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ZEROから魅せる成り上がり  作者: 半目真鱈
プリローグ

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第6話 キシュア・メイガース

 俺が精神混濁症から無事に帰還してから約数日…俺は実に平和な時間を享受していた。だが、それは一人の言によって崩される事となった。


「今日はお前に客が来ている。少しだが時間良いか?」

「メギドさん。何かあったんですか?」


 俺はメギドさんに連れられるがままに客間に辿り着いた。そこの扉の奥に腰かけていたのは…。


「騎士の人に何かあったんですか?」

「いやぁ…そういう訳じゃ無いんだ。見えないか?」

「すみません。影が薄くてすみません」


 そう言われてい見れば、どこかから声が聞こえる気がしないでもない。だが、視線をグルリと巡らせるがその声の主は見つからない。今現在も騎士の人が椅子の両翼に立っていると言う事しか分からん。


「やはり見えんか。…やはりか。少し待って置け。〈影浄結界〉〈探知結界〉〈慧眼付与〉」

「うぉっ…誰かいる。」

「すみません。幽霊みたいで」


 腰まで流れるプラチナブロンドの長髪は、光を受ければ白銀の輝きを帯びるはずなのに、不思議と人の記憶に残らない。澄んだ碧眼はわずかに垂れ、いつも眠たげで、こちらを見つめられていると分かっていても、視線を向けられている感覚だけが曖昧に薄れていく。


 高身長で、すらりとした体躯を持つ美女であることは疑いようがない。それでも彼女の輪郭は、周囲の空気に溶け込むようにぼやけていた。


 淡い色合いの服を身に纏い、装飾らしい装飾も持たない彼女は、柔らかな微笑みを浮かべたままに、椅子に腰かけていた。


「あのぉ…もしかして今日のお客って。」

「はい。私からの依頼です。今日は貴方に技能を奪って欲しくて来ました。」


 その言葉を聞いて心底驚いてしまった。何せ、簒奪の技能を知っているのは犯罪者か、王様を始めとした貴族様たちだけ…って事は。


「エッ?技能を奪う!?本気ですか?と言うか、もしかしてですけど貴族ですか?」

「はい…正解です」


 彼女の話を統括すると、生まれつき固有技能〈隠者〉の影響で、他人から認識されにくくなるのだと言うでは無いか。さっきの俺が良い例で、見えない人物はマジで見る事が出来ないらしい。しかもオンオフが出来ない呪いの様な代物らしい。


「それで、どうして奪って欲しいんですか?」

「この技能から解放されたいのです。良いですか?」


 その問いに少しだけ迷いがある。今まで奪ってきた相手は犯罪者ばかりだ。こんなお貴族様なお人を相手に技能を使っても良い物か。


「でも…俺の技能にはちょっとした欠点がありまして。」

「欠点?それはどう言う意味ですか?」


 それから俺は彼女に熱弁した。簒奪時に精神すら奪ってしまう可能性がある。簒奪したら俺の頭の中に人格が生まれると言う事を。


「そう言う事なら、王国騎士団として反対しなければならないな。」

「メギドさん…」


 俺は一瞬だけ救いを見た気がした。この人が説得に回ってくれれば大分違う。何せ、精神を奪う可能性が有るんだ。騎士として反対しないわけには行けないだろう。


「でしたらその後の犯罪者に言動の不自然さなどは有るのですか?」

「…いえ。特にそう言った事は見られませんが」


 メギドさんが少しだけ不機嫌そうに返事をした。どうやら、俺が奪った後に体調や精神の変化が無いか調べたらしいが、特にそう言うのは無かったらしい。


「でも…俺的にはあまり気乗りがしないと言いますか」

「どうしてですか?」


 女性…キシュア・メイガースさんが不思議そうに小首を傾げる。どうやら余程この技能が憎いと見える。


「だったら理由を聞かせて下さい。そこまでして技能を嫌う理由を」

「そうですね…あれは私が幼い頃に遡ります」


 それから聞いた話ははっきり言って壮絶とも言える半生だった。この技能のせいで親からは認識されず。この両翼に控える騎士だけが認識できたのだと言う。それからの育ての親は完全に騎士で、親は自分を見る事すら出来なかったと


