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東方~青狼伝~  作者: 白夜
原作前編
13/112

◆諏訪の地にて

 ケロちゃん登場!


 皆さん、お元気でしょうか?鈴音桜花です。現在私はとある地方に来ています。どこかというと…


「へぇ~…ここが諏訪大社かぁ」


 ケロちゃんこと、洩矢諏訪子に会いに諏訪の地まできたのです。


 諏訪大社は現代の長野県にある神社で諏訪市にある上社と諏訪郡下諏訪町にある下社の両方の総称である。主祭神は上下社とも建御名方神(たけみなかたのかみ)八坂刀売神(やさかとめのかみ)である。古来、狩猟神・農業神・武神として信仰を集めてきたとされている。7年ごとに御柱祭(おんばしらまつり)が行われるので有名だ。



 私が何故此処にきたのかというと、神力の使い方を教えてもらいに来たのだ。


 神となってから一年が経った頃、相変わらず信仰されたままの私とリンは神力の使い方について色々と試行錯誤していたのだが…これがなかなか難しい。


 リンは元人間であるから仕方ないが、私は一応妖力を使ってきた。だから神力も同じように扱えると思っていた。…が、そんな私の思いも虚しく全く操れない。妖力と違って繊細な力の循環が必要なだけだから簡単だと思ったのだが…


 一万年も妖力ばかり使ってきた私がほいほいと新しい力を使いこなすのは簡単ではない…と、痛感したのである。


 結局、いつまでも上手くいかないことに嫌気がさした私が直接神力を使っている神様に聞いた方が楽だと思い至ったのだ。


 そんなわけで…私の知識の中にある友好関係を作りやすい神様を探した結果がケロちゃんだったわけである。


 人里の発展具合からして今は紀元前300年前後だとわかったから彼女が生まれている事もわかった。…神に対して生まれるという表現が正しいかはわからないが…


 そんなわけで、霧の湖を出発したのが一週間前…それから途中の村に立ち寄っては諏訪はどの方角か等を聞いて回っていた。


 しかも途中で妖怪達にも襲われたので返り討ちにしたり、夜盗に襲われて返り討ちにしたり、私の水浴びを覗いていた人間の男を縛りつけて三日間罰を与えたり…と、なんやかんやしていたら一週間もかかっていたのである。


 あれ…?余計な事をしなかったらもっと早くついたではないか?


 まぁ、ともかく無事に諏訪大社まで来られたからよしとしましょうか…


「それにしても…」


 私は諏訪大社を真正面から見る。


 うん、デカイです。その辺の神社なんか比べものにならない。


「とにかく、入ろうか…」


 そのまま立ち止まったままだと周りの人に迷惑なので人間に化けて境内にはいる。妖力と神力は一応隠しておく。


 境内は予想よりもかなり人が多かった。流石は諏訪子さま、と言ったところだろうか。


「…あれ?」


 よく見ると本堂の屋根で誰かが昼寝をしているのが見えた。目を懲らしてよく見ると見たことのある帽子を被っている。つぶらな瞳(?)のついた帽子を被り、気持ち良さそうに寝ているのはまさしく洩矢諏訪子である。


 遠くから見ても幸せそうな寝顔だとわかるほど顔がにやけている。心なしか帽子の目も気持ち良さそうに細くなってるし…


 すると、何かを感じたのか帽子の目がパチリと開いて諏訪子が体を起こした。キョロキョロと周りを見渡している。


 すると、私と視線がぶつかった諏訪子は首を傾げると屋根から飛び降りてこちらへと歩いてきた。気配を消しているのだろう、周りの人は気がついていない。


 はて、私は妖力は完璧に隠したはずだが…ばれた?それとも服装が珍しいからかしら?


 諏訪子は私の近くまで歩いてくると、しげしげと私を上から下まで見る。一応気づかないふりをしてるけど何だか恥ずかしい。


「ねぇ、気づいてるでしょ?」


 諏訪子は私のコートを掴むと少しだけ引っ張った。


「あら、これはビックリだわ…まさか神様に声をかけてもらうなんて」


 私がそう言うと諏訪子は目を細めて私をもう一度見ると「ついてきて」と言って本堂へと歩き出した。私もその後に続いて本堂へと歩いていく。




「さて…」


 本堂の中に入った私達は向かい合う。それにしても諏訪子は本当に幼女だ。身長に差がありすぎる。私が170cmくらいだから諏訪子は自然と見上げる形になる。


「まぁ、座りなよ」


 諏訪子に言われて腰を下ろす。本堂は外から見てわかっていたけどだいぶ広かった。


「それで、あんたは何者?人間じゃないでしょ?」


「…なんでわかったんですか?」


 完璧に力は隠せたと思ったのに、どうやって見破ったのだろうか。


「あ~う~…何て言えばいいかな…ああ、そう!気配を隠し過ぎてるんだよ」


 私が首を傾げると諏訪子は苦笑いをしながら私を指差した。


「普通、人間だろうと妖怪だろうと必ず気配がある。妖怪なら妖力、人間なら霊力…これはわかるよね?」


 私が頷くと諏訪子はニコニコと笑顔になった。


「つまり、今のあんたからは何も感じない。だからおかしいの。普通の人間ならそんなことできないからね」


 なるほど…気配を隠し過ぎて逆に目立ってしまったわけね…


「あらら…私もまだまだ甘いわねぇ」


 私はため息をはいて苦笑いをした。


「いやいや、凄いと思うよ?それだけ気配を消すのが完璧だと…私も背後に立たれても気づけないかも」


 おお、諏訪子に褒められた!


