨大で美しい扇が現れた。


 そして、幽々子だけではなく背後の扇からも弾幕が放たれ始める。


「…く、弾速は遅いけど数が多過ぎる!」


 霊夢があちこちを忙しそうに飛び回り弾幕を回避したりお祓い棒で打ち消していく。


 私は霊夢が弾幕を引き付けている間に隙を見て反撃をしていく。


「さあ、ひらひらと舞いなさい。──そして、美しく散りなさい」



──亡舞「生者必滅の理‐魔鏡‐」




 新たなスペルの発動と同時に紫と桜色の蝶が一斉に幽々子から飛び立つ。

 その蝶はまるで渦を描くかの様にこちらに押し寄せてくる。


「霊夢!」


「わかってる!」


 私が霊夢へと指示を出すと、霊夢は懐からスペルカードを取り出す。


「封魔陣!!」


 普通の札よりも一回り大きな札を目の前に突き出す様にして構える。


 すると、赤と青の二色の障壁が交際するかの様に重なり、幽々子の蝶を消し去っていく。


「桜花、今よ!」


「ふっ…!!」


 蝶が消えて視界が良くなった瞬間、私は槍形の弾幕を幽々子へと投げつける。


 弾幕は幽々子の扇に次々と穴を空けるが、スペルブレイクしただけですぐに穴は塞がってしまう。


「…ちっ、纏めて吹き飛ばさなきゃ駄目だ!」


 私の言葉に霊夢は顔を険しくすると、続いて飛んできたナイフ型の弾幕をお祓い棒で打ち落とす。


「桜花、あんたのスペルで何とかならない?」


「できない事はないけど、少し時間がかかるよ!?」


「構わないわ。私が時間を稼ぐから、纏めてぶっ飛ばしちゃいなさい!!」


「わかった!」


 私は一旦退がってスペル発動の為に力を込めはじめる。


「…やらせないわ!」



──華霊「バタフライディルージョン」



 白い七つの小さな光が一点に集まり、そこから爆発するかの様に蝶が飛び出してくる。


「やらせなさいよ!!」



──神霊「夢想封印」



 それに霊夢の夢想封印がぶつかり合い、虹色の光が辺りを一瞬眩しく照らしていく。


「桜花、まだ!?」


「もう少し!!」



 霊夢の夢想封印が徐々に押され始めてきた。



「あと少しっ!!」



 そして、ついに光が弾けて視界が元に戻り、幽々子と視線が交際する。


「できた!いくわよ!」



──神蒼「夢想封印・蒼」



 放たれた巨大な光弾が蝶弾幕を飲み込み、幽々子へと迫る。


「…っ!?」


 幽々子は扇を盾にする様に回転すると、自分の周りに桜色の障壁を作り出す。


 ドンッ、と二つの力がぶつかる様な音が響き、視界が一瞬真っ白になる。


 光が収まると、そこには無傷の幽々子がいた。ただ、扇はなくなっていたので反撃の力が弱まり、弾幕も薄くなっている。


 霊夢は今が攻め時とばかりに札を投げつけまくる。


「くっ…」


 守りが薄くなった幽々子は手に持つ扇子で正確に霊夢の札を叩き落としていく。



──幽曲「リポジトリ・オブ・ヒロカワ‐神霊‐」



 幽々子はこちらの動きを制限する為に物凄い数の蝶を作り出すと、一斉に放つ。

 ばらけて飛んでいく蝶と直接こちらを狙う蝶が交互に放たれ動きを制限してくる。


「…あっ!?」


 そんな時、霊夢が一匹の蝶に被弾した。


「霊夢!?」


「大丈夫、この程度じゃ…あ、あれ?」


 突然霊夢が慌て始めたので彼女の隣まで移動する。


「どうしたの、霊夢!?まさか、どこか怪我でもした!?」


 霊夢はふるふると首を振ると顔をしかめる。


「やられた…!さっき私にぶつかった蝶に今まで集めていた春度を取られたわ!!」


「なんですって!?」


 慌てて幽々子の方を向くと、彼女の手には桜色に輝く蝶が乗っていた。


「ご苦労様、これで西行妖も満開になるはずよ…」


「させるか!!」


 その前に阻止しようと霊夢が飛び出す。


「もう遅いわ!」



──桜符「完全なる墨染の桜‐開花‐」



「きゃあ!?」


 スペル発動の衝撃で吹き飛ばされた霊夢を後ろから受け止める。


「さぁ、その花を優雅に咲かせなさい、西行妖」


 幽々子の背に再び扇が開かれ、蝶と桜の花びらが弾幕となって襲ってくる。


「…くっ!」


 霊夢と私は大きく距離を離して弾幕の回避に専念する。


「桜花、どうするの!?あの桜、満開になっちゃうわよ!?」


 霊夢が新しい札を取り出しながらこちらに視線だけ向けてくる。


 しかし、私は知っている。彼女では……幽々子では西行妖を満開にできないということが。


「霊夢、無理に反撃しなくてもいい。一発だけに集中して幽々子に叩き込むのよ!」


「そんなこと言ってもあの弾幕じゃあ…」


 たしかに、あんな密度の濃い弾幕に突っ込むのは危険だけど、絶対に機会はある!


