◆邂逅、氷の妖精チルノ
タイトルからわかるようにチルノが出ます。
私がこの世界に来てから五百年たった。
毎日能力や妖術の訓練をしていたらあっという間に時間が過ぎていった。妖怪になったからか時間が流れるのを早く感じてしまうがそれは仕方ないのかもしれない。
この五百年という月日が流れる間にいろいろなことがあった。
まず動物達が生まれ、人類も誕生して文明を築き始めた。といってもまだできたばかりの旧石器時代。私はまだ彼等と触れ合うつもりはない。
次に大規模な地震があった。私は池の淵でひなたぼっこをしていたので突然の地震に驚いて池に落ちそうになった。
しかも地震のせいで地下の水脈でも掘り当てたのか池の真ん中から凄い勢いで水が噴き出してきた。
私は急いで空中に避難したのだがみるみる池は水の量を増やし、ついには湖になってしまった。
おそらく活断層のずれが影響だと思われるが湖の近くあった小さな山がさらに高くなり、そこから川を伝って湖に水が流れ込むようになった。
…あれ?山と麓の湖?どこかで似たような場所を聞いたことがあるような…
まぁいいか。とにかく周りの環境に関してはこんな感じである。
次に私自身に関してだが、どうやら私は妖怪の中でも強い部類に入るようだ。例の山が出来てからというもの山に小妖怪が住み着くようになった。妖怪の仲間だからとコミュニケーションをとろうとしたが、私を見た瞬間襲い掛かってきたのであっさりと返り討ちにした。
すると、私を見ていた妖怪達は一目散に逃げだしたのだが私はそんなことよりも力は弱いとはいえ妖怪を倒したことに驚いていた。今まで私以外の妖怪に会ったことがなかったのでわからなかったが今の私の力はもしかしたら大妖怪に達するくらいかもしれない。
よく考えてみれば私は普通に人の姿になれるが、普通妖怪が人の形になるにはそれなりに力をつけなくてはならない。
と、なると私は最初から力のある妖怪だったことになる。うわぁ、今更だけど私って何なんだろう…
そんなことを考えながら湖を眺める。しかしこの湖、最近になって気温が下がったり昼間には霧がかかるようになった。おかげで見通しが悪くなってしかたがない。
「ここから眺める景色好きだったのに…」
私は誰に言うわけでもなくぽつりと呟いた。
「へぇ~、あんた結構変わり者なのね」
「そうかな?私は普通だと……あれ?」
普通に返事をしていたがここには私以外誰もいないはずだ。
私は慌てて戦闘態勢になると妖力を解放する。
「ちょっとまちなさいよ。誰も戦うなんて言ってないわ」
そう言って声の主は霧の中から姿を現す。青い服に青い髪、青いリボンに氷の羽の生えた小柄な少女。この少女を私は知っている。
「…チルノ?」
そう、目の前にいるのは⑨で有名な氷の妖精チルノである。
「あれ?なんであたいの名前を知ってるのよ?」
あ…しまった。ついつい名前を呼んでしまったが彼女とは今日が初対面、名前を知っているはずがない。
「え、えっとそこの山にいる妖怪達が言ってたのよ」
我ながら苦しい理由ではあるがチルノを含めて妖精は頭があまりよくないらしいので深くは追求されないだろう。
「ふ~ん、まぁいいわ。確かにあたいは氷の妖精チルノよ。あんたは?」
なんだろ…この落ち着いたチルノは?私の知っているチルノは相手の素性なんて気にせずに突っ込んで行くやつなんだけど…
「ちょっと、聞いてるの?」
「…え?ああ、名前だったわね。私は……そういえば私、名前がないわ」
「はぁ?あんた名前がないの?」
チルノが呆れたような視線を向けてくるが今まで名前が無くても大丈夫だったために名前のことをすっかり忘れていた私は反論できずに俯く。
チルノに呆れられるって…泣いてもいいですか?
「仕方ないわね、名前がないと呼ぶときに困るからあたいが一緒に考えてあげるわ」
「…え?」
私は耳を疑った。あのチルノが私の名前を一緒に考えてくれるとは……
「な、何よそんな驚いた顔して。あたい何か変なこと言った?」
「い、いえ…何でもないわ」
チルノってこんなだっけ?なんか違うような…
「ねぇ、あなた本当にチルノ?」
「はぁ?当たり前じゃない。さっきあんたからあたいの名前を呼んだじゃない。矛盾って言葉知ってる?」
え?チルノが目茶苦茶まともなんですけど!?
「妖精ってもっと頭が悪いと思ってた」
「それは偏見よ。妖精だって頭がいい奴もいれば悪い奴もいる。全てが同じじゃないわ」
どうやらこの世界のチルノは普通に落ち着いた性格みたいだ。『無謀は勇気』って言っていた原作のチルノとはまるで正反対だ。
「それで、あんたの名前なんだけど…」
え?ああ、だいぶ話がそれたけど私の名前を考えてくれるって話だったっけ。
「桜花…鈴音桜花っていうのはどう?あんたの髪飾りから考えてみたんだけど」
「あ…うん!それいいね!気に入ったよチルノ、ありがとう!」
私が笑顔でそう言うとチルノは照れたのか顔を赤くしながら視線をそらした。
「き、気に入ったならよかった。まぁ、あたいが考えたんだから当然よ。あたいってば…」
「天才ね!でしょ?」
「な!?あ、あたいの台詞取らないでよ!」
「あははは~」
やっぱり性格は多少違えどチルノはチルノだった。
それにしても最後にこんなに笑ったのは久しぶりだ。これもチルノのおかげかな…頭撫でてあげよう
「うわぁ!いきなり何すんのよ!」
「何って、名前のお礼だよ。ありがとうチルノ」
「むぅ~、なんか子供扱いみたいで嫌だわ」
「私からすれば誰でも子供だよ」
「…うぅ~」
さて、やっと楽しくなってきた。今度は何が起きるのかな?
次に誰を出そうかひたすら悩んでます(汗)