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東方~青狼伝~  作者: 白夜
原作前編
22/112

外伝 彼女がいない幻想郷で…

 やっちゃったぜ!


 ついにあのチルノが現れる!


~博麗神社~



「……ふぅ、平和ねぇ」


「そうですね~」


 幻想郷の端にある博麗神社。そこに二つの人影があった。


 一人は紅白の巫女服を着た少女。今代の博麗の巫女である博麗霊那。


 もう一人は金髪に紫色のドレスを着た女性。スキマ妖怪の八雲紫である。


 二人は縁側に腰掛けてお茶を啜っていた。美女二人が微笑みながらお茶を飲む姿はなかなかに美しい。


「あら、嬉しいわね」


「…? 紫様、誰に話し掛けているんですか?」


「あら、誰だったかしらね?」


 そんな二人の元にやってくる影が一つ。


 緑の髪をサイドテールにした少女、大妖精である。


「紫さ~ん!霊那さ~ん!大変です~!」


 大妖精は息を切らせながら境内に降り立つ。必死に飛んできたのだろう、額に汗が滲んでいる。


「どうかしたの?」


「人里が妖怪に襲われてます!」


「「!?」」


 大妖精の言葉を聞いてからの二人の行動は速かった。


 紫はスキマを開くとすぐにその中に飛び込む。そして、霊那は大妖精から詳しい事情を聞きはじめる。


「妖怪の数は?」


「たぶん…30はいました」


「被害状況は?」


「怪我人が10人程…。でも、今チルノちゃんが妖怪を食い止めてるから死者は出てません!」


「わかったわ。すぐに私も出るから大ちゃんも来て」


「はい!」


 霊那はお祓い棒と御札を確認するとすぐに人里へと飛び立った。






~人間の里~


 人間の里は大混乱だった。突然、昼間にも関わらず妖怪が攻めてきたのだ。


 里の出入口の警備をしていた十人が怪我をしたが死者は出ていない。


 現在は氷の壁が里の出入口を塞いでいて妖怪の侵入を妨げている。


「まったく、紫や桜花の恐ろしさを知らないみたいだから新参者かな?…まったく、厄介なことだね」


 溜息とともにそんなことを呟いたのは氷の妖精チルノ。肩まである青い髪を風になびかせながら前方の氷の壁を睨んでいる。


 彼女の作り出した壁はとても分厚く、ちょっとやそっとじゃ壊せない。しかし、それも時間の問題である。チルノ自身は大妖怪と互角に戦えるほど強くなっているが、ここは人間の里。つまり周りに常に気を配りながら戦わなければならない。しかも敵は30匹はいると思われる。さすがのチルノも多勢に無勢。数で押し切られる可能性がある。


「大ちゃん、まだかなぁ…」


 大妖怪がちらほら混じっていたのに気がついてたチルノは博麗の巫女と八雲紫に知らせるために大妖精を神社に向かわせた。おそらくそろそろ到着する頃だろう。


「まったく…桜花がいなくて大変なのはわかるけど、これだけの妖怪が人間の里に近付いたら気がつくと思うんだけど……。あの紫ババア、また管理さぼってお茶でも飲んでたわね、きっと」


