閑話・昔話の真実
今回はちょっとした小話です。
感想等の中に「狼姿の桜花が見たい」という意見がありましたのでピクシブに載せました。見たい方は「二次小説」のタグで検索してみてください。
―桜花Side―
突然だが皆さんは「笠地蔵」の話は知っているだろうか。
昔話の中でも有名な部類に入る話で、あるお爺さんが、作った“笠”を雪の降る日町に売りに行った。
笠は全ては売れず、五つ残ってしまう。お爺さんは仕方なく家に帰ることにした。
すると、道端に雪を被った六体の地蔵が立っていた。お爺さんは売れ残った五つの笠を地蔵に被せ、足りない最後の一体の地蔵には自分の手ぬぐいを被せてあげた。
その後、家に帰ったお爺さんは、お婆さんにその話を聞かせた。
そして夜中、寝ていたお爺さんは戸を叩く音で目が覚める。不思議に思ったお爺さんが戸を開けると、家の前には沢山の食料や酒が置いてあった。
これは笠を被せてもらった地蔵達のお礼だったのだった。
地方によって話の内容は違うが大まかな内容はこうだったはずである。
さて…私は現在、幻想郷へと輝夜、永琳、妹紅の三人と共に向かっている最中である。
場所はとある山の中、歩いて移動中なのだが……
ザク、ザク、ザク…
今日の天気は雪。季節も冬真っ只中で、肌を刺すように寒い日が続いている。
そんな中、私と永琳の雪を踏む足音が聞こえる。
もう一度言う……“私と永琳”の足音だけである。
大切なことなので二回言いました!
「あ~…温かい…」
「もふもふ~…」
現在、輝夜と妹紅は私の尻尾に埋もれて、ふにゃっと緩んだ顔をしている。
この二人、寒さにかなり弱い。輝夜も妹紅もそれなりに厚着なのだがそれでも私の尻尾から出ようとしない。
「永琳は大丈夫?寒くない?」
「私は平気よ。これくらいで根をあげてたら月じゃやっていけないわ」
「月ってそんなに大変なの?」
「生活は楽よ? ただ私は仕事が他の人より数倍多かったから…」
「大変だったんだね…」
こんな感じで永琳と会話をしながら道を歩く。飛んでもいいのだが「空は寒いからだめ!」と、輝夜に飛行禁止を告げられてしまい、仕方なく歩いているのだ。
しばらく歩いて、小さな広場らしき場所に出た。私達からすれば小さいが、小さな子供からすれば丁度いい広さだ。
広場にもやはり雪が積もり真っ白で地面なんて見えない。そんな中、広場の隅に何やら立っているのが見えた。
「あ、お地蔵様だ」
そこにあったのは五体の地蔵だった。
そして五体共頭の上に真新しい笠が被せてあった。
もしや昔話の「笠地蔵」ではないか…私はふとそんな懐かしい話を思い出していた。
「あれ…?でも五体しかない。たしか六体あるはずじゃなかったかな…?」
ふと、そんなことを思った時……五体の地蔵の隣に何やら雪が盛り上がっている部分があるのを見つけた。
「………まさか、ね」
私は半分冗談のつもりで盛り上がっている雪を掻き分けてみる。
すると……幼女が埋まってました。
「え…」
幼女だ…、緑の髪で着物を着た幼女が雪の中に埋まっていたのだ。死んでいるかのように動かない。
私が恐る恐る触ろうとした瞬間──
ガバッと幼女が起き上がった。
「きゃあああぁぁぁぁぁぁ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
思わず輝夜と妹紅を振り落として永琳に抱き着いた。
「え、えええ永琳!!助けて!死んでた女の子が…女の子が起き上がった!女の子がぁ!!」
「なっ!?ち、ちょっと桜花、いきなりどうしたの!?////」
私が急に抱き着いたからか顔を赤くしながら永琳が驚いてる。でも、今の私にそんな余裕はない。純粋に恐かった。まさにホラー。
視界がぼやけているから多分私は泣いているのだろう。しかし、そんなことはお構いなしに私は永琳に更に強く抱き着いた。
「うぅ~…助けて、永琳~…」
「お、桜花…落ち着きなさい。…普段の姿と全然違うじゃない////」
永琳は顔を背けたが、しっかり頭は撫でてくれていた。
あぁ…安心する。
「ねぇ、妹紅…私達の扱い酷くない?」
「……うん」
私達の後ろで輝夜と妹紅は雪に埋もれた状態でそう呟いた。
更にその後ろでは先程の幼女が服についていた雪をはらっていた。
「ふぅ…誰かは存じませんが助けていただきありがとうございます」
そう言って緑髪の幼女は頭を下げた。
「私はここに並んでいる地蔵の一つで、四季映姫といいます」
「えっ!?」
私は彼女の名前に真っ先に反応した。
四季映姫・ヤマザナドゥ……原作キャラの一人で閻魔様である。説教癖があり、部下の小町に何度も説教している姿が脳裏に浮かぶ。
今の彼女はまだ地蔵のころであり、名前に「ヤマザナドゥ」がついていない。しかも記憶の中にある姿と違うので誰かわからなかった。
「雪に埋もれてしまって……。人型になって抜け出そうとしたのですが…結局動けなくて途方に暮れておりました」
