◆遭遇~宵闇の妖怪、ルーミア~
キャラクタープロフィール
鈴音桜花
性別・女
年齢・約千二百歳
身長・170cm
種族・狼の妖獣
能力『ありとあらゆるものを拒絶する程度の能力』
この小説の主人公。自らの能力で自分の世界を拒絶した少女。人間としての日常に退屈し、新しい日常を求めた結果、東方の世界に記憶の大半を持ちながら妖怪として誕生。新しい日常を歩みだした。青い髪と目、青い毛皮のロングコートを着ている。狼の姿の時は人間の成人男性を乗せれるくらいの大きさがある。現在の尻尾の数は三本。
以前は平凡な高校生で年齢は18歳。黒髪黒目だった。本名は不明。名前が思い出せなかったために現在の名前をチルノにつけてもらった。
私がこの世界で妖怪として暮らし始めて千二百年、人間がなかなかの速度で文明を築き始め、あるとき急発展して江戸時代並の町を築いて…それに驚きつつも人間に妖怪の力を見せ付けるだの言っている妖怪の山の連中を黙らせたり…
と、なかなかに忙しいようなのんびりしているような毎日を送っている私だが…現在は人間の町で人間になりすまして生活をしている。
理由は人間の発展具合をすぐ側で見られるから…である。
ここ数年間は特に変化もなくいたって平和であり妖怪の山の連中も少し落ち着いてきた。
あと、最近チルノに新しい友達ができた。少し大きめの羽にエメラルドグリーンの綺麗な髪をサイドポニーにした可愛らしい姿。言わずもがな大妖精、通称大ちゃんである。
あるときチルノが珍しく笑顔で私に「新しい友達ができた!」と言って大妖精を紹介された。その後、大妖精が恥ずかしさと緊張からか「だ、大妖精でしゅ…あぅ////」と噛み噛みで私に自己紹介してきた時は思わず抱きしめたくなった。
それからは大妖精…大ちゃんとチルノは毎日一緒に遊んでいる。私が人間の町に移動してからもよく遊びに来る。
ちなみに私は人間の町で「なんでも屋」をやっている。主に町の外へと出る人達の護衛の仕事が多い。他には火事で燃えた家の修理を手伝ったり、子供の遊び相手、寺子屋での臨時教師など…料金も安いため結構頻繁に依頼がくる。なかなか充実した日々だったのだが…
「妖怪退治…ですか?」
ある日のこと、とある男性が私に妖怪退治を依頼してきた。
「はい、あなたは妖怪を軽くあしらう程の実力者だと聞いています。どうか私の友人の仇をとってほしいんです!」
この男性、一昨日の夜に友人と町の外へと出ていたらしいのだが、そこで妖怪に襲われて友人が喰われてしまったらしい。夜に町を出たので自業自得なのはわかるがどうしても友人を喰った妖怪が許せないらしい。
私は悩んだ。たしかに私は「なんでも屋」であるからなんでもするが流石に同じ妖怪を退治するのは気が引ける。とにかく情報が欲しい私は彼からもっと詳しく話を聞いてみることにした。
「なるほど、わかりました。その妖怪の特徴を教えてください」
「はい…と、言いましても奴は暗闇に紛れて襲ってきまして…詳しい姿はわからないのですが人間の子供のような姿だったと思います」
「人間の子供の姿をした妖怪ですか?」
「はい、なんと言いますか…松明さえ役に立たなくなるほどの暗闇から両手を広げた少女らしき影を見ました。目が赤く光っていたので恐ろしくて…」
闇、少女、赤い目、両手を広げた姿…ああ、彼女で間違いなさそうだ。
「わかりました。その依頼お受けします」
「本当ですか!?ありがとうございます!!…あ、でも無理をしないでくださいね?」
私は笑顔で大丈夫です、と言うと夜を待ってから出発することにした。
数時間後、すっかり周りが暗くなった頃、私は町外れの森を歩いていた。ちなみに姿は人間のままである。
歩き回ること数分で彼女は現れた。周りが急に暗くなり視界いっぱいに闇が広がる。そして背後から近づく気配。
「あなたは…食べてもいい人類?」
私の予想はやはり正しかった。私はニヤリと笑うと振り返りながら彼女の闇を“拒絶”する。
「…え?」
闇が消え去り、彼女の驚く声が聞こえ、同時に姿も現れる。金髪に黒を基準にした服を着た赤い瞳の少女。
「はじめまして、宵闇の妖怪、ルーミア」