 再び溜息をつきながら両手を頭の後ろに回して組む。ところが……





──あら、随分と好き勝手言ってくれるわね……



 ピタリとチルノの動きが止まる。顔は引き攣り、冷や汗がたらりと流れる。そのまま“ギギギ”と音が聞こえそうなほどゆっくりと後ろを振り返る。


 そこには満面の笑みを浮かべた八雲紫という名の修羅が立っていた。


「あ、ああ…い、何時からそこに?」


 チルノはあはは、と引き攣り笑いをしながら尋ねた。


「「これだけの妖怪が…」からよ。……でも、誰をババアだって言ったのかしら?私よく聞こえませんでしたの」


 笑ってはいるが顔には影がさしており、細められた瞳からは鋭い眼光がチルノに突き刺さる。


「あ、あの…そう!知り合いの人間がもうババアだなって言ったのよ!うん!」


 慌てて言い訳を始めるチルノを見下ろしながら、紫は日傘を畳むとチルノの頭の上に振り下ろした。ガツンという音が響く。


「ひゃう!?」


「……次は無いわよ?」


 頭を押さえてうずくまるチルノにそう言うと、チルノは涙目になりながらも頷いた。


「まぁ、いいわ。確かにサボってた私も悪いのだから」


 じゃあ最初からそう言えばいいのに、と言う思いをチルノは口に出さずに飲み下した。


「そうだ、チルノ。頼まれていた物、できたわよ?」


 そう言うと紫はスキマの中から六本の剣を取り出した。アイスの当たり棒のような形の剣やスイカ模様の剣など、個性的な形をしている。


「おお~!完成したんだ!ありがと!」


 チルノはすぐに剣を握ると振り回して感覚を確かめる。


「それにしても、貴女が武器を使うなんてどういう風のふきまわし?」


 不思議そうに見る紫の顔を見ながらチルノは剣を次々と合体させる。


「桜花から言われたんだよ。接近戦にも慣れてた方がいいって」


 全てを組み合わせた剣を肩に乗せながらチルノは再び壁の方を見る。


「そんなの、自分で作り出せばいいじゃないの」


「あたいの力で作った氷剣だとすぐに割れちゃうんだよ。結構強度を上げるのが難しくてさ。だから桜花に破損することを拒絶した材料を用意してもらったの」


「そして更に私の能力で形を変えたり、ちょっと境界を弄って出来上がりってわけね…」


「そういうこと」


 チルノは紫から黒いベルトを受け取ると背中と腰にまわしてしっかりと装着したのを確かめると剣を背中の鞘に挿して固定した。


「あら、結構似合うじゃない」


「ありがと」


 チルノと紫がお互いに笑い合うと、丁度霊那と大妖精がやってきた。


「お待たせ、状況は?」


「あんまり変わってないよ。大ちゃん、大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。チルノちゃんの頼みだもん」


「よし、じゃあ作戦を立てるわよ」


 紫が出した作戦は三方向からの同時攻撃だった。チルノが正面から敵の中心に突撃して混乱を誘い、その隙に紫と霊那がサイドから大妖怪を中心に確実に敵を仕留める。大妖精はチルノの援護だ。


「じゃあ、いまから五分後に作戦開始ね」


「「「了解」」」








―チルノSide―


 さて、ここからが正念場だ。人里に妖怪を入れないように注意しながら敵を全滅、または降参させる。


 あたいは大妖怪相手はまだ流石にきついので紫と霊那に任せよう。あたいの仕事は正面から突撃して雑魚を一掃すること。大ちゃんの援護もあるし、何より幻想郷最強の妖怪二人に作られた剣がある。負ける気はしない。


