表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方~青狼伝~  作者: 白夜
原作前編
33/112

◆閑話・原作開始直前


 彼女が眠って千年以上…


 幻想郷はやはり、いつも通りの日常をおくっている。


 主人公二人もいつもの通り…。




~霊夢Side~


 幻想郷の端に存在する博麗神社。


 そこで私は、博麗の巫女として生活している。


 季節は夏…。蝉の鳴き声を聞きながら毎日の日課である境内の掃除を始める。


 この博麗神社は幻想郷と外の世界の境目に建っている。そのため、外から迷い込んだ外来人を送り返す場所としての機能も有している。


 博麗の巫女である私は、この神社で博麗大結界の管理と、幻想郷で時折起きる異変の解決を生業としている。


 と、言っても普段はこうして人気のない神社の境内を掃除して、縁側でお茶を飲みながらのんびりするのが日課となっている。


 ん?修行?…何それ、美味しいの?


 しかし、毎日毎日こうして掃除ばかりをしているが、この神社には人が全くと言っていいほど来ない。


 唯一来るとしたら、友人の白黒魔法使いだけである。…まぁ、彼女も大抵私とお茶を飲んで、茶菓子を食べるだけ食べて、賽銭も入れずに帰って行く。


 まったく…、たまには賽銭を入れて行ってほしいものだ。こちとら異変の解決以外に殆ど収入源がない。そのため、食事はかなり軽いものしか作らない。私は少食だからいいものを、歴代の巫女達は一体どうやって過ごしていたのか…。




 境内の掃除を終えた私は、神社の中へと入ると、汗を拭いながら部屋の掃除を開始する。


「あぁもう、面倒臭いわね…」


 使わない部屋や道具の整理に、札やお祓い棒の手入れ…。普段から小まめな整頓をしない私は、こうして整理の時になる度に一人で愚痴をこぼしていた。


「あ~あ…勝手に整理整頓してくれる式でもいたらなぁ…」


 なんてことを言いながら続きを始める。…ん?じゃあなんで式を探さないか?だって面倒じゃない。……あ、今「この巫女ダメだな」とか思った奴、前に出なさい。もれなく夢想封印で“ズドン”してあげるから。



 そんなことをしている間に神社の一番奥にある部屋の前へとやって来た。


 少し装飾の施された大きめの扉には桜と狼の絵が描いてある。私は、博麗の巫女となった日から今まで、この扉が開いた所を見たことがない。


 先代の巫女から、『ここには博麗の神が眠っている…』と聞いたことがある。


 その神は幻想郷を作り出した賢者の一人とされており、千年ほど前にあった大きな戦いで力を消耗し、ここで眠っているという…。


 正直、本当かどうかはわからない。この扉はどうやっても開かないのだ。


 少し前、興味本位でこの扉を開けようとしたがびくともしない。どんな術式を使っても開かないし、解析もできない。


 結局、一日中頑張っても開かなかったので、そのままスッパリと諦めたのだ。



 私はその扉の前に立つと手を当てる。こうして触るだけなら普通の扉の感触がするのに…。


「まぁ…いっか」


 私はくるりと踵を返すと、お茶を飲むために縁側へと歩いて行った。








―魔理沙Side―


「よし、これで完成だ」


 掻き混ぜていた鍋の火を消して小さな瓶を並べると、その中に慎重に鍋の中にある液体を流し込む。


 薄い緑色の液体は一見美味しそうに見えるが、こんなものを飲み込んだ日にはもれなく三途の川へと招待されること間違いなしだ。


「さて、効果を試すとするか!」


 しっかりと詮をした瓶の一つを持つと外に出る。


「ん~っと……お、あれがいいな」


 近くにある木の中から手頃な太さの木を見つけると、手に持っていた瓶を投げつける。


 次の瞬間、木にぶつかった瓶は強烈な光を放ち、星型の弾幕を撒き散らす。


「おぉ、流石は私だ。完璧だな!」


 私が作っていたのは弾幕ごっこで、マスタースパークを撃つまでの時間を稼ぐ為の携帯型のボムだ。


 私のマスタースパークは強力だが隙も大きい。だからそれを補うものが必要になるのだ。


「おやおや、相変わらず随分と試行錯誤しているようだな」


 上空からの声に顔をあげると、一つの人影があった。…いや、あの人の場合は幽影か?