私の言葉にルーミアは驚いた表情になるがすぐに大きく飛びのいて距離を取った。
「あなた…何者?」
原作でいつも見ていた彼女とは違う雰囲気、口調、頭にリボンがないところから封印前のルーミアらしい。しかし、まだ私よりも力は弱い。
「まあまあ、私はあなたと戦いに来たわけじゃないよ。お話に来ただけ」
「それで?私になんの用かしら?」
私を睨んだままのルーミアに私はゆっくり近づく。
「あなたを退治しろって言う依頼がきてるの」
「ふ~ん、じゃああなたは私を殺しに来たの?」
彼女との距離は五メートルほど、ルーミアは私を睨んだまま少しずつ戦闘態勢に移行している。
「違うよ、ただ…一緒来てほしいの。安全な場所、教えてあげる」
私は笑顔でルーミアに手を伸ばす。ルーミアは不思議そうに私を見ている。
「あなた、変わってるわね。人間のくせに私を助けようとするなんて」
「私は人間じゃないよ。…ほら」
隠していた尻尾と耳を出して妖怪であることを教える。
「……三尾」
そう、最近になってまた尻尾が増えた。人助けばかりしているから信仰でもあつまっているのか、それとも単純に妖力が増えたからなのかはわからない。
「どうする?私はあなたを助けたいんだけど…」
「嫌よ。私は私の好きなようにする。誰の指図も受けない。邪魔するなら…殺すわ!」
そう言うとルーミアは私に向かって走り込む。五メートルの距離を一瞬で詰めると右手を前に突き出してくる。私はそれを左手で受け止めると右手でルーミアの首を掴み地面に叩きつけた。ドゴンッという鈍い音が響きルーミアが苦しそうに顔を歪める。
「がっ……はぁ…」
私は掴んでいる手を離すと立ち上がり彼女を見下ろした。
「ルーミア、あなたが嫌だと言うなら…私はあなたを殺さなきゃならなくなる。私はあなたを殺したくない」
私はもう一度手を差し出す。
「もう一度言うわ。ルーミア、安全な場所を教えてあげる。だから私と来て」
ルーミアはしばらく考えると諦めたのか私を見上げながら不満そうに頷くとぽつりと呟く、
「しばらく人間は食べれないわね」
ルーミアはため息をはいて私に案内を頼んできた。
「そうだ、名前を言ってなかったわね。私は鈴音桜花。これからよろしくね、ルーミア」
「…ふん」
私は霧の湖のチルノ達としばらく一緒にいるのがいいと考え、朝になってから彼女を連れて行くことにした。
朝になってから私はルーミアを霧の湖へと連れて行った。
「ここが霧の湖よ。しばらくここで生活してもらうけど…」
「ええ、不本意だけど仕方ないわ。私もまだ死にたくないし」
「ごめんなさいね。ここには知り合いの妖精がいるから、彼女達と仲良くしてあげてね?」
すると、ちょうどチルノと大ちゃんがやって来た。
「あれ、桜花じゃない」
「あ、おはようございます桜花さん」
「おはよう、二人とも」
私は二人に挨拶を済ませるとルーミアを紹介する。
「この子はルーミア、妖怪よ。色々あってね、しばらくここで一緒に生活してもらうけどいいかしら?」
「あたいは構わないよ。大ちゃんは?」
「…えっと、私も、大丈夫…です」
「うん、じゃあルーミア。時々私もここには来るからなるべく人間に見つからないようにね」
「はぁ…なんで私が隠れなきゃならないのよ?」
ルーミアが不満げに私を見てきたので私は苦笑いをする。
「今回は私が来たからいいけどそのうち他の力のある人間に退治されても知らないわよ?」
「私は人間なんかに負けないわよ」
「我慢して、今私の依頼主に見つかったら本気で退治しなきゃいけなくなるし…」
「じゃあ依頼破棄すればいいじゃないの…」
「私はきちんと仕事はこなすのが主義なの!」
「私が生きてるうちは依頼をこなしたことにならないわよ?」
「今回は特別よ。それとも…まさか殺されたいの?」
「冗談言わないで。そんなわけないじゃない!」
「それじゃあ、しばらく大人しくしててね」
「…わかったわよ」
その後、ルーミアは集まった妖精達に引っ張られて戸惑いながらも一緒に遊びはじめた。まぁ、満更でもなさそうだし、いいかな。
そんなルーミアを見ながら依頼主にどんな嘘を言おうか考えながら今日も一日は過ぎていくのだった。