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東方~青狼伝~  作者: 白夜
原作前編
21/112

◆少女は一歩を踏み出す

輝夜がまだ腹黒くない(笑)

―妹紅Side―



 突然の出来事で、私の頭の中は混乱していた。


 突然あの青い狼に再会したと思えば、背中に乗せられてあの女の屋敷に連れてこられた。



──そして



 私の目の前には私の憎む相手であるかぐや姫が立っている。


「……さて、お話しましょう?」


 微笑みながら私を見て、彼女は部屋の奥へと入っていった。


 ……私と話す?冗談じゃない。私はあいつと話すことなんてない。


 私が無視して去ろうとすると、私の隣にいた彼女…、桜花が着物の袖をくわえていた。


「…離して」


「………」


 私の言葉に何の反応せずに桜花はじっと私を見ている。


「……はぁ、わかったわよ。行けばいいんでしょ?」


 先に折れたのは私だった。


 私の返事を聞いて満足したのか、桜花はくるりと尻尾を回すと、私に背を向けて少し歩き、塀を飛び越えてどこかへ行ってしまった。


 本当は帰りたいけど……ここで帰ったら何だか見下されたような気分になる、と感じた私はすぐにかぐやと同じ部屋へと入った。







 かぐやは座って目を閉じて静かに待っていた。


「……では姫、話とは何ですか?」


 一応、形だけの敬語でかぐやに話かけた。


「ああ、そんなに畏まらなくていいわよ?私のことは姫じゃなくて『輝夜』って呼びなさい。私も『妹紅』って呼ぶから」


 目を開けたと思ったら、輝夜は先程までとは全然違う態度で、けらけらと笑い始めた。


 ……え、誰これ?さっきまでは猫を被っていたのか?


「えっと…」


「ああ、これが私の素よ?


と言っても妹紅以外には桜花しか知らないけど」


 輝夜は姿勢を崩してだらりと畳に寝転ぶ。さっきまでの凛々しい姿とは掛け離れており、私は驚きを通り越して呆れてしまった。


「……何だか騙された気分だわ」


「あら、私は別に騙してるつもりはないわよ?皆が勝手に勘違いしてるだけだもの」


 私は額に手を当てて溜息をついた。どうやら私は輝夜という人物に対して思い違いをしていたようだ。それでも、私は…


「私、やっぱりあんたのこと───嫌いだわ」


 私の言葉を聞いた輝夜はでしょうね、と言いながら苦笑いをした。


「それで、結局私を呼び出した理由は何なの?」


 輝夜はあぁ、と言うと体を起こして再び綺麗な姿勢で座った。こうやってしっかり座っているだけなら人形のように美しいのに……


「妹紅には私のことを話しておこうかな、と思ったの」




 真剣な顔をした輝夜が話し出した内容は私からすれば信じられない話だった。月の都と月の民、蓬莱の薬、月から迎えが来ること、そしてそれから逃げること、それら全てを話し終えてから輝夜はふぅ、と息を吐いた。


「わかった?だから私は誰とも結婚するわけにはいかない。私と結婚しても…皆私を置いて死んでいく。それに、どのみち次の満月の夜には月からの迎えが来る……まぁ、逃げるけどね」


 私は輝夜の顔を見ながら何も言えなくて黙っていた。輝夜は苦笑いを浮かべると私の肩に手を置いた。


「藤原様のことで別に私を恨むのならそれでも構わないわ。たぶん…二度と出会わないでしょうしね」


 先程の話から輝夜が不老不死であるとは聞いている。永琳という仲間がいることも…


「……あんたはそれでいいの?」


 永遠の時間を生きていく苦しみなんて私にはわからないけれど……


「私には永琳っていう仲間がいるからね。あ、最近は桜花もそれに入るわね。彼女も妖怪だから長生きでしょうし…」


「そうじゃなくて!」


 思わず声を荒げてしまった。輝夜は少し驚いたように私を見ている。でも、今はどうでもいい。


「その永琳って人と月からの追っ手から逃げつつ、たった二人で引きこもって生活するって…寂しくないの!?」


 私の言葉に輝夜は少し考えるような仕種をすると…


「まぁ…死ぬ程暇であるのは確かね」


 と、言った。


「だからぁ!あんたはそれでいいの!?」


「仕方ないじゃないの。これ以上迷惑はかけられないじゃないし…」


「そんなの…」


 なんて、寂しい人生…


「妹紅は優しいのね」


 輝夜が微笑みながら私の頭を撫でる。


「私の罪は私が背負わなきゃ……誰かに押し付けるほど私は我が儘じゃないわ」


 私は数十分前の自分を殴り飛ばしたかった。自分のことしか考えていなかった自分が許せなくて……


「…決めた」


 私の呟きに輝夜は首を傾げた。私は顔を上げて輝夜をしっかり見据える。


「私も手伝う。輝夜一人にだけ辛い思いなんてさせない!」


 輝夜は一瞬固まったかと思うと頬を少し赤らめて慌てだした。


「な、何言ってるの!?妹紅は関係ないでしょ!?だいたい、手伝うって何をするのよ!!」


 輝夜がそう言っても私は止めるつもりはない。


「そんな話を聞かされたら手伝いたくなっちゃうよ。でも、私には戦う力なんてない。だから友達になりましょう?」


「……友達?」


 私は輝夜の手を握って頷く。


「そう、友達。輝夜が何処かに隠れても私が会いに行く。輝夜の代わりに私がいろんなものを見て、そして話して聞かせてあげる。そしたら少しでも暇潰しになるでしょ?」


 私がそう言って笑うと、輝夜は顔を真っ赤にした。輝夜は私よりだいぶ年上なはずなのに、この反応からは私と同年代の少女にしか見えなかった。


「あ、あなたがそうしたいなら…好きにしなさい。……あぁもう!私がかっこいい言葉で締めようとしたのに!」


 いつの間にか私は笑っていた。輝夜もはじめは拗ねていたがすぐに笑顔になった。


 そして丁度その時、父上が屋敷に武器を持ってやってきた。私と輝夜が仲良く話している姿を見て呆然としていたことが可笑しくて、そして私を心配してくれたことが嬉しくて、輝夜と顔を見合わせてもう一度笑った。