映姫様は苦笑いをしながらいきさつを話してくれた。
「なるほど、だからお爺さんも気づかずにスルーしちゃったんだ……」
「……?。なんの事ですか?」
私は他の五体の地蔵を指差す。映姫様はだいたいの事情を察したのか再び苦笑いをした。
「ああ、そういうことですか。私は気にしませんよ。お気遣いありがとうございます」
私達も苦笑いしながら自己紹介をした。
「私は鈴音桜花、妖獣兼、神よ」
「私は八意永琳、人間です」
「私は蓬莱山輝夜、同じく人間よ」
「私は藤原妹紅、私も人間よ」
映姫様はほぅ、と険しい顔をして私達の顔を一人ずつ見ていく。
「人間と妖怪が一緒に旅ですか…」
「私は一応神でもあるけどね」
「いえ、それでも人間と共に旅をする時点でおかしいのですが…。桜花さん、貴女は自分の神社等を持っていますか?」
映姫様の話の内容が上手く理解できないがここは素直に答えよう。
「えっと、一応神社があるけど…」
「貴女は自分の神社をほったらかして何をしているんですか!?」
「…え?い、いや…その……」
…あれ、おかしな雰囲気になってきた。
「いいですか?そもそも神というものはですね………」
「え、えっと…映姫さん?」
「いいから黙って聞きなさい!」
「は、はいぃ!!?」
思わず敬語で答えてしまうほど、この時の映姫様は怖かった。
~一時間後~
「……と、いうわけです。わかっていただけましたか?」
「は、はぃ…」
「はい、わかって頂けたなら結構です!」
最古の妖獣兼、神が地蔵の幼女の前で正座をしながら説教される……何ともシュールだ。
「桜花、大丈夫?」
妹紅が水の入った水筒を渡してくれながら心配そうにしていた。
「うん、大丈夫。お説教なんて久しぶりに受けたから何だか懐かしい感じがしたわ…」
「神様に説教するなんて……あの子、将来は閻魔にでもなるのかしらね?」
永琳、それ間違いなく現実になるよ。そんでもって幻想郷で会えるよ。
「え、えええ閻魔だなんて、とんでもない!わ、私はただの地蔵ですよ!?」
「いやいや、神様に説教できる地蔵なんか他にいないわよ…」
うん、それは私も思った。将来はまた色々と言われるのだろうか……。うん、悪い事はしないでおこう。今日は一時間で済んだけど、次はどうなるかわからない。
「あ、すいませんでした!私としたことが長々と説教なんてしてしまって!どうしても白黒つけないと落ち着かない性分でして……」
「「「貴女、絶対閻魔になれるわ」」」
「ええ!?」
その後、笠をくれたお爺さんへの恩返しをする、と言った地蔵達と共に野菜や果物等を集めた。
酒や米は何処から持ってきたんだろう…。うん、深く考えないようにしよう。
私達は映姫様に別れを告げると、幻想郷に向けて再び歩き出した。
「何となくオマケ」
~楽屋にて~
桜花「お疲れ様でした~」
映姫「お疲れ様でした。桜花さん」
桜花「あ、映姫ちゃん!今日はいい演技だったね~!」
映姫「え…そ、そんなこと……ないですよ」
輝夜「あらあら、映ちゃんったら照れ屋さんね」
妹紅「ふふ、いいじゃないの。まだ若い証拠よ」
桜花「貴女はまだ十代半ばなんだからいいわよね~。私なんか万よ?万!」
輝夜「私も千は越えてるし、永琳も万いってるし……」
ヒュッ!!
ドスッ!
輝夜「あぅ!」
永琳「まったく…姫様、年のことは言わないでくださいよ」
輝夜「あれ?…ズドンは霊夢の役目でしょ?」
桜花「こらこら…まだ霊夢は出てないわよ?」
永琳「それに私は「ズドン」じゃなくて「ドスッ」でしたよ?」
映姫「……輝夜さん、矢を撃たれたことに対するツッコミは無いんですね(汗)」
妹紅「気にしたら負けよ…映姫ちゃん」
紫「皆さ~ん、次の収録の準備できましたよ~」
桜花「お、了解よ、ゆかりん!」
紫「そんな…ゆかりんだなんて////」
輝夜「ハッ、見た目若いだけのBBAが、何を言い出すかと思えばwww」
パカッ
輝夜「あ~れ~!?」
紫「あら?丁度いい実験体が手にはいったわ」
永琳「あら、何をするのかしら?」
紫「いつか桜花に試そうと思って製作中の媚薬」
永琳「あら、じゃあ私も手伝うわ」
紫「わかったわ、報酬は桜花の■■■を■■するってことでどうかしら?」
永琳「あら、気前がいいわね(笑)」
桜花「ちょ、ちょっと、何の話をしてるのよ!?」
紫「桜花を愛でる為の相談よ(笑)」
永琳「ええ(笑)」
桜花「い、いやああああぁぁぁ!!聞きたくない!聞きたくない!(泣)」
妹紅「二人とも、そういうのは本人がいない場面でしなさいよ…」
映姫「はぁ……(ダメだこの人達、早く何とかしないと…)」
今日も皆さんは元気でカオスにやっておりますwww
~終~
今回はちょっとした息抜きに書いた小話でした。次回からは元に戻ります。
感想、御意見、お待ちしております。




