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ZEROから魅せる成り上がり  作者: 半目真鱈
プリローグ

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第16話 別れ

「やぁ…悠馬、久しぶりだね。君が熱で寝込んだと聞いた時は居てもたってもいられなかったよ」

「あぁ、そうだね。ありがと英人。心配してくれて」


 今、俺は王様に貰った日光耐性の腕輪をしている。この最後の日に、「クラスメイトと会う位の贅沢は許そう」との言だ。本当に王様には感謝している。こうして、皆と別れが言えるんだから。


「よう…悠馬君。何だよ?そんな死体みたいな顔して。何時にもまして辛気臭いぜ」

「やぁ、竜童さんも久しぶり。でも、もう元気だから。心配ないよ」


 それを言うと、竜童は少しだけビックリとした顔をしていた。


「おいおいマジかよ。お前を殺すのは俺だ。だから、死ぬんじゃねぇぞ」

「この期に及んで。君はもう少し悠馬と仲良くするべきだよ?」


 英人が竜童を制するが、それが俺には嬉しかった。今も人間小見門悠馬として認識してくれている。それだけが嬉しかった。


「はぁ~、満。」

「えっ…どういう?」


 いきなりの言葉に驚いた。どうやら下の名前で呼べって事か?それならば。


「分かったよ。満。今日までさんざん虐めてくれたんだし。勝たせてもらうよ」

「おぉ良いぜ。クラスメイトの前で散々に泣かしてやるよ」


 俺と満は向かい合って木剣を握っていた。今の身体に慣れるためにも、ここいらで戦闘訓練と行くか。


「おらぁ…って、流石にこの程度の攻撃は避けるか」

「流石にね。そんな大ぶりの攻撃は避けられるよ」


 満は大きく振りかぶって木剣を振り下ろした。だが、俺はそれを華麗に避けて、満の木剣を足で踏んだ。だが、即座に木剣から手を放し、右手をドラゴンのモノへと変えた。


「ヒュ~…本気だね。」

「当たり前だ。お前との勝負、本気を出さずにいられるかってんだ。」


 ドラゴンの腕が俺に振るわれた。それを木剣で往なしていたが、直ぐに耐久力に限界が来た。木剣はミシミシと音を立てて、折れてしまった。


「だったら、こっちも本気で行こう。触手よ。壊せ」

「おっ…テメェも本気になったか」


〈魔矢+着火〉


「燃やせ〈火矢〉」

「甘いなぁ。この程度で、俺が負ける訳ねぇだろ。」


 満はその腕を竜の顎へとさして炎を吐いた。それにより火矢は炎に飲み込まれた。


「そんなのアリかよ。」

「だから、それが甘いってんだよ。喰らえ〈竜炎砲〉」


 俺は咄嗟に硬化で体を覆ったが、炎は俺の寸前まで到達せんとしていた。だが、俺のすぐ前で炎はかき消された。


「どうだ…これが俺の実力だ。今度会う時までに実力を磨けよ。その時は、俺が相手してやる」

「…やっぱり、あぁ、分かったよ。満」


 俺は満との戦闘を終えて、今度は麗華が訓練している場所へと行く。麗華はいつも通りだった。いつも通りのクールな姿勢。


「分かっている。私の固有技能は〈俯瞰〉貴方の喋った言葉と竜童が喋った事を、俯瞰して考えれば直ぐに分かった。」

「そうか…さようなら。」


 俺と麗華の会話はそれだけだった。元々あんまり喋る事は無かった。それに、麗華にはこれで充分だ。


「…貴方は、もう此処の人間じゃない。それだけ。」


 離れたと言うのに、その言葉だけは、耳に到達した。それから華音と出会った。思えば、此奴の元気さに振り回される事が有ったな。


「やぁ…華音。元気かい?」

「おや?悠馬君。はい、私は元気ですよ。と言うか、メギドさんに聞きましたけど、酷い風邪だって聞きましたよ。もう大丈夫なんですか?」


 華音はいつも通りの元気な姿だった。その姿からは本当に元気を貰える。だが、それも今日で終わりだ。


「うん、もう元気だ。だから、問題無い」

「そう?分かった。それじゃあね。私は魔術の特訓があるから」


 そう言って華音はどこかへと走り去っていった。その後を追いかけることも無く。俺は隅っこに座っていた。


「はぁ~、どうして俺が、」

「何か元気が無いニャ~大丈夫かニャ~」


 この猫語尾は鈴だ。そうだ。此奴には話しても大丈夫かな?此奴は無遠慮で、人の心にズカズカと上がり込んでくる。だが、信用が出来る。


「御免だけど、ちょっと良い?」

「…うん、分かった。大丈夫だよ」


 それから訓練場の隅の隅で、隣同士で座って語り合っていた。その時間は正に至福の時と言わざるを得ない。今の俺でも、ちゃんと人間なんだって思えるから。


「そうか…行っちゃうんだ。」

「あぁ…これで、お前とはお別れだ。」


 そうか…俺は、寂しいんだ。こうして別れるのが、鈴と離れるのが嫌だったんだ。あの時の感情、これは、「寂しさ」なのか?


「確か、ユウくんって契約の技能。あったよね?」

「あぁ…それがどうかしたのか?」


 それを言うと、鈴は眩しい程の笑顔を見せた。それは、本当に、温かいモノだった。


「私と契約しよ。…もしもユウ君が帰ってきたら、私と付き合って?」

「もしも、俺が死んだら?」


 俺は恐る恐る口に出した。それ以上の言葉を聞きたくないと思いつつも、聞かないではいられなかった。喉が異様に乾く。ただの言葉の筈だ。なのに、こんなにも重い雰囲気が発せられるのか?


「…私も死ぬ。」

「でも、俺の生き死にで付き合うか死ぬだなんて。」


 俺は口を開いた。だが、それから先の言葉を紡ぐことは出来なかった。ピンク色の唇が、俺に覆いかぶさった。


「これが、私の本気。だから、お願い。契約して」

「…分かった。それじゃあ、お前が言った通りにするよ。」


《猫美鈴との間に〈契約状態〉が付与されました》


「それじゃあ…バイバイだね。ユウくん」

「あぁ…さようなら」


 俺は鈴との別れを言うと、足早に自分の部屋へと帰って行った。これ以上。泣き顔を誰にも見られたく無いからだ。遠くで聞こえるみんなの笑い声だけが、耳の奥で木霊する。




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