 あぁ、私は今初めて心から笑った気がする。






―桜花Side―


 私と輝夜の作戦は成功…いや、大成功と言ってもいい。


 まさか妹紅の方から輝夜と友達になりたいなんて言い出したのだから。


 私は屋敷の屋根から輝夜と妹紅と不比等の三人を見ている。


「あら、藤原様。いらっしゃいませ。どうしたのですか?武器などお持ちになって」


 輝夜が笑顔で不比等に話しかける。その後ろで妹紅が必死に笑いを堪えている。まぁ、輝夜の素を見た後だと違和感がハンパないからなぁ…。


「かぐや姫!此処に妖怪が来ませんでしたか!?妹紅をさらって行ったので慌てて追い掛けてきたのです!」


 ぜぇぜぇと息を切らしながら話す不比等に輝夜は後ろにいる妹紅を見ながら笑った。


「大丈夫です。実はあの妖怪は私の友達なのです。安心してください、人を襲ったりはしません」


 そうですか、とようやく安心したように緊張を解いた不比等は妹紅を見ると突然頭を下げた。


「すまん、妹紅。私が悪かった」


 突然彼の言葉を聞いた妹紅は唖然としていたが、慌てて不比等の元へと走り寄った。


「そんな、父上…私こそ怒鳴ってしまってごめんなさい」


 不比等は妹紅を抱きしめると何度もすまない、と呟いた。


 輝夜はそれを暖かい眼差しで見守っている。



 その後、輝夜と妹紅がこれまでの経緯を話した。


「……と、いうわけです」


「そうでしたか…何とも壮大な話ですな」


「はい、ですが事実なのです」


 輝夜がそう言うと私に視線を向ける。


 現在私を入れた四人は輝夜の部屋で話をしている。私の姿を見た不比等の顔が一瞬険しくなったのは悲しかったけど…


 ちなみに人の姿になった時に妹紅と不比等が凄く驚いた。そして輝夜は私の尻尾をずっと抱きしめている。


「はい、私は輝夜姫の話であげられた永琳という人物を知っています」


 私の言葉に不比等は頷くと輝夜へと視線を向けた。


「いやはや、私は深く考え過ぎていたようですな」


「どういうことでしょう?」


「私は妹紅の将来を心配していたのです」


 不比等の言葉に三人の視線が彼に集まる。


「実は、私は病を患っていましてな…」


「えっ!?」


 不比等の突然の告白に妹紅は声をあげる。見れば輝夜も険しい顔をしている。


「医者に見てもらいましたが……どうにも治せないと言われました」


 この時代ではまだ治せない病はたくさんある。医療が発達している月の都ならどうにかなるかもしれないが…


「父上、どうして黙っていたのですか!?」


 妹紅が泣きそうな顔で不比等に詰め寄る。不比等は妹紅の頭を撫でながら諭すように話だした。


「私は医者に不治の病だと聞かされてからずっと考えてきた。私が死んだ後、妹紅をどうしようかとな…」


 妹紅は涙を流しながらも不比等の言葉を聞いていた。


「妹紅に心配をかけたくなかった私は病の事は黙っておくことにした。そして、丁度その頃だ、輝夜姫の話を聞いたのは…」


 輝夜は少し目を細めながらもしっかりと聞いている。


「初めてお会いした時に、この方なら妹紅を頼めそうだと感じた。だが、素直に話しても相手にされるかわからなかった臆病な私は妻として迎え入れるならばいいのでは、と考えたのだ」


 私は小さく溜息をついた。まったく、この親子は考え込んだら誰の手も借りないで抱え込むところがそっくりである。


「そのような誘いでしたら私は構わなかったのですが…」


「いやはや、情けない限りですな…」


 不比等は自嘲気味に笑うと今だにないている妹紅へと向き直る。


「そういうわけだ、妹紅。明日からはまた以前のように暮らそう。私にあとどのくらいの時間があるのかわからないが……」


「…うん」


 それから妹紅はしばらく不比等に抱き着いたまま離れなかった。








 次の日、輝夜の屋敷にやってきた妹紅は長かった髪をバッサリと切っていた。肩より少し上で切り揃えられた黒髪が風で靡いている。


 輝夜は驚いた様子で妹紅へと駆け寄る。


「妹紅、どうしたのよその髪!?」


「ん?……あぁ、ちょっとした気持ちの切り替えよ。今までの卑屈な自分とはさよならってね」


 そう言って笑う妹紅の顔は今までで一番輝いて見えた。


 私と輝夜と妹紅の三人は満月の夜がやってくるまで毎日のように会っては話をした。三人とも笑顔で、楽しかった…





 ──そして、ついにその日はやってきた。



 最近読むばかりで執筆が進まない(汗)


 ちゃんとやらなきゃなぁ…

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