「…分かりました。奪います。ですから、頭に触れますね。」

「ありがとうございます」


 瞬間…彼女の半生を追体験した。親から認識されない恐怖、二人しか認識されていない恐怖、誰とも友達になれない恐怖…多くの恐怖を見た。


《技能〈隠者Lv1〉を簒奪しました》


 親は確かにそこにいた。ただ、彼女へと向けられる視線だけが、最初から存在しなかった。


「ッハァ~。ハァハァ…キシュアさん大丈夫ですか?」

「はい…ですが、ご両親が自殺とは…私と同じく親の愛に飢えているのですね。」


 何かドロリとした視線が此方に向けられているのが分かる。だが、嫌な気分は不思議としない。だが、キシュアさんが言った事、つまりは俺の人生を体験したと言う事か。俺みたいに。


「それじゃあ解除するぞ〈魔術解除〉」

「どう…ですか?ちゃんと見えていますか?」

「あっ…はい。ちゃんと見えてます。」


 さっきは影の薄さで分からなかったが、この人、めちゃくちゃに綺麗だ。何というか、透明感のある美少女と評するのが正しいであろう美人具合だった。


「ありがとうございます。固有技能故に売買も出来なかったのですが、貴方のお陰で私は親と会話できます」

「どういたしまして…ですが良いんですか?人格が俺の中に生まれる可能性がある件については…」

「メイガース嬢に何かが在っては、行けません。念のため精神鑑定の魔術を使える者を連れてまいります。長くは掛からないので少々お待ちください」


 メギドさんが俺とキシュアさんを二人にして、風かと見まがうように去って行った。それを追いかけたかったが、キシュアさんに袖を引っ張られてその願いは儚く散った。


「本当に有難うございます。この恩は必ずお返しします。メイガスの町に来た際は屋敷においで下さい。」

「はい…必ず行きます。だから…行って良いですか?」


 俺は彼女から逃げるように去って行った。それは、少しの恥ずかしさか、それとも怖さか…それと伴ったが故に出来事だった。その後をキシュアはじっとりと見つめる。


「私の呪いを解いて下さったお方…誠にお礼申し上げます」


 それから訓練場へと移動してから訓練を続けていた。だが、少しだけ気になった事があり、俺は訓練場の隅で瞑想をした。


「あら…いらっしゃいませ。さっきは私を救ってくださりありがとうございました」

「やっぱり、人格が増えた。」

「まぁ。こればっかりは仕方ないさ。儂らと違って、純粋に慕っているんだからな。と言うかメイガースの嬢ちゃんと言えば大貴族様だぞ。駄賃の一つでも貰えばよかったんだ。」


 入っていきなりキシュアさんとエウゴが声を掛けて来た。その声色は完全に玩具を与えられた子供の様に笑っていた。と言うかハスクが居ない?


「あれ?ハスクは?どこかに行ってるのか?」

「あぁ…それがな。嬢ちゃんが来た瞬間に消えちまったんだよ。まぁ、気配は有るから消えては無いと思うがな」


 う~ん。いなくなったらなったで、少しだけ寂しい気が…しないな。うん。


「もしかしたら人数制限とか有るんじゃ?」

「確かにそうかも知れんな。うんじゃ、儂が消えてみるとするよ」


 エウゴが消えたと思った次の瞬間には、ハスクが現れていた。


「つまり…話を統括すると。この瞑想空間に入れる人格の最大人数は今の所二人と言う訳だ。まぁ、もしかしたら成長と共に伸びるかも知れんがな」

「でしたら私は消えておきましょうか?この中なら一番の役立たずですし。」

「いや…いて欲しい。この面子じゃ正直男臭が凄いから、清涼剤として残って欲しい」


 俺の必死の訴えもあり、瞑想空間のメンツは、キシュアが固定で、その時の気分によって変わると言う事となった。


「はぁ~。犯罪者が来なくて良かったと思うべきか。それともあんな美少女が来て困惑したらいいのか…あ~もう分からんな」


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