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東方~青狼伝~  作者: 白夜
紅魔郷編
42/112

閑話・ちょっとした昔話


 是非とも吸血鬼異変の話が読みたいというリクエストがあったので書いてみましたが……。


 チルノ視点の短い話です。


 あんまり面白くないかもしれませんが…(汗)





 今から約十年前のこと…。


 博麗大結界の完成の後、妖怪達はむやみに人間を襲ってはならないという決まりができたために、段々と士気が下がり、不満の多い毎日を送っていた。


 そんな時、紅い館が霧の湖の近くに現れた。

 その館には吸血鬼が住んでおり、その強力な力とカリスマによって、多くの妖怪がその吸血鬼の下に集まった。


 吸血鬼は幻想郷を自分のものにしようと部下にした妖怪達を使い暴れ始めた。

 当然、幻想郷を護る者達はそれを黙って見てはいなかった。









~人間の里~


―チルノSide―


 異変が始まって真っ先に狙われたのは人間の里だった。 博麗大結界ができてから、人間は妖怪に襲われることが少なくなり、完全に安全とは言えなくともそれなりの生活を送れるようになっていた。

 それはつまり、人間が妖怪を畏れなくなるに等しい。妖怪にとって人間から畏れられなくなるということは死活問題だ。

 なぜなら妖怪は人間の恐怖や噂、強い願望等から生まれた存在。それらが無くなれば当然、消えてしまうのも目に見えている。

 だから妖怪達は人間に畏れを抱かせる為に里を襲ったのだ。


「よっと…」


 目の前に迫る妖怪を薙ぎ倒す。

 と、言っても殺してはいない。峯打ちである。


「これで50匹目だよ。…まったく、懲りない奴らだ」


 あたいは人間の里の入口で妖怪の侵入をくい止めている。

 これでも正義の味方のつもりだから、助けるのは当たり前なんだけど。

 もし、彼女(桜花)がいたら同じ事をしているだろう。


 桜花は今だ行方不明のままだ。

 あの戦いの後、桜花は行方不明となり、紫からもたいした情報はもらっていない。

 あたいは桜花がいない生活を千年以上も続けている。それは寂しく、辛い年月だった。

 そんなあたいを支えてくれたのが、あたいといつも一緒にいた大妖精…大ちゃんだった。


 大ちゃんは落ち込んだあたいを慰めてくれたり、一緒に遊んでくれたりした。

 おかげでこうして元気に過ごしていられるのだが…。


 最近、大ちゃんが色々とおかしい。


 今だって……、



「チルノちゃんに手を出すなんて…そう、死にたいのね貴方…ふふふ、安心しなさい…痛いのは一瞬だから。

 誰もチルノを傷つけることは許さない。チルノは私と桜花さんだけのものなんだから…フフフ、アハハハハ!!」



 ……と、光のない目と感情のない無表情で妖怪達を次々と倒している。

 まさにDIEちゃん…といったところかな。


「チルノちゃん、こっちのゴミの処理、終わったよ」


 こちらを振り返る大ちゃんは、血の付いたクナイを持ったままで、はっきり言うと怖い。

 しかし、正に「褒めて褒めて」と言いたげな顔をされると何も言えないので、仕方なく褒めた。


挿絵(By みてみん)







 その後、大ちゃんを人間の里に待機させて霧の湖へと向かう。

 そこは正に激戦区とも呼べる場所だった。

 無数の妖怪が倒れており、湖の上では今正に紫と吸血鬼の二人が戦っているところだった。

 あきらかに紫が優勢…それを見たあたいは剣を腰のホルダーに挿すと、木に寄り掛かる。


「やれやれ…何にしろ、これでやっとかたがつく…のかな?」


「いや、そうでもないんじゃない?」


 声のした方を向けばそこにいたのはリンだった。

 桜色の髪を揺らしながら、リンは近くの岩に腰掛ける。


「へぇ…まだ、この異変は終わらないっていうの?」


 リンはクスクス笑って、どこからか取り出した扇子で口元を隠す。


「違うよ。今回の異変はこれで終わりだと思う。…ただ、このままじゃまた新しい異変が起こるよ」


「妖怪達の気力が戻らないと意味がない…ってこと?」


「正解」


 ふむ、とあたいは腕を組んで考える。

 結局、今回の異変の原因は妖怪達の不満が爆発したようなものだ。たまたま吸血鬼という強い存在が現れたために一気に溢れただけにすぎない。

 放っておけばまたいつか爆発する。


「それでね、私に考えがあるんだ。チルノちゃんも手伝ってくれないかな?」


 リンはコロコロと鈴の音の様な声で笑うと、あたいに博麗の巫女の所に行けと言った。

 丁度、湖の上では、紫が吸血鬼の少女の頭にゲンコツを落としたところだった。………痛そうだな。



 次の日、まだしっかりしている何人かの妖怪を連れて博麗の巫女を訪ねる。

 この時の巫女はそろそろ役目を終えて、新しい博麗の巫女を探す準備をしていた。

 ただ、見つかるまで待つだけでは暇だったので、修行もせず、だらけながら新しい遊びを考えていたのだという。


 その遊びこそ、後に幻想郷で唯一の決闘法となる『スペルカードルール』…つまり、弾幕ごっこだった。


 それからというもの、弾幕ごっこは妖怪達には大人気で、今では幻想郷のほとんどの者達がスペルカードルールでの戦いを楽しんでいる。









◆◆



「……と、いうわけさ」


「なるほど…」


 あたいは桜花がいない間に幻想郷で起こった出来事について話していた。


「いやはや…その吸血鬼って間違いなくレミリア達でしょうね。まったく、あのお嬢様には困ったものだわ…」


 桜花は苦笑いしながらお茶を啜る。


「それに、霊夢に怠け癖がついたのは、先代の巫女がそんな性格だったからって可能性があるわね…いや、もとからかしら?」


「…ちょっと、どういう意味よそれ」


 あたいと桜花を挟んだ反対側から霊夢が半目で桜花を睨む。


「あら、私はてっきり霊夢は自覚してるものだと…」


「…うるさい」


 そんなやりとりを聞きながらあたいはお茶を啜る。

 今は桜花がいて、霊夢もいて、なかなか楽しい毎日を送っている。

 たまに小さい異変が起きたりするけれど、それはそれで弾幕ごっこが楽しめる。


 こんな日が続けばいいな、と思いながら…あたいは今日も一日を終えるのだった。










 次回から妖々夢に入ります!



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