◆神社と巫女と私と…
キャラクタープロフィール(改定版)
鈴音桜花
種族・妖獣(神)
性別・女
年齢・約一万歳
能力・ありとあらゆるモノを拒絶する程度の能力
主人公。最近神となりさらに強くなった。現在は諏訪地方から帰ってきたところであり一年ぶりの我が家を楽しみにしている。
能力は磨きが掛かってきており、できない事は殆どない。今では対象の存在を拒絶して完全に消滅させることも可能である。
「ただいま~!!」
紫と別れた私は二日かけて霧の湖へと帰ってきた。修行に出発してから約一年ぶりの我が家と呼べる場所である。
「チルノ~!、ルーミア~!、大ちゃ~ん!」
湖は相変わらず霧に包まれていて視界は悪い。大声で三人を呼ぶが返事は返ってこなかった。
はて、おかしいな…リンの花畑にでも遊びに行ったのだろうか。
私はすぐに湖の近くにあるリンの花畑へと向かった。
花畑に着くとリンと幽香が一緒に花の手入れをしていた。
「リン、幽香、ただいま!」
私が声をかけると二人はこちらを振り返り、笑顔を見せた。リンは私を見た瞬間走り出し勢いよく私に抱き着いてきた。
「おかえり、桜花お姉ちゃん!」
「ただいま、リン」
涙目になっているリンの頭を撫でてあげると、幽香に顔を向ける。
「久しぶりね、幽香…元気だった?」
「たった一年会わなかっただけで久しぶりと言われてもね…まぁ、元気にやってるわ」
私はリンを肩車した状態で幽香の隣に立った。幽香は相変わらず日傘をさしたままにっこりと微笑んでいる。
「この一年間、貴女の代わりにここの花達を世話していたのだけれど…花達も寂しそうにしていたわ」
「そう…ありがとう、幽香」
「ふふふ…どういたしまして」
私はリンを墓石へと降ろすとチルノ達について聞いてみることにした。
「ねぇ、チルノ達を知らないかしら?湖にいなかったのよねぇ…」
幽香とリンは顔を見合わせるとクスクスと笑い出した。はて…何かおかしな事でも言ったかしら?
「チルノ達なら…たぶん新しくできた神社でも見に行ったんじゃないかな」
「…神社?」
リンが言った事に首を傾げていると幽香が横から続きを話してくれた。
「貴女がいない間に人間達が新しい神社を建てたのよ。場所は人間の里から見て東の方角よ」
へぇ…私がいない間に神社なんか建ててたんだ。一体誰を祭ってあるのやら…
「ちなみに祭ってあるのはリンと貴女よ」
「…は?」
突然の言葉に私は呆然とその場で固まってしまった。
私とリンを祭った神社……ですって?
「いやいや…何でよ。私とリンはそこの祠にも祭られてるのに?」
私は花畑の奥にある祠を指差した。
「なんか、そこだけじゃ申し訳ないって言われてね?人間の里を見守れる場所にちゃんと祭りたいって言い出したの」
そんな事までしなくてもいいのに…。というか、最近妙に信仰が集まってると思ったら…これが原因だったのか。
私の妖力や神力は能力を使う事以外では減らないからどんどん溜まっていくけど、それでも最近は特に力が増えてきたように感じていた。今なら神力だけでも神奈子や諏訪子に勝てるかもしれない。
「神社ねぇ…私はこの場所気に入ってるからあんまり移動したくはないんだけど…」
「私だってこの花畑からは移動したくないよ。私の墓だってあるし…」
まぁ、神社に祭られるといっても毎日必ずいなければならないような場所じゃないはずだから……たまに様子を見に行くくらいにしておこう。さすがに神のいない神社というのも微妙な所だし…。
…あれ?
神のいない神社ってどこかで聞いたような……何だったっけ?
