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東方~青狼伝~  作者: 白夜
紅魔郷編
34/112

◆紅魔郷・プロローグ


 湖の辺にひっそりと建つ、窓の少ない紅い館。


 その中に『彼女』はいた──。




 今年の幻想郷の夏は騒がしかった。


 突然紅い妖霧が幻想郷を包み込んだのである。それは、まるで幻想郷が太陽を嫌っているかのように…


 博麗神社にて、博麗霊夢は考え込んでいた。


「困ったわ、霧が晴れないと洗濯物が乾かないじゃない…」


 自分のことしか考えていない様に見えるが、これでも彼女なりに幻想郷の平和を大切に思っているのだ……たぶん。


「ふむ、仕方がない。なんか湖の向こうが怪しいから調べてみましょう」


 霊夢はお札とお祓い棒を準備する為に神社に入る。


 そんな時、ふと誰かの声が響いた。


『そこの巫女さん…。開かない扉に行きなさい。彼女が起きるわ』


「…っ!…だ、誰!?」


 霊夢は気配を探ってみるが、自分以外の気配を感じなかった。


「開かない扉…」


 霊夢は胡散臭いと思いながらも神社の奥を目指した。







 奥の扉はいつも通り、何をしても動かなかった。


「何なのよ、あの声…開かないじゃないの」


 霊夢が溜め息をついて振り返ろうとした時だった。


 バチッ、と何かが弾ける音がした。


「…ん?」


 霊夢が再び扉に向き直り…そして絶句した。


 扉には無数の術式が浮かんでいたのだ。普通の術式なら問題はない。ただ、その数が半端じゃないのだ。何十、何百という術式がまるでパズルの様に複雑に絡み合っている。


「な、何よ…これ」


 呆然としていた霊夢は、術式が少しずつ消えていくことに気がついた。


 まるで絡んだ鎖を解いていく様に、次々と術式が消えていく。


 そして数分後、ついに最後の一つが消えた。


 霊夢の目の前には、もはやただの木の板となった扉が佇んでいた。


「……」


 霊夢は無言で扉を開ける。


 中は至って普通の部屋だった。畳ではなく少し洋風な感じがする部屋には、たくさんの書物が並んでいた。


 ふと、霊夢は壁にある大きな板に目が向いた。


「これは…名簿?」


 壁には大きな木で縁取られた部分があり、そこに名前が書かれた小さな板がいくつも並べてあった。


「これ…全部歴代の博麗の巫女の名前?」


 一番古い「博麗霊樺」から一番新しい「博麗霊夢」…つまり、自分までの歴代の巫女の名前が全て書かれていた。


 霊夢は改めて部屋を見渡す。すると、奥にベッドがあることに気がついた。


 そこまでゆっくりと歩く。どうやら誰かが寝ているらしい。


「…人?」


 ベッドに寝ていたのは、霊夢より少し年上くらいの少女だった。青い髪に白い肌。およそ美少女と呼んでもいい顔をしている。


「…ぅん」


 少女が身じろぎをしたので、霊夢は少し後ろに下がると、何があってもいいように身構える。


「…ふぁ~」


 少女は欠伸をしながら体を起こし…


「……ん、誰?」


 眠たそうに目を擦りながらそう問い掛けた。


「聞きたいのはこっちよ。あんた誰?ここは私の家兼、神社なんだけど?」


 少女はぱちぱちと瞬きをすると首を傾げた。


「…んん?…ここは博麗神社でしょ?」


「…そうよ」


 少女は数回辺りを見回すと再び首を傾げた。


「じゃあ、問題ないじゃない。私の家でもあるんだから」


「…はぁ?」


 少女はベッドから出ると体を伸ばす。身長は霊夢よりも頭一つ分ほど高い。


「さて…おはよう、今代の博麗の巫女さん。私は鈴音桜花、博麗神社の神だよ」



 少女…桜花が笑顔でそう言うと、隠れていた耳や尻尾と共に力を少し解放する。


「…っ!?…妖怪?…いや、神力もある」


 霊夢は札とお祓い棒を構えて警戒する。


「ふぇ?何で攻撃しようとするの?」


「あんたが本物だって証拠がない」


「証拠ねぇ…紫から何も聞いてないの?」


「…紫?誰のことよ」


 桜花は額を押さえてガクリと俯く。


「紫…話してないのね」


 おそらく、今の桜花の様子を見てニヤニヤしているのだろう。今度会ったらただじゃおかない、と桜花は密かに決意する。


「まぁいいや、貴女の名前をまだ聞いてなかったわね」


「…博麗霊夢よ」


 ぴくりと桜花の耳が揺れる。


「そう…よろしく、霊夢。…じゃあ、私は千年は寝ていた計算になるわね…」


 チルノに怒られるな、と呟いた桜花を見た霊夢はすっかり毒気を抜かれてしまい、お札を懐に仕舞った。


「はぁ、もういいわ。なんか悪い奴じゃないみたいだし…。今は異変の解決が最優先だもの」


「…異変?」


 霊夢の言葉を聞いた桜花が目を細める。


「そう、異変よ。紅い霧が幻想郷に広まり始めてるの」


 紅霧異変…。


 桜花の頭の中にその単語が浮かんできた。


「(ということは…今は紅魔郷が始まったばかりみたいね…)」

 桜花が考え込んでいるうちに、霊夢は準備を終えていた。


「じゃあ、私は行くけど…神社を荒らさないでよ?」


「わかってるわ。誰が好き好んで自分の家を荒らすのよ」


「私はまだあんたを信用してないもの」


「…さいですか」


 そう言うだけ言うと霊夢は暗くなった空へと飛び立った。


「あ、スペルカード貰うの忘れてた!」


 自分も寝起きの運動がてら出発しよう、と考えていた桜花は、自分がスペルカードをもっていないことを思い出した。


「どうしよう……あれ?」


 ポケットに何かが入っている感触があったので、中のものを取り出してみると…。


 真っ白なスペルカードが数枚。それからメモが入っていた。


『おはよう、桜花。私はわけあって貴女の所に行く時間がないの。

 だからこの手紙と一緒に空のスペルカードを入れておくわね。

 スペルカードルールについては別のメモに書いてあるから、それを読んでちょうだい。

 じゃあ、できるだけ早目に会いに行くから、それまで頑張って。


    ―紫より―』



 桜花は手紙とメモを綺麗に畳むと、再びポケットに入れる。


「まったく…なんだかんだで世話好きなんだから…」


 口ではそう言いながらも顔は笑っており、紫へのお仕置きを軽目にしようかな、と思う桜花であった。






 東方紅魔郷~the Embodiment of Scarlet Devil~


・プレイヤーを選択して下さい。


~博麗の神~

鈴音桜花


移動速度・★★★★

攻撃範囲・★★★★★

攻撃力・★★★★★


・使用するお札を選択して下さい。


青符「桜花専用ホーミングアミュレット」

「夢想封印・青」




 少女祈祷中…





 いよいよ原作開始!

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