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ZEROから魅せる成り上がり  作者: 半目真鱈
プリローグ

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第11話 猫美・鈴

「〈隠者〉」


 俺は自身を透明化して、町にまで繰り出す。それは、新たなる技能を得るために、それ以上に、戦闘能力を高めるために。


「ニャハハァ~…こんな夜中に町に繰り出しているのは誰かニャァ~」

「誰だ?いや…どこに居る」


 俺は虚空へと視界を向けた。その声は聴きなれたモノだった。鈴の根の様な声、猫の様な語尾には覚えがある。そんな、俺の声と共に姿を現したのは一匹の猫だった。


 小柄な体躯の少女は、肩で切り揃えられた青髪に加えて、頭に猫耳のついた可愛らしいキャップをちょこんと被っている。だが、よく見るとキャップの下からは、本物の猫耳がぴんと立っており、ふわりと柔らかい毛並みが光を受けて輝いている。


 程よく豊かな胸を支えるベリートップは肩から腕にかけて華奢なラインを強調している。短めのショートパンツは太ももを大胆に露出させ、元気いっぱいの動きやすさを感じさせる。その背中からは、しなやかに揺れる猫の尻尾が伸び、無邪気な仕草のたびにふわりと揺れる。


「猫美・鈴か。」

「そんな他人行儀じゃ無くて良いのにニャァ~」


 俺の隣に現れた一匹の猫は語る。その足音は驚くほどに静かだ。聞き耳を立てて居なければ、今にも消え入りそうな音だった。


「それで、こんな夜中に外に出ちゃう悪い子は。一体誰かニャァ~」

「それは、お前にも言える事だろ?俺は技能の調整だ。他の奴らは簒奪一辺倒じゃ無いが、俺にはこれしか無いんでね。」


 俺は腕に魔力を集中させて触手へと変化せると、触手はビタビタと音を立てていた。


「触手だ何て、ユウくんはエッチだニャ~」

「そう言うお前の心臓を抉っても良いんだぞ?」


 俺が出せる最高速度で触手を展開する。だが、それを読んでいたかのように、鈴は華麗なジャンプで攻撃を避ける。


「ニャハハ~…そんな攻撃当たらないニャ~」

「そうかい…そんな気はしていた。お前は俺達の中での柔軟性と速度はトップだからな」


 此奴は元の世界でも、天性の柔軟性を元に新体操でブイブイ言わしてたっけか。


「そう言う柔軟性は強化されているようだな」

「当たり前だニャ~。私がこの世界で貰ったギフト。ちゃんと理解しているのかニャ~」


 此奴の固有技能は幸運猫。それに伴い種族が人間から猫人と言う亜人種に変化したのだ。それにより強化された柔軟性と瞬発力は、並みのクラスメイトを追い抜くほどのスピードだ。


「そう言うお前はどうしてこんな場所に?お前の興味が惹かれるモノなど無いだろ?」

「ううん。あるよ。此処に。」


 何時もの猫語尾は何処へやら。いつもとは違った雰囲気に俺は飲まれていた。だが、此奴の戦力は大きい。もしかしたら強力な技能持ちを狩れるやも知れん。


「分かった。だが、怪我したらすぐに帰れよ。お前は俺と違って再生が無いんだからな」

「分かったニャ~」


 路地裏に向かって歩いて行った俺と鈴は、即座にこの場所への洗礼を浴びる事となった。俺に向かって飛んできた短剣を即座に触手で叩き落す。


「殺せ。」

「フッ…甘い」


 クソッ…触手は全て叩き折られたか。だが、甘いな。岩に目が行っていない。


「今の俺じゃ正面から勝つ事は無理だな。…そう、正面からは」


 触手と念力の同時操作は不慣れだ。それでも岩を男の頭上に飛ばそうとしたが、失敗した


「死ね。」

「それが甘いと言っている」


 男は、右腕付近に堕ちる岩を、蹴り一発で蹴り壊したのだ。俺は即座に触手で動きを拘束するべく動いたが、男の持っている短剣が閃き、右腕の触手を切り落とす


「この場所に来たことを後悔させてやろう。ギルの居ないこのスラムを牛耳るのは俺だ。」

「それは叶わないんじゃ無いかニャ~」


 俺は即座に思い出した。此処には鈴も居たと言う事が。戦闘が始まってから見なかったが、どうやら相手を無力化するのに一役買ったようだ。


「短剣は降ろした方が良いにゃ~」

「クソが。分かったよ…お前たちから手を引く。」


 鈴は自身の爪を伸ばして、男の首筋に突き立てていた。


「鈴…凄いな」


 俺が驚きの声を何とか絞り出すと、鈴はまるで飼い猫が捕まえたネズミを見せびらかす様に、こっちに差し出した。


「殺すのかニャ~?」

「…いや。殺さない。正し、利用する」


 一応クラスメイトの前だしな。それに…まだ、俺には覚悟が出来ていない。人を殺すと言う覚悟が。


「お前の技能は何だ?」

「俺か?俺の固有技能は技能付与。自身が習得している技能に限り、対象に付与することが出来る」


 技能付与…ねぇ。うん?技能付与?それに…クラスメイトの中での速度特化の鈴を相手に負けたとは言え、俺には勝った。つまりは最低限以上の戦力がある。


「お前…命は惜しいか?」

「命?もちろん惜しいね。何だったら命乞いでも披露しようか?」


 此奴…上手く扱えば結構良い手駒になるんじゃない?


「その技能付与は人にも使えるのか?」

「あぁ…だが、それ以上に習得した方が早いからやって無いがね」


 これは…思った以上に湧いてきたな。これが〈幸運猫〉猫美鈴の力か。


「それじゃあ、こうしよう。今から俺の固有技能〈簒奪〉によって技能付与を奪う。その技能で〈閲覧〉を付与するから、目ぼしい技能持ちを連れてきてくれ。この場所に。良いな?その限り、お前の命を出来るだけ助けよう。それと、互いの直接攻撃は無しだ。」

「ありがとう…恩に着る。この俺ズーラの名に懸けて、お前の命を遂行するとしよう」


《技能〈技能付与Lv1〉を簒奪しました》

《ズーラとの間に〈契約状態〉が付与されました》

《技能〈閲覧Lv1〉を付与しました。》


「…なんてね。」

「甘い。」


 ズーラが短剣を抜き放ち、俺に接近してきた。だが、それが俺を貫くことは無かった。契約だ。契約の技能を交わしていたお陰で、此奴は俺に負傷させられない


「チッ…契約持ちかよ。あ~ぁ。面倒な奴に吹っかけちまったぜ。分かったよ。お前さんの命令に従う…だが、ちょっとした油断で終わるかもな」

「…ホントに攻撃するなよな。まぁ、それじゃあ明日の今頃に来る。それまで出来れば一体でも連れてくれると嬉しい。」

「ばいばいニャ~」


 それから俺と鈴は隣同士、ゆっくりと歩きつつ会話をしていた。


「今日の事ありがと。私、あまり血は得意じゃ無いんだ。この体になってから、血に興奮しちゃう」

「そうか…それで良い。俺だって、技能の促す殺意に耐え切れなかったからな。俺とお前は、仲間だ」


 それを言うと鈴はとっても眩しい笑顔を俺に見せた。その笑みは、夜だと言うのに辺りを照らすような…そんな温かみがあった。


「それじゃあ…バイバイ。ユウくん」

「あぁ…さようならだ鈴」


 俺と鈴は分かれて帰った。これ以上共にしては大事な何かに変質してしまいそうで怖かったからだ。俺は遠く離れる鈴の背中を見て、ひとり考える。



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