 月と太陽の模様が入った青を基準とした服と帽子。少し暗い緑色の髪。そして手に持つ三日月型の杖。


「魅魔様!!」


 彼女は私の隣に降りてくると大きく伸びをした。


「魅魔様、最近見かけませんでしたが、何処にいたんですか?」


「いやなに、博麗神社にいたのさ」


「霊夢の所ですか?」


「ああ、ちょいと自分の限界に挑戦してきたのさ」


 魅魔様は自称「博麗神社の祟り神」と自分のことを言っているが、本人に誰かを祟るような気は無く、毎日のんびり生活を送っている。


 そんな魅魔様がこれ程の興味を示すのなら、博麗神社には今だに何かがあるのだろう。


「霊夢と勝負したんですか?」


「いや、霊夢には会ってないよ。まぁ、気づいてはいるんだろうけどね」


「あれ?じゃあ、何をしに行ってたんですか?」


 博麗神社にある魅魔様が興味を示しそうなものを私は今のところ霊夢以外に知らないのだが…。


「魔理沙、神社の奥にある開かない部屋のことは知っているか?」


「開かない部屋ですか?」


「そうだ、千年以上前から開くことがないという扉…。その中には博麗の神…つまり、幻想郷を作った神がいるという話だ」


 なるほど、それなら魅魔様が興味を示すには十分だ。


「それで、中を見たんですか?」


「いや、アタシの全力をもってしても一ミリも動かなかったよ」


 魅魔様の言葉に私は驚いた。純粋な火力なら幻想郷で1、2を争う魅魔様の全力の力でも開かない扉があるなんて…激しく興味をそそられる。


「気になるならお前も見てみるといい。アタシもそろそろ行くとしよう」


 そう言い残して魅魔様は空へと舞い上がる。


「こうしてちゃいられないぜ!」


 私は急いで準備をすると箒に跨がり、博麗神社を目指して飛び立った。




―SideOut―






~博麗神社~



「よっと、霊夢~、いるか~?」


 華麗に舞い降りた魔理沙は神社の縁側へと歩いて行く。


「何よ、こんな暑い日にそんな暑苦しい格好して…」


 霊夢は縁側でお茶を飲みながら、僅かな風で涼もうとしているところだった。


 魔理沙は帽子を取ると霊夢の隣に座る。


「いやなに、ちょっと面白い話をきいたんだ」


「どうせ魅魔から聞いたんでしょ?なんか最近神社に入り込んでは色々やってたけど」


「流石霊夢だな。魅魔様からこの神社に開かない扉があるって聞いたんだ」


 その後、霊夢は魔理沙にしつこく案内するように言われたので、渋々奥の扉まで連れていった。


「ほら、これよ」


「ほう、ただの扉にしか見えないが…」


 魔理沙は扉をじろじろと観察すると、懐からミニ八卦炉を取り出した。


「マスター…「こらっ」いてっ!?」


 マスタースパークを撃とうとしたところを霊夢に叩かれた。


「あんた、この狭い廊下であんな砲撃を撃つ気なの?」


「仕方ないだろ、私の一番の威力を誇る攻撃だぞ?これがないなら何をしろと言うんだ?」


 呆れ顔の霊夢に胸を張ってそう言った魔理沙は、再び扉を眺める。


「う~ん…見た感じではただの扉なんだがなぁ…やっぱり壁ごとマスパで撃ち抜くか…?」


「あんたね、少しは考えなさいよ。魅魔だって魔法を一点集中で放って周りに被害が出ないようにしてたわよ?」


「私はまだ魅魔様並の魔法は使えないからな。仕方がない、今回は諦めるが、絶対にこの扉の謎を説き明かしてみせるぜ」


「はぁ…好きにしなさい」


 霊夢と魔理沙は再び縁側に歩いて行った。





「ふふふ、元気だこと」


 扉を挟んだ反対側…つまり、部屋の中では紫がスキマに腰掛けて笑っていた。


「あと少し…」


 紫の視線の先には真っ白なベッドがあり、桜花が眠っていた。


 紫は立ち上がると、静かな寝息をたてる桜花の髪を撫でる。


「千年以上も寝るなんて…余程寝るのが好きなのかしら?…私も人のことは言えないけれど…」


 紫はスキマを開くと、その中に入る。スキマが閉じる瞬間、


「ほら、起きなさい」


 そう言い残して。





 ここ数年で幻想郷は随分と賑やかになっていた。


 湖の辺には紅い館が現れ…


 迷いの竹林には月の兎が住み着き…


 鬼がやって来たかと思えば他の一部の妖怪達と地下に送られ…


 小さな閻魔とサボリ癖のある死神が配属された。


 博麗大結界も張られて外の世界からは完全に隠された場所となった。




 そして…今、ついに彼女が目を覚まそうとしていた。






 次回より紅魔郷スタートです!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