「絶対に隙ができるはずよ。それまで回避に専念して!」


「わかったわよ、やってやろうじゃない!!」


 二人で幽々子の周りを回りながら反撃のチャンスをうかがう。


「どうしたのかしら?早くしないと満開になってしまうわよ?」


 なかなか反撃してこない私達を見て、幽々子は扇子で口元を隠しながら微かに笑みを浮かべる。


 そして、西行妖が正に満開になろうとした瞬間……



──ピシッ




「……え?」


 幽々子の背後の扇から小さな音が響いた。


 幽々子の扇に小さな皹が入っていた。


「な、何で…っ!?」


 ピシッ、ピシッ、と皹は徐々に広がっていく。


 それを呆然と眺めている幽々子に、私達は狙いを定めていた。


「「夢想封印!!」」


「……ぁ」


 こちらに気づき、慌てて防ごうとした幽々子だったが、流石に二人分の夢想封印を咄嗟に張った結界では防げなかったらしく、背後の扇共々吹き飛ばされた。



「……終わったの?」


 霊夢が乱れた呼吸を整えながら私の隣に並ぶ。

 しかし、私はまだ集中を切らしてはいない。そう、これだけじゃ終わらなかったはずなのだ。


「…桜花?」


「…何してるの、霊夢。構えなさい……まだ終わってないわ」



 次の瞬間、一瞬、大気が揺れた。



 ズンッ、と空気が一気に重くなる。

 恐らくだが気温も二、三度は下がっただろう。




  身のうさを 思ひしらでや やみなまし

   そむくならひの なき世なりせば





 ゆっくりと、幽々子が起き上がる。


 その瞳には光が無く、正に死人の様で恐怖を覚える。


「あいつ、まだ動けるの!?」


 霊夢が驚愕しているが、そんな訳がない。

 二人分の夢想封印を、天敵である亡霊の幽々子がもろにくらったのだから、気絶くらいしている筈なのだ。



 すぅ、と幽々子の身体が半透明になり、色が抜けて灰色になる。


 そして、その口が微かに動く。





‐―‐「反魂蝶」─‐―







BGM「ボーダーオブライフ」



 再びズンッ、と空気が重くなり、同時に幽々子の背後にある西行妖が散り始める。





‐―‐一分咲―‐─






 ほんのり朱に染まった西行妖の花びらが次々と蝶へと姿を変え、無差別吹き荒れる。


「…なっ!?」


 霊夢は急いで懐から札を二枚取り出す。


「くっ…二重結界!!」


 私達の周りを紅い結界が二重に重なる。蝶は結界に当たる度に音をたてて消えていく。


「一体、何なのよこれは!?」


 霊夢は突然の事に混乱しながらも西行妖から目を離さない。


「彼女が……西行妖の開花を拒んだのよ」


「…彼女?」








―‐─‐三分咲‐――‐









「くっ…!」


 西行妖が散る度に蝶の数が増えていく。


 霊夢の結界もいつまで耐えられるかわからない。








―‐‐─五分咲‐─―‐









 ビシリ、と霊夢の結界に皹が入る。


「霊夢、もう少しよ、頑張って!!」


「くっ…ぅ…!」










―‐─‐八分咲─‐―‐








 バキバキ、と結界に本格的に大きな皹が入る。


「も、う…無理…っ!」


 ついに霊夢の結界が崩れ、目の前全てが蝶で埋まった正にその瞬間──





──パァン!!


 と、いう音と共に全ての蝶がただの桜の花びらへと変化し、私達の後方へと風に乗って飛んでいった。



「今度こそ……終わったわね」



 私は隣で肩で息をしている霊夢に手を貸して立たせる。


 また元の枯れ木の姿に戻った西行妖の根本で、駆け付けた妖夢がアワアワしながら気絶している幽々子の看病をしている。



 私も近くの桜の木に寄り掛かると、霊夢を座らせて大きく息を吐く。


「桜花さ~ん!!」


 自分を呼ぶ声に顔を上げれば、橙が心配そうな顔でこちらに駆け寄って来た。


「だ、大丈夫ですか!?」


「ええ、大丈夫よ。橙こそ、怪我はない?」


「あ、はい!!」


 元気良く返事をした橙の頭を撫でながら、西行妖へと視線を向ける。



 何故か、生前の幽々子が微笑んでいる様な気がした。








Stage All Clear!!



 少女祈祷中……





 お、終わった…やっと妖々夢が終わりました!!



 長かった…本当に長かったですよ…。




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