「……とにかく、私も行ってみるわね」
「うん、いってらっしゃい!」
「私はリンと花の手入れを続けるわ」
リンと幽香に手を振って別れると、私は人間の里の東を目指した。
人間の里を過ぎ、よく手入れされた参道にそって東へ向かう。すると、長い階段を上った先に赤い鳥居が見えた。あそこが例の神社らしい。
私は鳥居の上に降り立つと境内を眺めてみる。そこまで広くない境内に新築の神社が建っている。
ここで私は再び考える。やはりどこかで見覚えがあるのだ。この鳥居も、境内の様子も……
私が考えに浸っている時、突然私に向かって何かが飛んできた。
「…っ!?」
咄嗟に体を捻って回避する。慌てて飛来物を見ると、白い紙に赤い紋様が書いてある…つまり御札である。
境内をみれば巫女服を着た少女が何かを投げた体勢でこちらを睨んでいた。
「そこの妖怪、ここは神を祭る神聖な場所です。直ちに立ち去りなさい!」
ちなみに私は現在神力を隠している。理由は、そうしなければ道行く人に毎回拝まれてしまうからだ。空を飛んでいる時はいいが道を歩いている時だと……何だかむず痒い気持ちになるし……
私がどう説明しようか考えていると、それを否定だと思ったのか巫女さんは再び御札を構えた。
「どうしても立ち去らないなら、この神社の巫女である私――博麗霊樺がお相手しましょう!」
「なっ…博麗!?」
思い出した!この辺りが幻想郷になるのならそこにある神社は二つ。妖怪の山ではない場所にある神社ならばそこは『博麗神社』しかない。
よく見れば原作と同じ様な形をしている。此処に将来、博麗霊夢が住むことになるわけだ。
…と、いうことは私とリンは博麗神社の神になったということですか!?
そうか…博麗神社の神の姿を誰も見たことがないのは普段は花畑にいるからなのか…。
「おい妖怪、聞いているのか!!」
そこまで考えた途端に下から怒声が聞こえたので私は考えを中断すると再び初代博麗の巫女へと目を向けた。
服装はちゃんとした巫女服で霊夢のように腋を見せるような格好ではない。雰囲気も凛々しい感じでまさに『戦う巫女さん』という雰囲気である。
「何の目的で此処にきたのかは知りませんが、素直に去らないのならば痛い目をみてもらいます!」
霊樺は大きくジャンプすると左手に持っている御札を私に投げつけてきた。私は霊樺を飛び越えるようにジャンプして回避すると、境内に着地して振り返る。霊樺は先程まで私がいた場所に浮かんでいる。博麗の巫女は初代から空が飛べたのか…。
霊樺は模様の違う御札を取り出すと狙いも定めずに投げた。すると、投げられた御札は空中で向きを変えると一直線に私へと向かってくる。横へ移動して回避するが再び向きを変えて追いかけてくる。ホーミングタイプの御札のようだ。
私は振り返りながら飛んでくる御札を一つ一つ妖力を込めた爪で引き裂いた。
「やりますね、ですが……これで終わりです!」
霊樺は空中で両手を広げると目を閉じる。すると、彼女の霊力が一気に高まり赤や青、緑などの入り混じった虹色の光の玉が現れた。
「あれは…」
そう、霊夢の代表的な技にしてあまたの妖怪を退治してきた技…
霊樺が目を開き、広げていた両腕を前に突き出す。
「いきます……奥義・夢想封印!!」
次の瞬間、無数の光の玉が一斉に撃ち出され、私の視界は発生した光により真っ白になった。
―霊樺Side―
「はぁ…はぁ…」
私は肩で息をしながらも警戒は解かずに着弾地点を注意深く見続ける。
先程放ったのは私が最近編み出した奥義『夢想封印』……あらゆる法則を無視して相手を封印する技である。まだ数回しか使ったことはないが、今のところ破られたことはない。
「ちょっと、何の騒ぎよ!?」
「大丈夫ですか!?」
私が乱れた息を整えていると神社の中からチルノと大妖精が現れた。彼女達はたまたま神社に遊びにきていたのだ。
「二人とも、出てきてはいけません!!中に入ってなさい!!」
夢想封印はたしかに直撃はしたが相手の気配がまだ消えていない。つまり相手はまだ戦える状態であるということだ。あの二人を危険な目に会わせないためにも早く避難させなければ…
「霊樺、誰かきたの?」
「青い服を着た妖怪ですよ。なかなか強い奴ですから巻き込まれないように下がってください」
チルノは私の言葉を聞いた瞬間、驚愕の表情を浮かべた。
「れ、霊樺……桜花に手を出したの!?」
「…は?」
あまりにもチルノが焦っているので私は首を傾げた。チルノの知り合いなのだろうか?