「おっと、自己紹介がまだだったよね?私は洩矢諏訪子。この地方を治める神だよ。あんたは?」


 諏訪子が名乗ったので私も隠していた妖力と神力を出す。耳と尻尾が一本だけ現れて本来の私の姿に戻る。


「私は鈴音桜花。妖獣であり、一応神でもあるわ」


 諏訪子は私を見て「ほぉ…」と息を漏らしてしばらく私を見ていたが再び笑顔に戻った。


「それで…私に何か用事でも?」


 私は頷くと姿勢を正して諏訪子に頭を下げる。


「この度は諏訪子様を偉大な先輩として神力の使い方を教えていただきたく足を運びました」


 諏訪子は一瞬驚いて目をパチパチさせると突然笑いだした。


「なんだ、そんなことなら引き受けるよ。それから敬語はいらないよ。神としては私が先輩かもしれないけど…そっちが年上でしょ?」


「あ…そう?ならお言葉に甘えて…よろしくね諏訪子」


 それから私達は酒を飲みながらお互いの事を話した。


 私は自分が最古の妖怪で私の知る限り私より先に生まれた妖怪がいない事を告げると、諏訪子は酒を噴き出すほど驚いて「信じられない」と呟いた。


 証拠として私が妖力を全開にして九本の尻尾を全て見せた時は顔が青ざめていた。


「な、何…その妖力…」


 と、諏訪子が本気で怖がっていたのですぐに元に戻したけど…


「桜花が敵になったら私、絶対に戦いたくない…」


 と言われて私は苦笑いするしかなかった。





 次の日から私の神力を操るための特訓が始まった。


「まずは神力を自分の周りに留めてみて」


 神力を操り体の周りに留める。


「…こう?」


「うん、ちょっとムラがあるけど大丈夫だよ。次はそれを手の平に集めるんだけど、普通にやると失敗しやすいから…イメージとしては球を作る様にするの。あと、余計な事は考えないでね」


 私は頷くと早速やってみる。一応丸い形にはなったけど安定していない。ちょっと触るとすぐに霧散しそうだ。


「う~ん…イメージが足りてないみたいだね…何か具体的なものをイメージしてみたら?例えば…氷の塊とか」


 氷の塊だったらいつもチルノのが傍にいたから想像しやすい。チルノが氷を操っている姿をイメージして再び挑戦する。


 すると…


「おお、できた~!」


 私の手の平には綺麗な丸になった神力の塊があった。


「凄い…全然無駄がないし、何より安定してる」


 これはチルノに感謝しなきゃいけないかな…ありがとう、チルノ


 それからはとても順調だった。自分やチルノ、幽香、ルーミアの戦い方をイメージしつつ当て嵌めるようにして神力を使う。すると綺麗に形が整うのだ。




 そんなこんなで一年が過ぎた頃…


「あ~う~…桜花って万能?私が教えること無くなっちゃったよ~」


 すっかり慣れた神力の扱い方を諏訪子に見てもらい、無事に合格をもらった。


「ありがとう、諏訪子。おかげで助かったわ」


「ん……役に立てたならよかった」


 諏訪子と一緒にお茶を飲みながら境内を眺める。いつ見ても人がいっぱいだ。


「桜花…ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」


「ん、何?」


 諏訪子は真剣な顔で一言、私に用件を伝えた。


「近々…大きな戦いが起こる」


 それだけ言うと視線を私に向けたまま黙ってしまった。おそらく私の返事を待ってるんだろう。


「いいよ、諏訪子…私でいいなら加勢する」


 諏訪子は少し申し訳なさそうに帽子を被り直した。


「…ありがとう」


 私はお茶を啜りながら青空を眺めた。大きな戦いとは間違いなく諏訪大戦のことだ。洩矢諏訪子と八坂神奈子の対決…それをこの目で見られるのだから凄いことだと思う。


 私は帽子の上から諏訪子の頭をぽんぽんと軽く叩いた。諏訪子はキョトンとして首を傾げている。


「…大丈夫」


 私は笑いながら立ち上がると振り返りながら諏訪子に笑いかけた。


「きっと上手くいくよ!」


 諏訪子は帽子を少し持ち上げると口元を緩めながら私の隣に歩いてくると空を見上げた。


「上手くいく…かぁ……桜花に言われたらそんな気がしてくるから不思議だよ」


 空を見たまま笑う諏訪子と同じように空を見上げる。そこには雲一つない青空が広がっている。


 ふわりと風が吹いて私の髪を揺らし、髪を縛っている紐についている鈴が“リン”と鳴る。


 その音色が私には何かの始まりを告げる音に聞こえた気がした。





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