「チルノちゃん、頑張って!私も頑張るから!」


「うん、さっさと終わらせるよ。あたいは最強なんだからね」


 大ちゃんに笑いかると、目の前の壁に向き直る。


「5…4…3…2…1…0!!」


 カウントの終了と同時にあたいは壁に全力疾走すると、目の前の壁だけを消して穴を空ける。


「戦闘かぁぁいしぃぃぃぃい!!」


 穴に入ると同時に目の前にいた妖怪の顔面にドロップキックを繰り出した。


「ぎゃあああ!?」


「何だ!?」


「どうした!?」


 突然の奇襲に驚いた妖怪達へと氷塊を打ち出す。それだけで妖怪達を次々と薙ぎ倒していく。


「ありゃ、これは作戦立てる必要なかったかもしれない」


 あたいを捕まえようとした妖怪に踵落としをお見舞いして地面ごと氷付けにする。


 既に10匹は倒したけどあきらかに最初よりも数が増えてるからいつの間にか仲間を呼んだみたいだ。


「まぁ、いいさ。どっちにしろ倒すだけだから」


 あたいの呟きと同時に飛び掛かってきた妖怪三匹に氷柱を発射する。しかし、避けずにそのまま氷柱に突っ込んできた。氷柱は妖怪の体に当たると砕けていく。


「うわ、硬そう…」


 バックステップで攻撃を回避してすぐに今度はこちらから間合いを詰める。


 そのまま背中に挿した剣を抜くと体を捻って遠心力をつけ、そのまま相手に振り抜く。


「ぐぎゃあ!」


 攻撃が直撃した妖怪は体が硬いおかげか真っ二つにはならなかったが傷を負って吹き飛んだ。


 この剣、紫にたのんで重量の境界を弄ってもらっているので重さはほとんど無いに等しい。しかし質量はそのままなので破壊力は抜群だ。


 そういえば名前を考えていなかった。よし、バスタードチルノソードと名付けよう。


「てめぇ!やりやがったな!?」


 残りの二匹が挟み込むように襲い掛かってきたので剣を二本に分解して攻撃を受け止める。


「この、妖精だと思ってたら調子にのりやがって!」


「ガキのくせに!」


 まったく、妖精だからって油断してると酷い目にあうとわからないのかな?


 その場で一回転しながら剣を振り回して敵を振り払うと前にいた妖怪の懐に入り込み、そのまま両腕をクロスさせるように剣を振り降ろす。すると呆気なく目の前の妖怪は地面に倒れ込んだ。


「後ろががら空きだぞ!!」


 すると後ろから最後の一匹が腕を振り上げて迫っているのが見えた。


「馬鹿だな、不意をつくなら声をあげちゃ駄目じゃん」


 呆れるあたいに腕が振り下ろされるがあたいは避けない。なぜなら避ける必要がないからだ。


「そこまでです」


 次の瞬間、妖怪の背後に瞬間移動してきた大ちゃんがそのままクナイで妖怪の喉を切り裂いた。


「がっ……あが…」


 突然背後から喉を切られたショックで動きが止まった妖怪をバスタードチルノソードで吹き飛ばす。


 そのまま木にぶつかった妖怪に向けて大ちゃんがクナイ型の弾幕を放ち両手両足を木に縫い付けた。


 大ちゃんの射撃能力は凄い。霧の湖の端から反対側にある直径約一尺(約30cm)の的のど真ん中に命中させることができる。


 周りにはもう妖怪の姿はない。たぶん逃げたんだろう。気配を確認してからバスタードチルノソードを腰の鞘に戻す。


「ふぅ…終わったね」


「うん」


 大ちゃんの細められていた瞳が元に戻る。大ちゃんは戦闘の時と怒った時に瞳が鋭くなって恐い。普段の可愛らしい姿を見ているから余計にそう感じてしまう。


「あら、どうやら終わったみたいね」


 上空から声が聞こえたので見上げると紫と霊那がいた。


「そっちは?」


「もちろん、全滅させてきたわ」


「紫は幻想郷を脅かす奴らには容赦しないからね」


「当然じゃない」


 その後、妖怪達の死体は紫がスキマを使って何処かに送った。


 そして現在、博麗神社の縁側にてくつろいでいる真っ最中。


「はい、お茶よ」


「ありがと。んあ~疲れた」


 霊那に渡されたお茶をそのままぐいっと飲んで……ん?


「ぶふぅえ!?」


「きゃああ!?チルノちゃん大丈夫!?」


「熱っ!?熱い!!ぎゃあああ!喉がぁぁぁ!?」


「あ、冷ますの忘れてたわ」


 あまりの熱さに咳込むあたいを心配してくれる大ちゃん。苦笑いしながら謝る霊那。そして腹を抱えて爆笑している紫。


 今日も幻想郷の平和は護られている。ただ、この中に桜花がいないのが残念だ。桜花、早く帰ってこないかな…






「ちょっ、冷たい!?」


 …とりあえず笑った仕返しに紫のお茶はキンキンに冷やしてやった。ふっ、ざまぁ。


「……チルノ、死後の世界について考えたことは?」


「……興味ないね」






ピチューン


「アッーーーー!!」






 いかがでしたか?アドベントチルノの活躍は?


 私個人としてはDie妖精…失礼、大妖精も好きなのでこれから活躍させたいですね。


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