「あちゃ~……霊樺、やっちゃったね~…」
「…何が……っ!?」
チルノにどういうことか聞こうとした瞬間、砂煙の中からとてつもない妖力を感じ取り、私は振り返りながら御札を構えた。最初と比べると数倍…いや、数十倍になった妖気が辺りを包む。
「これは……一体何が!?」
私が辺りを見回しながら警戒していると、私の隣にチルノと大妖精がやってきた。
「あらら……桜花ったらちょっと怒っちゃったかなぁ…いざという時はあたいが止めるしかないかも…」
「チルノちゃん…大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ大ちゃん」
私は少々混乱してきた頭を整理するようにチルノに事情を聞くことにした。
「チルノ、あの妖怪を知っているの?」
「…ん?ああ、まぁね…あたいの最初の友達さ。そしてあたいが知る限り世界最古の妖怪で、妖怪でありながら神になった奴なんだ」
「……なっ!?」
最古の妖怪にして神様ですって!?
私が驚愕の事実に呆然していると、突然周りの空気が変わった。ピンッと張り詰た今まで感じたことがないくらいの緊張感が私を包む。
「ふふ…ふふふ……いいわ、やるじゃないの…貴女。でも、相手の意見を聞かないのはいただけないわ……ちょっとお仕置きをしてあげましょう」
砂煙が晴れていき、九本の尻尾を広げ、満面の笑みをしている彼女が現れた。
妙に迫力がある……というか目が笑っていない。隣のチルノと大妖精も震えているのがわかった。
「霊樺……お祈りは済ませたかしら?遺言は?部屋の隅でガタガタ震える準備はOK?」
「…え?あ、あの……その…?」
ヤバい……妖怪ならまだよかったけどまさか神様に攻撃するなんて……私ったらなんてことを…
「自分の神社の神を攻撃するなんて言語道断!少し反省なさい!」
「あ…ああ……いやああああぁぁぁぁぁ!!」
…訂正、自分の神社の神に手をあげるとは…今度からちゃんと話を聞くことにしよう。あれ?でも、今回は彼女がちゃんと質問に答えなかったのが悪いんじゃ…
そんな事を考えていると、突然妖力の塊が飛んできて私にぶつかった。軽く吹き飛ばされ、意識が遠くなる中で私は思った。
「あれ?…結局、私あんまり悪くないんじゃない…?」
―桜花Side―
少しやり過ぎたかしら…
霊樺を吹っ飛ばした後、私は彼女を抱えて神社に入るとチルノに布団を敷いてもらい霊樺を寝かせる。
「まったく…大人げないよ、桜花?」
「うっ……返す言葉もございません」
先程の戦いは考え事をしていて話を聞かなかった私が全面的に悪い。それなのに逆ギレで霊樺を気絶させてしまった。起きたら謝っておこう…
「まぁ、いいや……とりあえずお帰り……桜花」
「お帰りなさい、桜花さん」
チルノと大ちゃんが微笑みながら、しかも不意打ちのようにそう言われて思わず泣きそうになるのを必死に堪えた。たった一年離れていただけなのに……こういうところが私はまだ人間らしいのかもしれない。
私はそんな顔を悟られないように二人を一緒に抱きしめた。小柄な二人は簡単に私の腕の中に収まる。
「ちょっ…桜花!?」
「ど、どうしたんですか!?」
二人が驚いてあたふたしているが離さない。今離したら私の泣き顔を見られてしまうから。だから代わりに私も二人にこう言った。
「…ただいま」
二人は少しの間キョトンとしていたがすぐに笑顔になってくれた。
その後、目を覚ました霊樺と話をつけて、私は正式にこの神社の神となったのだった。これからやることがいっぱいあって忙しくもなるけどリンの分まで頑張らないとね。
キャラクタープロフィール(改定版2)
博麗リン
種族・神霊(元人間)
性別・女
年齢・?(死んでいたので詳しくわからない)
能力・言霊を操る程度の能力
博麗神社に祭られている神の一柱。苗字も神社の名前から取った。桜花を本当の姉の様に慕っている。見た目は10歳くらいの少女で幽香に似ている。
リンの能力である『言霊を操る程度の能力』は言葉に宿る力を引き出し、操る能力である。発した言葉通りの結果を現す力があるが、生物に影響を与える言葉(「動くな」や「眠れ」など)は対象の人物をちゃんと理解し、なおかつ本名を知っておく必要がある。